【木の効果】
研究成果ライブラリー

住友林業
E32
  • 快適性効果
  • その他効果

木の健康効果は
ワンちゃんにとっても有効!

ここがPoint!
  • 実際の訓練施設で検証
    木造の盲導犬訓練施設に移転後、訓練犬の皮膚疾患の発症件数および発症割合は 約60%減少した。
  • 木造の効果
    木造犬舎の床表面温度は旧犬舎に比べ変動が小さく表面結露のリスクが減少し温湿度が安定したことが皮膚疾患減少に寄与したと 考えられる。
  • 木造は動物にも快適
    木造による健康効果は人間だけでなくそこで暮らす動物にとっても有効!
皮膚疾患発症件数/年

1.背景・目的

近年、建築分野では脱炭素化の観点から木造化や木質内装化が進み、中・大規模建築物への適用が注目されている。木質化には、ストレス緩和・癒しといった心理的効果に加え、免疫力向上・睡眠改善などの身体的効果も報告されている。
本研究の目的は、盲導犬訓練施設の木造化が訓練犬の皮膚疾患発症に及ぼす影響を、温熱環境データおよび実測結果から検証することである。

2.調査概要

対象建物

対象は京都府所在の盲導犬訓練施設である。
1988年に鉄骨平屋建て(延床94.60m2、以下「旧犬舎」)を建設し運用を開始した。
2016年には旧犬舎に隣接して、木造軸組工法の平屋(延床549.79m2、以下「新犬舎」)を新設し、同年6月より運用を開始した。
新犬舎は職員事務所と一体化し、柱に檜集成材、腰パネルに国産杉、床の一部に杉角材を使用するなど、積極的に内装木質化が行われている。

調査結果

図1に2013~2022年度のデータを示す。木造移転後、皮膚疾患の発症件数・割合は約50%減少した。
各年度の月別発症件数(図2)では、旧犬舎で春・秋に多く、新犬舎では秋・冬にやや多い季節傾向が見られた。

図1 皮膚疾患の発症件数と疾患割合
図1 皮膚疾患の発症件数と疾患割合
図2 各年度における月別の皮膚疾患発症件数
図2 各年度における月別の皮膚疾患発症件数

図3〜5は自然換気期(月別)における外気温、相対湿度、露点温度と発症件数の関係を示す。
外気データは最寄り観測所「園部(京都府)」の気象庁データを使用した。
外気温・相対湿度・露点温度はいずれも決定係数(R2)0.1以下と相関は弱いものの、旧犬舎では外気温および露点温度との正の関係が見られる一方、新犬舎ではその関係が弱まった。
これは、新犬舎では外気環境の変化が皮膚疾患発症に与える影響が低減されている可能性を示す。

図3 月平均外気温と皮膚病件数の関係
図3 月平均外気温と皮膚病件数の関係
図4 月平均外気相対湿度と皮膚病件数の関係
図4 月平均外気相対湿度と皮膚病件数の関係
図5 月平均露点温度と皮膚病件数の関係
図5 月平均露点温度と皮膚病件数の関係

これらの調査結果をもとに、盲導犬訓練スタッフへヒアリングを行ない、移転後の皮膚疾患要因を分析した(図6)。飼育頭数を減らしたことによるケアの見直しや空調機の新調など複数要因が影響しているため、因果関係の特定は困難だが、「(旧犬舎では)コンクリートがじめじめしており、犬の皮膚病ケアがほぼ毎日のように発生していたが、今はだいぶ、楽になった。」との発言が得られた。木造施設の断熱性能向上による温湿度安定化が、皮膚病件数の減少に一定の寄与している可能性が示唆された。

図6 皮膚疾患に関わる要因分析図
図6 皮膚疾患に関わる要因分析図

3.実測と結果

要因分析の推定に基づき、旧犬舎・新犬舎の温熱環境の比較を室内温湿度、床表面温度を測定し、その結果をもとに、露点温度と表面温度の関係から、結露発生率を試算することで行なった。測定期間は自然通風で施設運用している春季の2025年5月21日~6月15日である。
図7に床表面温度の経時変化を示す。新犬舎は旧犬舎に比べ安定した変動を示し、木造フロアの断熱性の高さを示唆する。両舎の室内温湿度から露点温度を算出し、床表面温度と露点温度の高低関係から、表面結露発生率を評価した(図8)。高リスク:(表面温度が)露点温度以下、中リスク:露点温度+2℃以下、低リスク:露点温度+2℃以上と定義した。新犬舎では低リスクが98.8%、旧犬舎では85%であった。木造犬舎が皮膚疾患減少に寄与した可能性がある。

図7 床表面温度経時変化
図7 床表面温度経時変化
図8 表面結露発生率
図8 表面結露発生率

4.考察

木造化に伴う断熱性能の向上と室内温湿度の安定化は、床面の過度な湿潤状態を抑制し、皮膚疾患の発症リスクを低減させた可能性がある。
ただし、飼育頭数削減、ケア方法改善、空調機更新など複数の要因が同時に生じており、本研究の範囲では因果関係の特定には至らなかった。

引用文献:
「盲導犬訓練施設の木造化が皮膚疾患に与える影響と温熱環境の考察」第76回日本木材学会大会