【木の効果】
研究成果ライブラリー

住友林業
E15
  • 疲労緩和効果
  • 学習・成育効果

ストレスなく遊べるのは無垢床

ここがPoint!
  • 無垢材の床ではリラックスする姿勢で遊ぶ
    無垢材の床とシート貼りの床で母子に自由に遊んでもらったところ、無垢材の床では自然と座ったり寝転がったり、リラックスした姿勢で遊んでいた!
  • お母さんのストレスも低下
    無垢材の床ではお母さんのストレス値も下がる傾向に。
  • 無垢床の上で遊ぼう
    無垢のフローリング材は親子で遊ぶリラックス空間に最適。
姿勢の時間の構成比(子)

1.背景・目的

近年、幼稚園、保育園あるいは子育て施設などの木造、木質化事例が増加している。施主である保育者、教育者は、施設の充実による保育、子育ての質的充実を強く期待しているが、子どもの育ちや学びと木材、木質空間の関係について検討した研究は少なく、保育や子育てに及ぼす具体的な効果は明らかなわけではない。そこで本研究では、室内空間に対する木材利用が幼児の育ち、学び、そして子育て等との関わりについて明らかにすることを目的として、スギ無垢材とシート化粧板を床材に用いた2種類の空間における幼児の遊び行動および母親の関わり行動についてコーディング法によるビデオ分析によって検討した。

2.実験概要

1)実験フィールドの設置

住友林業筑波研究所(茨城県つくば市)内の実験棟内(23±1℃、RH約40%)に、幼児教育施設(遊戯室)をイメージした木質空間(8.3×8.3m、周囲壁面1.5m)を設置した。実験は平成26年11月29、30日(第1期)と平成26年12月6、7日(第2期)に分けて実施したが。第1期では実験室内の床を、1)コンクリートスラブの床下地にスギ木目調シートフロア(1800×300×12mm)を直貼りしたもので行い、実験終了後、2)コンクリートスラブ上に根太と合板を設置し、埼玉県産スギ無垢材(1800×150×30mm)を設置した状態に改修し、第2期の実験を行った。なお、室内には木製の円卓2脚、椅子、ベンチなどのほか、積み木、ひき車など12種類の玩具、 絵本などを置き、被験者に自由に使用させた。写真1に実験中の風景を示す。

2)被験者

被験者は東京、埼玉など関東南部に居住し、月齢30~42月(2歳半~3歳半)の健康な子とそ の母親24組48名とした。また基本的な発達段階の下限を設定するために、被験者の選定条件として子については運動能力(精緻運動と粗雑運動)の可否も条件とした。なお健康上の理由などで1期、2期いずれかに参加していない場合(4組)、実験途中で退出した場合(2組)について は分析対象から除外しており、最終的な分析対象者数は18組36名である。

3)実験の手順

実験は、決められた手順にしたがって、被験者の来場受付、簡単な問診、着替え、実験内容の説明を行った後(30分)、実験室内に70分滞在させ、ビデオと観察者(室内2、室外3名)による行動観察(前・後半各25分)並びにPOMS(短縮版)、体温・血圧、および唾液コルチゾールによるストレス値の測定を行った。また 終了後には質問紙調査および実験中の気持ちについて聞き取り調査を行った。1回の実験は4組の被験者(母子計8名)を1グループに編成して行った。被験者の編成は、子の性別が偏らず、第1期(シートフロア)と第2期(スギ無垢材)で同組であった被験者同士が再度同組にならないことに配慮した。なお、実験前の被験者に対する説明では、それぞれの実験で用いた床材の種類や第1回目と第2回目で床材が変更されたことについては伝えていない。

4)行動分析の方法

実験室内の4か所(天井2か所、壁面2か所)にビデオカメラを設置し、実験室内における被験者の行動を音声とともに記録した。データより被験者の特徴的姿勢、行為をコードとしてまとめ、行動分析用ソフトウエアにより、被験者の姿勢、行為、母子の位置関係の変化、遊びの種類、関わりの継続時間、移動距離等を求め、床材の変化による母子の行動変化について検討した。なお分析の対象は、室内、実験への慣れ等を考慮し、各期の行動観察後半のうち20分間を採用した。

