木の待合室では
時間が早く感じる!
- 楽しい時間は早く感じる
人は快適で楽しい時間を過ごすとき、時間を短く感じることが経験的に知られている。 - 木の部屋では時間を早く感じる
待合室を想定した木質仕上げ居室と白色クロス居室で時間感覚について比較したところ、木質仕上げ居室の方が時間を短く感じられた。 - 木の内装で快適な待合室を
病院や役所の待合室など待ち時間がストレスになりやすい空間に木を使うとストレスが減らせそう。

1.背景・目的
人は快適で楽しい時間を過ごすとき、本来の経過時間よりも時間を短く感じることは経験的に知られている。このことから病院や役所のような公共空間の待合スペースを木質化することを見据え、「木質空間の快適性によって時間が短く感じられるのではないか」という仮説を検証した。
2.実験概要
被験者は41名の男子大学生(平均年齢22.2±1.7歳)。
図1に示す待合室を想定した木質居室(以下、WR)と対照居室(以下、CR)を用意し(20.5m2、4.095m×5.005m×H2.450m)、それぞれに同じソファとカウンターを設置した。WRの床はスギ柄シート床材、壁面はスギ無垢柾目縦格子材、天井はスギ柄柾目天井板で施工し、その他は白色クロスで仕上げた。CRの床は白系石柄シート床材、壁と天井は白色クロスで仕上げた。照明器具と空調機は同デザイン・同出力のものを設置し、温湿度は25℃、50%RH、床面照度は300lxに設定した。
実験中、被験者には6種類のアンケートに回答させた。KG式日常生活質問紙で「行動パターン」、特性不安検査(STAI)で「特性不安」、日本語版エプワース眠気尺度(JESS)で「日中の眠気」、労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストで「疲労蓄積度」、Visual Analogue Scale(VAS)法による主観評価で「部屋の印象」、自覚症しらべで「疲労状況」をそれぞれ得点化した。
被験者を閉眼状態で車椅子に座らせ、実験者が車椅子を押していずれか一方の供試空間に入室させた。車椅子は図1の左側壁面に向けた状態で固定し、20秒程度の閉眼安静後、開眼を指示して約1分間、居室内装を観察させた。その後、ストップウォッチを手渡し、30秒間と180秒間の時間感覚を産出法によって1回ずつ申告させた。続いてVAS法と自覚症しらべに回答させ、終わったら閉眼状態を指示し、実験者が車椅子を押して部屋から退出させた。各居室の外に設けた前室にて、KG式、STAI、JESS、労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストに回答させた。回答後、もう一方の居室についても同様の手順で評価させた。VAS法による主観評価と自覚症しらべは各居室において2回、その他の4つは一方の居室での測定が終わった後、1回だけ回答させた。
部屋の入室順は被検者によってランダムとした。また、匂いの影響を除去するため、実験中は被験者に活性炭入りマスクを装着させた。
3.結果
図2に各居室における15項目のVAS得点の平均値、図3に自覚症しらべによる5つの疲労状況の平均得点を示す。
Wilcoxonの符号付き順位和検定により、「鎮静的な/覚醒的な」を除く14の評価項目において有意水準1%で有意差が認められた。ここで特徴的なのは、WRの方が「好きな」「快適な」「深みがある」のような、いわゆるポジティブな印象を受けたことである。同様に疲労状況については、「不安定感」と「不快感」の評価値がWRの方が有意水準1%で小さくなった。これらの結果から、今回用いた木質空間は非木質空間よりもポジティブな印象を受け、疲労感は少なく感じられる空間であることが分かった。
次に、各居室間における時間感覚の差について述べる。
30秒間と180秒間それぞれの産出時間について、Thompson検定(p<0.05)により外れ値を除去し、WRとCRの平均値を比較した(図4)。その結果、180秒間での産出時間において、WRの方がCRよりも有意に大きい、すなわち時間が短く感じられた。
4.考察
180秒間の産出時間は、木質居室にいる方が有意水準1%で大きくなり、木質居室では時間感覚が短く感じられることが示唆された。時間感覚と性格特性や普段の眠気及び疲労蓄積状態との間に相関関係は認められなかった。
- 引用文献:
- 「待合室を想定した木質空間における時間感覚について」日本建築学会大会(2019年、北陸)