木は人の気持ちを温かく優しくする!
- 知らない人の印象評価を比較
木のキーボードとアルミのキーボードを使って架空の人物Aのパーソナリティ評価をしてもらった。 - 木に触れているときは好印象に
木のキーボードを使った人の方が、人物Aのパーソナリティ評価が高く好印象を持っていた。 - 木の温もりが優しくさせる
温もりが感じられる木に触れることによって、人を見る目が優しくなりそう。

1.背景・目的
木が人間に与える効果については、自然の中を散歩すると、都会の散歩に比べてワーキングメモリが大きくなる(Berman,Jonides&Kaplan、2008)、木質環境で疲労が少ない傾向がみられる(河村・谷・永井、2014)といった報告がなされている。以上の報告より、我々を取り巻く木質環境が認知情報処理に作用する可能性が示唆されるが、我々が日常的に使用するデバイスの材質が効果をもたらすかどうかについては示されていない。
そこで本研究では、日常にて接触するデバイスであるキーボードの材質が他者のパーソナリティ評価に与える効果について検討を行う。上で述べたような効果が,接触する入力デバイスによってももたらされるのであれば、木質キーボードに触れることにより、人物の性格特性評価にも影響すると考えられる。
2.実験概要
被験者
大学生21名が本実験に参加した(女性20名、男性1名、平均19.90歳、標準偏差1.09)。参加者は実験参加時に木質群と非木質群に無作為に割り当てられた。
装置
木質群では木製ワイヤレスキーボードOree Keyboard(内部はApple社製キーボード)、非木質群ではApple社製ワイヤレスキーボード(アルミ製)を用いた。Apple社製MacBook Proおよび23インチ液晶ディスプレイ(EizoFlexScan EV2316W-Z)を用いて、後述する文字入力作業課題の画面を提示した。
材料
架空の人物(人物A)のプロフィールとして、Asch(1946)ならびに Williams & Bargh(2008)で使用されたものを日本語訳したものを用いた。“知的な”、“器用な”、“勤勉な”、“意思の強い”、“現実的な”、“慎重な”の6つの形容詞から構成された。
性格評価の質問紙は、Williams&Bargh(2008)で使用された形容詞対(SD法)を日本語訳して用いた。計10項目(寛大な-寛大でない”、“幸せな-不幸せな、“温厚な-怒りっぽい”、“人付き合いがよい-人付き合いが悪い”、“思いやりのある-身勝手な”,“魅力的な-魅力的でない”、“無責任な-まじめな”、“話し好きな-物静かな”、“強気な-弱気な”、“正直な-正直でない”)あり、1-7点の7件法で回答を求めた。
手続き
実験は、実験用個別ブース内において通常照明下で行った。参加者がブース内のデスクに着席すると、最初に30秒程度、机上に置かれたキーボードのキーの配列を確かめる、キーを押すなどして、使用するキーボードに習熟することを求めた。続いて、参加者の正面に設置したディスプレイの画面上に提示された、大文字のアルファベットもしくは数字1文字に対して、なるべく正確に、それに該当するキー押しを行わせる文字入力作業課題を参加者に課した。
さらに、紙に印刷した架空の人物(人物A)のプロフィールを読ませ、30秒間その人物について想像させた後、その人物の性格について10項目の形容詞対(2.3節参照)に対し、7件法で回答を求めた。
3.結果
実験参加者21名のうち、使用したキーボードに不具合が生じたと報告した木質群1名のデータを分析から除外し、木質群、非木質群各10名のデータを分析の対象とした。
印象評定の際に用いた計10項目に対し、負荷量が0.35に満たない項目や両因子に負荷を示した項目を削除しながら因子分析(最小2乗法、promax回転)を行った。その結果、第1因子として「社会的望ましさ因子」(「寛大でない-寛大な」、「怒りっぽい-温厚な」、「魅力的でない-魅力的な」、「正直でない-正直な」)、第2因子として「個人的親しみやすさ因子」(「物静かな-話し好きな」、「人付き合いが悪い-人付き合いが良い」、「身勝手な-思いやりのある」)を抽出した。
上記の2因子において、木質群と非木質群でそれぞれ得点を集計した結果を表1に示す。各因子を従属変数、材質条件を独立変数として対応のない検定を行った。その結果、第1因子(社会的望ましさ)において、木質群で非木質群よりも得点が高い傾向が示された[t=2.03、p<0.10]。

4.考察
本研究の結果、60秒程度の単純な作業課題を行わせ、木質素材のキーボードに触れさせることによって、社会的望ましさという他者のパーソナリティ評価が高くなる傾向が確認された。以上の結果は、日常生活において我々が使用しているデバイスへの接触が、他者の社会的認知に影響を与える可能性を示唆するものである。特に、木質素材に触れることによって他者の評価が高くなることは、これまで報告されてきた木の効果を支持する結果であると言える。
- 引用文献:
- 「キーボードの材質が他者のパーソナリティ評価に与える効果」電子情報通信学会技術研究報告:信学技報2015年5月115巻p.205-206