写真1 実験中の風景
写真1 実験中の風景

3.結果

室内における子の姿勢、行為

実験中の子の姿勢は、シートフロアにおいては立つ回数、時間が長く、スギ無垢材の場合、あぐら横座、伸脚・開脚の回数、時間が長い(図1、図2)。また姿勢の変更頻度(多動性)もシートフロアが有意に高く(図2)、スギ無垢材では1カ所で落ち着いて活動する子が多いことがわかった。スギ無垢材では、読書や積み木、パズルなどに取り組む1回当たりの時間(じっくり度)が長く、1分以上継続した遊びの回数が多い。一方、シートフロアでは1分以下の遊びが全遊びの半数以上であった(図3)。こうした傾向は男子において特に顕著であった。

図1 子の主要姿勢 各姿勢の平均時間(子)
図1 子の主要姿勢 各姿勢の平均時間(子)
図2 姿勢の時間の構成比(子)
図2 姿勢の時間の構成比(子)
図3 姿勢 全姿勢の変更頻度(子)
図3 姿勢 全姿勢の変更頻度(子)
図4 遊び時間 1回あたり集中した遊び回数の割合(子)
図4 遊び時間 1回あたり集中した遊び回数の割合(子)

母親の行為、姿勢

実験中の母親の姿勢は、シートフロアでは立位では歩行、立つなど、座位では正座や体育座など床との接触面積が小さい姿勢が多く、スギ無垢材ではあぐら・横座、伸脚・開脚のようなしっかりと床に接触し、リラックスした姿勢が多く、立位はもちろん、しゃがむや片膝立ちなど立位と座位の中間姿勢をとる母親が少ないことがわかった(図5)。また姿勢の変更頻度はスギ無垢材の場合に有意に少ないことがわかった(図6)。図7は母親が行った各行為を子と遊ぶ、見守る、抱っこ(スキンシップ)などに分類し、それぞれの行為が1回当たりどの程度継続したかを示したものである。いずれの行為も、1回当たりの継続時間はスギ無垢材の場合が長い。このことから、スギ無垢材では、シートフロアの場合と比べ、母子がじっくりと遊び、スキンシップを図ると同時に、子の自立的行動に手を出さず見守る母親が多かったことが示唆された。さらに、入室直後と入室1時間後の唾液コルチゾールによるストレス値ではスギ無垢材の方が有意に低い結果となった(図8)。

図5 母親の主要姿勢 各姿勢の平均時間(母親)
図5 母親の主要姿勢 各姿勢の平均時間(母親)
図6 姿勢 全姿勢の変更頻度(母親)
図6 姿勢 全姿勢の変更頻度(母親)
図7 行為 各行為の平均継続時間(母親)
図7 行為 各行為の平均継続時間(母親)
図8 実験前後のママのストレスチェック
図8 実験前後のママのストレスチェック

4.考察

室内環境(床材質)の違いが母子の行動反応に与える影響について、行動分析法によって分析、検討した。
その結果、以下の知見を得た。

  1. スギ無垢材の床材では、座位、臥位などの姿勢が多く、母子ともにリラックスした姿勢が有意に多かった。
  2. スギ無垢材での子の遊びは、じっくり度が高く、多動性が低いなど、集中した遊びが展開されたことが示唆された。
  3. シートフロア床での母親の姿勢は緊張感が高く、すぐに立位に移行できる姿勢が、スギ無垢材の床材では、リラックスした姿勢が多く、落ちついて過ごしていたと考えられる。
  4. スギ無垢材での母子は、よりスキンシップが図られている様子が伺えた。
  5. スギ無垢材で子どもと一緒に1時間遊んだ後の母親のストレス値は、シートフロア床で遊んだ場合と比べてより低下していた。
引用文献:
「木質化された空間における母子の行動分析」第66回 日本木材学会大会(2016年,名古屋)