【木の効果】
研究成果ライブラリー

住友林業
E25
  • 疲労緩和効果
  • 生産性効果

観葉植物で疲労回復!

ここがPoint!
  • 観葉植物の有無で比較
    VDT作業の間に観葉植物のある/ない部屋で休憩したときの疲労回復効果を比較した。
  • 観葉植物で効率低下が抑制
    観葉植物を置いた部屋には、疲労回復効果があり、作業能率低下が抑制された。
植物ありとなしの疲労感

1.背景・目的

室内環境の改善に関しては、これまで植物を取り入れた室内環境が人間の心理に与える効果について、いくつか報告されており、VDT作業による疲労への効果については主観的評価に基づいて検証を行った報告があるが、客観的評価を加えて検証した報告はほとんどない状況である。
本研究では、観葉植物を取り入れた室内環境がVDT作業によって生じる疲労からの回復に及ぼす効果について主観的評価および客観的評価により検討するため、35歳以上45歳未満の健常男性を対象としたクロスオーバーによる比較試験を実施した。

2.実験概要

被験者

被験者は、35歳以上45歳未満の男性健常者とした。ただし、器質的眼科疾患(緑内障、白内障、色覚異常など)を有している者、現在、他の臨床試験に参加中の者、その他、試験責任医師が不適当と判断した者は除外した。以上の条件を満たした被験者は36名で、試験データの解析に参加しない割付担当者が2グループに割り付けた。

試験設備

設備は、「観葉植物を設置した部屋(植物あり)」と「観葉植物を設置しない部屋(植物なし)」の2条件とした(写真1)。試験設備の緑視率、照度を測定し、検査実施中は試験設備内のCO2濃度、温度、湿度を測定した。

植物を設置した部屋
植物を設置した部屋
植物を設置しない部屋
植物を設置しない部屋
写真1 幅3380mm×奥行き2415mm×高さ2640mm

VDT作業による疲労負荷の方法

VDT作業負荷の方法として、Stroop様課題およびAdvanced Trail Making Test(ATMT)のR課題を行った。Stroop様課題は、信号機の色に注目して青信号が点灯すれば右クリック、赤信号が点灯すれば左クリックをすばやく行う課題である。
ATMTのR課題はパソコン画面上に提示された25個のアルファベットの中からRをすばやくクリックする視覚探索反応課題である。Stroop様課題30分間、ATMT(R課題)30分間を1セットとして合計2セット120分間実施した。

検査方法

作業能率評価、自律神経機能評価(加度脈波a-a間隔の周波数解析)、尿検査のための採尿、理学的検査および問診は、すべて医療法人ふくだ内科クリニックの管理下で実施した。検査日については絶食状態で被験者を来院させた。すべての検査を医師の管理のものに実施した。本試験では日本疲労学会の定める抗疲労臨床評価ガイドラインの基準を参考にし、主要評価項目をATMT(ABC課題)による作業能率評価、副次的評価項目をVisual Analogue Scale(VAS)、自覚症しらべ、自律神経機能評価、尿検査とした。

3.結果

本研究では観葉植物を設置した部屋のVDT作業によって生じる疲労からの回復効果について、観葉植物を設置しない部屋との比較により検討したところ以下のことが確認された。
主要評価項目であるATMT(ABC課題)において、植物あり群は植物なし群と比較して、1回目のB課題エラー数、B課題標準偏差、B課題変動係数の低値傾向がみられ、植物あり群によって作業能率の低下が抑制されることが示唆された。日本疲労学会において、「疲労」とは過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた心身の活動能力・能率の減退状態であると定義されていることから、作業能率の低下を疲労と捉えることができる。観葉植物を設置した部屋で休憩することにより疲労が軽減されることが示唆された。また、労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストが10点以下の被験者によるサブグループ解析においては、1回目のC課題平均反応時間の有意な低値がみられた。労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストが10点以下は評価Ⅰ~ⅣのⅠまたはⅡに該当し、疲労蓄積度が重度でない集団においては、観葉植物を設置した部屋で休憩することのみで十分に疲労が軽減されることが確認された。さらにこの集団においては、A課題からB課題への移行時間についても1回目で有意な低値がみられた。ATMTの課題間の移行時間は意欲を反映することから、観葉植物を設置した部屋で休憩することによりVDT作業によって生じた疲労がリセットされ意欲が向上したものと考えられた。
VASにおいては、負荷120分後からの変化において、植物あり群は植物なし群と比較して、眼の疲れ、全体的疲労感が休憩時間中、作業120分後で有意な低下、快適感が休憩時間中で有意な上昇がみられ、主観的評価においても観葉植物を設置した部屋により、眼の疲れ、疲労感が軽減されることおよび快適感が向上することが確認された。また、自覚症しらべにおいては、植物あり群は植物なし群と比較して、負荷120分後からの変化において、Ⅰ群(ねむけ感)が休憩60分後、作業120分後で有意な低下、Ⅱ群(不安定感)が休憩60分後で有意な低下、Ⅲ群(不快感)が作業120分後で有意な低下がみられ、観葉植物を設置した部屋により、眠気が抑制されること、心身的に安定した状態になること、VDT作業後も不快感を生じないことが確認された。

課題の反応時間
課題の反応時間
課題間の移行時間
課題間の移行時間
VASによる主観的評価不可から60分経過後の全体的疲労感
VASによる主観的評価
不可から60分経過後の全体的疲労感

4.考察

観葉植物を設置した部屋では、観葉植物を設置しない部屋よりも、疲労からの回復効果があり、作業能率の低下が抑制されることが示唆された。

引用文献:
「観葉植物を取り入れた室内環境がVDT作業によって生じる疲労からの回復に及ぼす効果」日本疲労学会誌(Journal of Fatigue Science)16巻 1号 67ページ 発行年:2020年11月05日