【木の効果】
研究成果ライブラリー

住友林業
E09
  • 快適性効果
  • その他効果

男性と女性で木の感じ方が違う!

ここがPoint!
  • 木材は高級だから快適とは限らない
    本物、偽物が混ざった22種類の木材サンプルを、視覚、聴覚、触覚それぞれについて印象を聞いたところ、視覚、聴覚、触覚いずれも高級なものが必ずしも快適なものではなかった。
  • 男女間で差が出たのは高級感と快適性
    木の色が明るいと、男性は高級、女性は快適と感じ、木が本物らしいと、男性は快適、女性は高級と感じる。
  • 色柄打合せの参考に
    これらの違いを意識して内外装の色柄打合せをすると、スムーズに打合せが進むことでしょう。
男女別の分析

1.背景・目的

多くの研究では、材料特性のマルチモーダル知覚について、視覚と触覚、視覚と聴覚、聴覚と触覚、視覚と動作といった二つのモダリティにおける知覚が調査されてきた。本研究では、木材を対象として、視覚・聴覚・触覚という三つの異なるモダリティにおいて、同じ感性的な分類が見られるかどうかを検討した。本稿では「形容詞対」による質感評価に焦点を絞り、各感覚モダリティにおける木の質感、知覚特性の男女間の違いを分析することを目的とする。

2.実験概要

被験者

視力聴力正常な20歳から40歳の成人50名が実験に参加した(男性 26名(平均年齢 28歳、SD 4.75 )、女性 24名(平均年齢 29歳、SD 4.42 )、有意差なし)。本実験はヘルシンキ宣言に則り産業技術総合研究所人間工学実験委員会の承認を得て行われた。

実験刺激

樹種の選定、加工
Figure1に、本研究で使用された試験片セットを示す。本実験では、本物、偽物とりまぜて22種類の素材が用いられた。その内訳は、特殊加工を施さない本物の木材で樹種が異なるもの14種類、本物の木材で同一樹種(杉)だが加工が異なるもの4種類、偽物の木材(木ではない素材に木目シートを貼ったもの)4種類であった。サイズはすべて、幅 60mm 、長さ 120mm 、厚み 9mm に統一した。
1. スギ、 2. ヒノキ、 3. マツ、4. ファルカタ、 5.ポプラ、 6. ラワン、 7. メイプル、 8. クリ、 9.ウォルナット 10. チェリー 11. オーク 12. チーク 13. ブビンガ 14. コクタン、 15.スギ圧縮材(圧縮率50%)、16. スギ熱処理材、 17. スギ不燃処理材(薬剤付加)、 18. スギ熱処理かつ不燃処理材、19.スギ柄オレフィン系シート+MDF(ラジアータパイン、ユリア系ライトタイプ9mm)、20. スギ柄オレフィン系シート+合板(広葉樹(メランティ、セラヤ、メルサワ等)9mm)、21. スギ柄オレフィン系シート+スチレンボード(9mm)、22. スギ柄オレフィン系シート+人工大理石(アクリル人工大理石、9mm)。木材は、すべて無垢材、無塗装で統一し、表面に同じ粗さのやすり(240番)でやすりがけをした。試験片の劣化や、材温の変化が質感に与える影響を排除するため、材温の変化が質感に与える影響を排除するため、実験期間中、これらの試験片は、温度が約25℃に保たれた部屋で24時間管理された。

Figure1
Figure1

視覚刺激

22種類の試験片セットのそれぞれを撮影した写真を提示した。

聴覚刺激

試験片セット22種をマレットで叩いた時の音を採録したものを提示した。Figure2に視覚実験と聴覚の実験風景を示す。

Figure2
Figure2

触覚刺激

映像刺激、音刺激には、写真および録音したデジタル刺激を用いたが、触覚のみは、実際の試験片を用いた。視覚刺激、聴覚刺激作成に用いた試験片と同じものをそのまま触覚刺激とした。Figure3に触覚実験の実験風景を示す。

Figure3
Figure3

評価語

先行研究で用いられている評価語を参考に、23の形容詞対を選んだ(Table1)。

Table1
Table1

3.結果

因子分析

木の質感を測定する23対の形容詞のうち、似たような評価パタンを持つものをまとめることを目的として、因子分析を行った。本研究では、視・聴・触覚ごとに、23個の形容詞について、1100ケース(50人×22の樹種)に対する因子分析(最尤法、プロマックス回転)を行った。Table2に視覚、聴覚、触覚の因子分析の結果をまとめている。視覚、視覚、聴覚、触覚という全ての感覚を通じて、「高級感と希少性」、「快適性とリラックス感」という要素が別の因子として見出されていることがわかる。このことは、我々が視覚においても、聴覚においても、触覚においても、木を認識する際に、「高級感・希少性」と、「快適性・リラックス感」を別のものとしてとらえることを示唆している。これは例えば、高級と知覚される木が必ずしも快適なものとは知覚されないことを意味している。私たちの日常には、高級感と快適性が連動するものはするものは様々ある。例えば飛行機は、エコノミークラスよりもビジネスクラス、ビジネスクラスよりもファーストクラスというように高級になればなるほど快適性も上がる。しかしながら、木の質感知覚においては、同様の単純な連動関係はみられないようである。

Table2
Table2

男女別の分析

一般に、低次の知覚判断は高次の認知(価値)判断よりも個人差が小さくなると考えられる。例えば、三角形と円形のケーキがあった場合、「どちらが三角形でどちらが円形か」の判断は、誰が行っても同じであり、一方で「どちらが美味しそうか」という判断は、人によってばらつく。したがって、属性別の相関を見ることによって、ある程度、その判断の処理レベルを予測することができる可能性がある。このような動機のもとで、男女別の相関分析をおこなった。
結果、男女別の分析でも、男女込とほぼ同様の内容の因子が抽出された。第1因子に視聴覚の特性、第2因子に高級感・希少性、第3因子に快適性・リラックス感を示す因子を含んでおり、高次質感知覚においても、男女込と同様の構成となっていた。
ただし、男女間で所属因子の異なる項目が2つあった。1つは、「表面が明るい」、もう1つは「本物らしい」である。「表面が明るい」について、男性は視聴覚特性と高級感・希少性を示す因子にその項目を含むのに対し、女性のそれは快適性・リラックス感を示す因子に含んでいた。これは、男性が「表面が暗い」を、「高級な」と同類とよりみなす傾向にあるのに対し、女性は「表面が明るい」を、「快適」と同類であるとよりみなすことを意味する。また、「本物らしい」についても、男性は「快適」と同類とみなすのに対し、女性は「高級な」と同類であるとよりみなす傾向にあることを示す(Firure4)。

Firure4
Firure4

4.考察

表面が明るい木には、男性は安っぽさを、女性は快適さをより感じやすく、表面が暗い木には、男性は高級さを、女性は不快さをより感じやすい傾向が、一方で、本物らしい木には、男性は快適さを、女性は高級さをより感じやすく、偽物らしい木には、女性は安っぽさを、男性は不快さをより感じやすい傾向が示唆された。

引用文献:
「視覚,聴覚,触覚による木の質感知覚」日本視覚学会2013年冬季大会2p25