【木の効果】
研究成果ライブラリー

住友林業
E01
  • 快適性効果

内装木材は
たくさん使えば良い訳ではない!

ここがPoint!
  • 木材率で効果が変化
    内装に使われる木材の割合によって使用者の生理心理反応が変化。
  • 45%程度が効果的
    内装木材の割合が45%の部屋では、0%や90%の部屋よりも血圧減少と脈拍増加が見られ、もっとも快適で落ち着くと評価された。
  • 用途に応じて使い分けを!
    内装木材の割合は高ければよいというわけではなく、用途に応じて最適な割合が存在しそう。
皮膚疾患発症件数/年

1.背景・目的

これまでの木造住宅の居住性に関する研究は、断熱性や湿度調整など物理的特性に焦点を当ててきた。近年は心理的・生理的側面も重要視されている。これらの研究では、主観評価と生理反応が必ずしも一致しないことが報告されていることから、本研究では、室内の木材量が人間の自律神経活動や脳活動に与える影響を明らかにすることを目的とする。

2.実験概要

試験デザイン

被験者は健常男性15名(19~28歳)で、全ての被験者に実験の趣旨・目的・方法を十分に説明し、文書による同意を得た。被験者は、木材比率の異なる3種類のモデルルーム(0%、45%、90%、各13m2)にランダムな順序で曝露された。各部屋での曝露時間は90秒とし、その間に生理指標を連続測定した。測定した生理指標は、脈拍、血圧(Finapress)、前頭部総ヘモグロビン濃度(NIRS)である。曝露後、主観評価として「快適さ」「自然さ」「安らぎ」について13段階評価を行い、さらにPOMS(Profile of Mood States; 気分状態プロフィール)を用いた気分状態の評価を実施した。

試験設備

図1に実験概要の模式図を示す。室内環境は温度21~23℃、相対湿度50~60%、照度40lxに制御した。臭気や風の影響は排除した。

0%木材:壁・床・天井すべて白
0%木材:壁・床・天井すべて白
45%木材:木製床+腰高まで木製壁
45%木材:木製床+腰高まで木製壁
90%木材:壁・床・天井ほぼ全面木材
90%木材:壁・床・天井ほぼ全面木材
図1 モデルルーム内観

3.結論

図2に木材比率別の主観評価スコアの平均値を示す。
縦軸の評価平均点は、各設問の配点に基づき、15名の被験者の回答から項目ごとに算出したものである。図より、木材量の違いによって評価傾向が異なることが分かる。
適度な木材量(約45%)では「快適さ」「安らぎ」の評価が最も高く、過剰な木材量(90%)では情報過多による疲労が推測され、評価は低下する傾向を示した。一方、木材を全く使用しない部屋(0%)は人工的と評価され、快適性や安らぎのスコアは低かった。

快適さ
自然さ
安らぎ
図2 木材比率別の主観評価スコアの平均値

図3に生理指標の90秒間の経時変化を示す。縦軸は、開眼前10秒間の平均値を100とした時の相対値として表現している。
45%木材の部屋では、脈拍増加と血圧低下が観察され、快適性を感じる状態に対応していると考えられる。一方、0%木材の部屋は、脈拍や収縮期血圧の変化はほとんどなく、拡張期血圧の変化も他の部屋よりも小さかった。90%木材の部屋は、収縮期血圧と拡張期血圧が20秒後から大きく低下し、過剰な視覚情報による疲労が示唆された。

45%木材の部屋
0%木材の部屋
90%木材の部屋
図3 生理指標の結果(上:脈拍、中:収縮期血圧、下:拡張期血圧)

4.考察

木材量の違いによる室内環境の効果を、模型実験による被験者の主観評価と生理反応から明らかにした。
その結果、評価対象とした条件の中では、木材比率約45%の部屋が快適性と安らぎの面で最も適していることが示唆された。一方、木材を全く使用しない部屋(0%)は人工的と評価され、快適性は低かった。過剰な木材量(90%)では自然さはあるものの、情報過多による疲労が推測され、快適性は低下した。
生理反応の結果もこれを支持しており、45%木材の部屋では血圧低下と脈拍増加が観察され、快適な状態に対応していると考えられる。90%木材の部屋では、曝露後半で脳活動の急減と脈拍急増が見られ、過剰な視覚情報による負荷が示唆された。
これらの結果から、適度な木材量は快適性と生理的安定をもたらすが、過剰な木材は逆効果となる可能性があることが明らかになった。今後、室内設計において生理的影響を考慮することが重要である。

引用文献:
「Physiological effects in humans induced by the visual stimulation of room interiors with different wood quantities」 Volume 53, pages 11–16, Journal of Wood Science, 2007