木のオフィスで
知的生産性アップ!
- 実際のオフィス空間で検証
ラボ実験で得られたさまざまな木の効果について、実際の木造オフィスで本当に発揮されるのかを検証。 - 木造オフィスで生産性向上
木造のオフィスでは知的生産性(知的業務から質の高い成果物を効率的に生み出す能力)やワークエンゲイジメント(仕事に対してのポジティブで充実した心理状態)が向上した! - 生産性向上で建築費アップ分を相殺
社員の生産性が向上することで、木のオフィスを建築してコストアップしても、数年でペイできる可能性がありそう。

1.背景・目的
職場環境におけるウェルネスへの関心が高まる中、WELL Building StandardやCASBEEウェルネスオフィス(以降、CASBEE-WO)等、建築物評価ツールが整備されることで、快適性や省エネに加え、知的生産性向上や健康増進を促す建築設計が浸透しつつある。上述の背景の下、研究所オフィスの新築・移転に伴う執務環境の変化をCASBEEオフィス健康チェックリスト(CASBEE-OHC)により評価すると共に、執務者の状態の変化を知的生産性測定システムSAP、ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度UWESで調査し、移転に伴う執務環境の変化と執務者への影響を分析した結果を示すものとなる。
2.実験概要
対象建築物
図1、2に今回新築した建物の外観と内観を、表1に概要を示す。民間企業の研究所(オフィス)であり、地上3階建ての木造建築である。同社が開発した木構造技術(ポストテンション構造)を採用し、木の梁・柱など構造部分をオフィス内装として積極的に現すことで、有機的なインテリアデザインと共に、研究開発業務を行う執務者に対して研究成果の可視化をしている。また、観葉植物を適所に配置し、執務者の視界に常に木や緑等の自然素材が入るように配慮している。
尚、移転前の執務環境は、鉄骨2階建て(1990年竣工、移転時築29年)の一般的なオフィスであり、会議室やエントランス等の一部エリアの内装は木質化されているものの、執務室は白色を基調とした床・壁・天井・什器類で構成された比較的無機質な空間である。

調査概要
2019年11月に執務室の移転が行われた。移転前後に執務者へアンケート調査(CASBEE-OHC, SAP, UWES)を行い、移転に伴う執務環境と執務者の状態の変化を主観的に評価した。調査対象者となる本棟執務者約84名の内、移転前調査は35名分、移転後は37名のアンケート回答を得た。なお、内25名は移転前後共に回答が得られている。
3.結果
建物と執務環境の客観評価:CASBEE-OHC
図3に項目別の回答の平均値の推移を示す。1.5点を中間値とした場合、移転前はほぼ全ての項目で不満若しくは整備状況が未充足と判断されていたことに対し、移転後には概ねの項目で満足若しくは整備状況が充足されたと評価されるように推移している。
知的生産性評価:SAP
表2に移転前後の知的生産性の調査結果を示す。移転前の知的生産性の増減率の自己申告値の平均は凡そゼロとなる。四分位範囲も-1.25 ~1.00であり、従前の執務環境を中立状態とした回答が得られている。この結果と比較し、移転後は平均値が5.95と増加している。加えて、第1四分位値が0.50と正の値を示し、概ねの執務者が移転に伴い知的生産性の向上を感じていることがわかる。

ワークエンゲージメント(WE)評価:UWES-9
表3に移転前後のWEの調査結果を示す。移転前の平均値(総合)は3.15となる。日本国内の平均(2.77~2.87)との比較から、移転前においても高い傾向を示すが、移転後は更に上昇し3.44となっている。移転後、第1四分位値も2.28から2.78と全国平均に近い値に上昇しており、概ねの執務者がWEに関し確実な改善を示したと言える。 各下位尺度(活力/熱意/没頭)は、熱意の移転前後での変化が小さい一方、活力、没頭の向上が顕著となる。CASBEE-OHC項目別スコア(図3)に示すように、移転に伴い執務環境の評価が全体的に向上したことが、活力、没頭の向上に寄与し、結果としてWEの向上に繋がったものといえる。

4.考察
研究所の移転に伴い、新棟の性能をCASBEE-OHCを用い客観的且つ主観的に評価した上で、執務環境の変化と執務者の知的生産性及びWEの関係を分析した。WE及び知的生産性共に、移転に伴う執務環境改善により有意に向上したことが確認された。
- 引用文献:
- 「研究所新棟への移転による執務環境の改善と執務者への影響の分析」日本建築学会技術報告集 第27巻 第65号,297-302,2021年2月