『香り』にも着目した
木質仕上げの提案を!
- 木の香りはストレス軽減!
木の香りを嗅いだ際の心拍変動を測定したところ、スギやヒノキの香りには交感神経の活動を抑え、緊張やストレスを和らげる効果があった! - スギの香りは鎮静効果が高い
スギはコンクリートに比べて5割ほど交感神経の活動が抑えられ、ヒノキよりも鎮静効果が高かった。 - 木の香りが役立つ場所は?
病院の待合室、面接会場、試験会場など緊張しやすい環境で不要なストレスを取り除くには木の香りを導入することが効果的。

1.背景・目的
木材利用については、木材の温かみのある感触や安らぎのある木目模様など、触覚刺激や視覚刺激による効果が報告されている。一方で、木材の抽出成分である精油のストレス症状緩和の効果や、木材に含まれるセドロールの吸入による睡眠内容の改善など、嗅覚刺激による効果も多数報告されている。本研究では、木材の香りによるヒトの快適性への効果や健康影響を明らかにすることを目的とし、国産針葉樹材を使用した樹種の違いを検討することで、用途、目的に応じた材の選択に活かすための基礎的情報の収集を目指す。
2.実験概要
本研究では木材およびコンクリートのにおいを嗅いだときの血流、脳波、心拍の計測と主観的評価により、試料のにおいが及ぼす心理・生理反応について検討した。
調査時期
実験は2014年10月29日~11月3日に実施された。
被験者
被験者は健康な30~40代の男女20名(男性10名/女性10名、平均±標準偏差:39.4±5.3歳)であった。喫煙者は0名で、前日の飲酒は「飲んでいない」が18名、「1~2杯程度飲んだ」が2名だった。職業性ストレス簡易調査票を用いた結果、被験者は全員カットオフ値より低く、精神的健康状態は良好であった。
試料
実験に用いた試料を図2に示す。スギ低温乾燥材、ヒノキ低温乾燥材、コンクリート、提示なしの4条件とした。スギ材は樹齢約80年の秋田杉で、ヒノキ材は樹齢約60年の東濃ひのきを用いた。いずれも実験の約3カ月前に製材、乾燥が開始された。乾燥後は密閉され、実験開始約1週間前に図1に示す形状にカットされた。スギ材、ヒノキ材は150mm×150mm×50mmで、表面に深さ7mm、幅3mmのスリットが入れられた。コンクリートは145mm×145mm×25mmのサイズのものを用いた。
表1および表2は小型チャンバー法による試料からの揮発性有機化合物放散速度測定結果を示す。スギ、ヒノキ材からはα-ピネンやカジネンなどのテルペン類が多い傾向がみられた。コンクリートからはアクリル酸エステル、エチルヘキサノールなどが多く検出された。
測定機器
心拍測定にはアクティブトレーサー(GMS製AC-301A)を用いた。アクティブトレーサーおよび脳波測定の様子を図2に示す。
3.結果
図3に心拍測定の結果から算出されたLF/HF比を示す。各試料について60秒間の平均値を求めた。LF/HF比は交感神経活動の指標となることが知られている。
スギ材、ヒノキ材のにおいを嗅いでいる間は、交感神経活動の指標となるLF/HF比が、コンクリートのにおいをかいでいる間および提示なしと比べて低下する傾向が見られた。
4.考察
木の香りは何も香りがないときや、コンクリートの香りを嗅いだ時に比べ、交感神経の働きを緩和し落ち着かせる効果があることがわかった。この傾向は特にスギの香りで高かった。これは精油成分としてスギがヒノキに比べてモノテルペンが少なくセスキテルペンが多いことによって、鎮静効果がより高いためと推測される。