【木の効果】
研究成果ライブラリー

住友林業
E28
  • 疲労緩和効果
  • 生産性効果

本物の木は効果も本物!

ここがPoint!
  • 偽物と本物で比較
    木目シート、突板材、無垢材仕上げの3部屋で作業時の意欲や疲労、印象評価を、仕上げの材質を教える前と後で比較してみた。
  • 本物の木のチカラ
    材質を教える前は、本物でも偽物でも本物の木と思っていて同様に疲労が軽減された。ところが偽物の木は、偽物だと知ったとたん作業時のエラーが倍近く増え、本物の木は変わらずエラーが少なかった。
  • コト売り効果も重要
    木の樹種や製造工程などを説明することで木の効果がより発揮できる可能性も。
総エラー数

1.背景・目的

厚生労働省の平成20年技術革新と労働に関する実態調査によると、職場でVisual Display Terminal(VDT)作業により労働者の68.6%が身体的な疲労や症状を、34.6%が精神的な疲労やストレスを感じていることが報告されている。疲労を起こしにくくする対策の一つとして室内環境の改善があり、これまでにも内装を工夫することによる疲労軽減効果が報告されている。これらは視覚情報が自律神経系に作用することで疲労が軽減されるものであるが、疲労の軽減には、視覚や嗅覚等の五感以外の心理的要因によるものも報告されている。
本研究では、木質内装において、空間を構成する材質が木材や木目調印刷シート(以降、木目シート)であると認知することが生理学的反応に及ぼす影響の検討を目的とし、壁面の材質が無垢材・突板・木目シートのときの、材質の違いおよび各材質の説明・教示の有無における生理量の測定試験を実施した。(表1)

表1 実験条件(N=66)
表1 実験条件(N=66)

2.実験概要

被験者は20歳以上65歳未満の男女66名とした。設備はブース壁面を無垢材・突板・木目シートの3種類とした。(図1)
「無垢材」はスギ無垢材、「突板」は合板+スギ突板、「木目シート」は合板+EBコーティングされたオレフィンフィルムを用いた。実験は、いずれかの壁面材質ブースに被験者を22名ずつ割り当て、第1期は説明・教示なし、第2期は説明・教示ありとして2日に分けて行った。
被験者にはいずれかの壁面材質ブースでVDT作業を30分間実施させた後、15分間休憩させた。休憩後、さらにVDT作業を実施させた。第2期においては、ブースへの入室前に無垢材・突板・木目シートに関する説明を行い、被験者が入るブースの材質を教示した。(図2)
また、被験者は活性炭マスクを着用し、においの影響を排除した。
主要評価項目は作業能率評価としてVDT作業[ATMT(ABC課題)、ATMT(PartB)]、副次的評価項目は主観評価としてVAS(疲労感、眠気、意欲、集中力)、自覚症しらべ、自律神経機能評価(加速度脈波a-a間隔の周波数解析)、印象評価アンケートとした。本報告では、ブース内で行ったATMT(ABC課題)とVASの疲労及び疲労感に関する結果について考察を行う。

図1-1 無垢材ブース
図1-1 無垢材ブース
図1-2 突板材ブース
図1-2 突板材ブース
図1-3 木目シートブース
図1-3 木目シートブース
図2 実験タイムスケジュール
図2 実験タイムスケジュール

3.結果

ATMT(ABC課題)のうちB課題の空白押しエラー数およびエラー総数について、1.木目シートブースにおいてのみ説明前後で有意な増加が見られた。(図3)2.第2期(説明あり)において、木目シートブースは無垢材ブースと比較して有意にエラー数が多かった。

図3 総エラー数(ATMT(ABC課題 B課題))
図3 総エラー数(ATMT(ABC課題B課題))

4.考察

説明前後で疲労に差が見られたことから、「身体的レベル」の反応(五感刺激)だけでなく、「心的レベル」の反応(認識)も生理学的反応(本研究では疲労)を引き起こす要因になっている可能性が考えられる。
今回の実験では、第2期の材質説明において、無垢材・突板・木目シートを提示し、説明だけでなく実際に触れる、ルーペで拡大して見るなどの工程を行っている。これにより、無垢材・突板・木目シートの違いや、木目シートが印刷物であることを認識し、この「心的レベル」の反応によって、木目シートのブースで説明後にエラー数が多く、すなわち作業能率が低くなったと考えられる。
説明後の木目シートのブースでは無垢材のブースと比較して有意に疲労が大きかったことから、材質を十分に認識すると、木目シートは無垢材より大きな疲労を与えると言える。

引用文献:
「木質内装における材質の認識が心理・生理反応および印象評価に与える影響」日本建築学会環境系論文集 87 (800), 619-627, 2022-10-01