E12
木の空間では
高齢者がよくしゃべる
- 老人ホームでの発話量を比較
老人ホームの居室の壁一面に木を貼る前と貼った後で音声モニターで測定しながら世間話をしたところ、木を貼る前後で2割くらい発話量が増えた! - 木の内装でコミュニケーション向上
内装に木を使うことでコミュニケーションが取りやすなれば、部屋に籠って孤独になりがちな高齢者施設のご入所者様の心身の健康につなげられそう。

1.背景・目的
人間関係を築く上でコミュニケーションは必要不可欠なものである。とりわけ介護の場では、高齢者や身体に不自由がある方と接する際に、一人ひとりの心身の状態に配慮した適切なコミュニケーションが求められる。また、高齢者施設におけるコミュニケーションは、人間関係を築くだけでなく、認知機能の維持・向上やストレスの防止にも非常に重要である。そこで本研究では、高齢者施設における居室の木質化によって、入居者とのコミュニケーションに差が生じるかどうかの検証を行った。
2.実験概要
- 被験者:老人ホームに入居する7名(平均年齢:85.8才)
- 条件:2条件(内装木質化改修前 vs. 内装木質化改修後)
- 居室ベッド横の壁一面を杉の無垢羽目板を貼る工事の前後で、入居者の発話から情動を分析する心理分析システムによる音声分析でcalm(落ち着き)、anger(いかり・主張)、joy(喜び)、sorrow(悲しみ)の得点および発話数の比較を行った。なお、測定は普段からコミュニケーションととっている介護スタッフとの会話中に行い、改修後の測定は工事の影響が落ち着く改修後約半年後とした。
* 心理分析システムとは、音声から感情をリアルタイムに定量計測するもので、発話と同時にリアルタイムで各感情の得点が色と量で表示される。
3.結果
感情分析の結果、木質化後では木質化前よりcalm(落ち着き)、joy(喜び)の得点が上がり、anger(いかり・主張)sorrow(悲しみ)の得点が下がる傾向が見られたが、有意差はなかった。

発話数を測定した結果、木質化後では木質化前より単位時間あたりの発話数が有意に増える結果となった。
4.考察
今回、老人ホーム入居者の居室での発話数を測定した結果、内装木質化後では木質化前より単位時間あたりの発話数が有意に増える結果となった。ただし、測定にあたっては入居者および介護スタッフへの負担が非常に大きいため、本来は数日間に渡って行うべき測定が、木質化前と後でそれぞれ1日ずつしか実施できなかった。より信頼性を上げるために、数日間に渡った追試を行う必要がある。