さみしい気持ちを
やわらげる木の空間
- 仲間はずれにされたときの脳波を比較
意図的に仲間はずれにされた時の感情の変化を、脳波を用いて木質/非木質空間で比較してみた。 - 木の空間では楽観的になれる
木質空間は排斥感を与えても感情の変化が緩やかで心理的痛みが少なかった! - 木の空間でメンタルヘルス向上
学校や職場で嫌なことや悲しいことがあっても、木質空間であれば気に留めずに平常心でいられそう。

1.背景・目的
集団に所属し他者との良好な関係を築くことは、人間が社会生活を営む上で不可欠な要素である。一方で、人間は対人的な孤独を経験した時には、自律神経や循環器系への障害、不安、ストレスなど数多くの心身へのネガティブな反応が生じることが明らかにされている。つまり、人は他者とのつながりを形成し、維持することへの強い動機づけを備えており、他者から排斥されることに対しては、きわめて敏感な反応を示すと言える。本研究では、木の質感知覚ならびに木質空間が認知に与える効果を検証する一環として、木質空間には排斥時の心理的痛みを軽減する効果があるか?を検証するため、サイバーボール課題を用いた被験者実験を行った。
2.実験概要
被験者
大学生および大学院生36名。
実験環境
実験は図1に示す木質空間および非木質空間で行われた。いずれも縦500cm×横258cm×高さ245cmの空間であり、木質空間には長手方向の壁4面に国産杉無垢材が床と水平方向に貼り付けられた。各実験空間には縦120cm×横75cm×高さ72cmの白い天板机と茶色のイスを二つずつ配置した。机の一方は被験者用、もう一方は実験者用であった。被験者用の机は窓側の壁から100cm離れた右壁面に設置し、デスクトップパソコン(DELL)および液晶ディスプレイ(EIZO)を配置した。実験者用の机は入口側の壁面に設置し、質問紙および認知課題の回答用紙を配置した。高さ110cm×幅195cmの窓枠には茶色のブラインド、出入り口には外から見えないように高さ186cm×幅140cmのクリーム色のパーティションを設置した。
方法
サイバーボール課題では、実験参加者はPCモニターの中で他2名のプレイヤーと仮想のキャッチボールを行うよう求められる。しかし実際には、実験参加者に回されるパスの回数は、実験者によってあらかじめ設定されており、本実験では、ゲーム中に回されるパスが少ない(もしくは、一度もない)状態を排斥として定義し、排斥時の実験参加者の心理状態と脳波を測定した。サイバーボール課題のプレイ画面を図2に示す。
脳波は、以下の図3に示す頭皮上20部位で測定した。測定風景の写真を図4に示す。
脳波解析は以下の通りとした。
- サンプリング周波数:1000Hz
- バンドパスフィルタ:0.05~20Hz
- エポック区間:ボール呈示前0.2s~後1.5s
- 独立成分分析(ICA)でアーチファクト除去
- ±100μV以上の変動があったエポック除外
- 加算平均:各被験者について、
空間2種×公平性2種×パス受け手2種の組合せによる8条件のERP波形を算出
3.結果
図5に示す通り、非木質空間に比べ、木質空間では排斥時のLPP様成分の減衰が見られた。これは、自分にボールがこなかった際の感情処理の減衰と推測される。
4.考察
非木質空間に比べ、木質空間では自分にボールが来ないような排斥時の感情処理が減衰した。木質空間は、「まあどうせこないでしょ」という達観的な心的状態をもたらし、心理的痛みを軽減する効果が期待できる。