まなびの森通信

まなびの森通信

自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏

【第192回】深い緑の森の中で、

2021年 6月30日

■6月管理人日記

 束の間の梅雨の晴れ間にホオノキやハンショウヅル、サンショウバラが例年通り鮮やかに花を咲かせています。
 ホオノキは花の直径が30㎝にもなる大きな白い花で、辺りに濃厚な薫りを振りまいています。例年、背の高いホオノキの上の方に花を咲かせますが、今年はなぜか低い位置に咲いたものを何度か見かけました。ハンショウヅルはツル性の木で、下向きに咲くつり鐘形の紅紫色の花を「半鐘」に譬えた名前です。花の形は全く違いますが、5~6月に咲く園芸品種のクレマチスやテッセンと同じ仲間です。サンショウバラは大きなピンク色の一重の花を沢山つけ、朝からマルハナバチなどがたくさん集まってきて吸蜜するので辺りがブンブン、ブーンという羽音で賑やかです。
 晴れた日には深い緑の森の中でエゾハルゼミが鳴きはじめ、巣立ちを終えたばかりのシジュウカラやヤマガラのヒナが親鳥に餌をねだる少し幼い啼き声も聞かれます。
 湿気を帯びた森の中では、古い倒木に毎年のようにオレンジ色の色鮮やかなマスタケが生えてきます。ある日気が付くと倒木にオレンジ色の塊がくっついているので、遠目にも良くわかります。また、別の倒木にはヒラタケも生えてきます。
 ヒメシャラの花も咲きはじめましたが、樹のてっぺんに咲くので地面に落ちてきた花弁でしかわかりません。その中でも二廻りも大きな花があります。こちらも5m以上の高さに咲くので落ち花しか写真に撮れません。ヒコサンヒメシャラです。幹に黒い縞模様の線が入っていることで「ヒコサン」だとわかります。
 森の中に茶色いアスパラガスのようなものが生えています。ツチアケビの花芽です。来月にはその花をご紹介できるでしょう。
 スイカズラとウツギが咲くころには6月も終わりに近づいています。スイカズラは花の根元に蜜が沢山あり、吸うと甘いことから付いた名前と言う説もあります。スイカズラは咲きはじめは白い花ですが、日にちが経つとだんだん黄色っぽくなってきます。そのため、「金銀花」と言う別名があります。ウツギは林縁に沢山生えており、近くを歩くだけでとても良い薫りがしています。
 木の杭に小さなハチが自分の尻尾を差し込んでいます。オナガバチが杭の中にいる虫、恐らくカミキリムシの幼虫に卵を産み付けているのだそうです。杭の中にいる虫の場所を触角で感知するのでしょうが、素晴らしい感知能力ではありませんか。自然の中にはまだまだ不思議がいっぱいあります。

  • 30㎝以上ある大きな花を咲かせるホオノキはモクレンの仲間です

  • ハンショウヅルの赤紫色の花

  • マルハナバチが吸密しているサンショウバラ

  • 毎年見かけるオレンジ色が目を引くマスタケ

  • 古い倒木に沢山のヒラタケが発生

  • ヒメシャラより二廻り大きなヒコサンヒメシャラの花

  • ヒコサンヒメシャラの幹には黒っぽい縞模様がある

  • 森の中に茶色いアスパラガス? ツチアケビです

  • 咲きはじめは白いが段々黄色くなるスイカズラの花

  • スイカズラのアップ画像

  • ウツギが満開に

  • オナガバチの仲間が丸太杭にいる虫に産卵している

【第191回】新緑から一気に早い梅雨入りで深い緑に

2021年 5月31日

■5月管理人日記

 例年であれば五月晴れの爽やかな天気が続く5月ですが、今年は3週間も早く5月半ばに梅雨入りとなりました。10日間ほどシトシト、ザァーザァーと梅雨空が続きました。
 そのお蔭で、新緑は一気に濃い緑となり、森は夏の様相となりました。晴れた日には木洩れ日はまるで緑のシャワーが降っているようで、とてもリラックスできます。身体じゅうが緑色に染まるのではないかと思われるくらいです。
 ミヤマザクラやナナカマド、カマツカなどが白い花を咲かせています。みんなバラ科の樹木で、梅鉢の5弁の花びらはお互いよく似ています。林床にはマムシグサの仲間としては少し変わったギザギザの葉形をしたユモトマムシグサやギンランをみかけます。
 サワシバは長細いホップのような実を付け、チドリノキはカエデの仲間と判る実を付けています。この二つの樹木は分類上まったく違いますが、葉形は非常によく似ています。葉っぱを1枚だけ見てもほとんど見分けがつきません。葉が互生になっているのがサワシバで、葉が対生なのがチドリノキです。チドリノキはよく知られている所謂モミジとはまったく違う特徴のない葉形ですが、カエデ類としては変わった形をしています。
 森の中のシカやイノシシのヌタ場は雨が降ると大きな水溜りになります。その上に張り出した枝にモリアオガエルが産卵をしました。15㎝ほどの泡の塊です。
 コロナ禍が続いていますが、感染予防に細心の注意を払いながら今年も小中学生対象の自然体験教室「森林(もり)づくり学習」プログラムが始まりました。そのプログラムが安全・安心に実施できるようにと先月、「まじぇる会」の皆さんに手伝っていただいて設置した「スズメバチトラップ」が何者かに襲撃、破壊されてしまいました。「まなびの森」の中に28個仕掛けたのですが、その内7~8個が壊され、中には地面に叩き落とされたものもあります。スズメバチ誘因のために入れた液体(日本酒と砂糖、酢の混合液)の甘酸っぱい匂いに誘われたのでしょうか。犯人はテンかハクビシンではないかと思われます。
 5月も終わりに近づき、私の大好きなサラサドウダンがかわいらしい花を沢山咲かせ、森に可憐な彩をそえています。

  • 青空に新緑が映えます

  • 自生サクラ10種の1つ、ミヤマザクラ

  • 秋には美しく紅葉するナナカマド

  • 枝や幹が固いことで名前が付いたカマツカ

  • ミズナラの葉形に似ているユモトマムシグサ

  • 少し珍しいギンラン

  • サワシバとその実(ホップの実に似ている)

  • サワシバと似た葉っぱのチドリノキはカエデの仲間

  • ヌタ場の水溜まりにモリアオガエルが卵塊を産卵

  • そのアップ画像

  • 若いシカと遭遇、その距離僅かに10mほど

  • 今年も始まった自然体験教室「森林(もり)づくり学習」プログラム

  • 仕掛けたスズメバチトラップが小動物(テンかハクビシン)に襲撃・破壊されました

  • 大好きなサラサドウダンの花

【第190回】春欄間、でも花冷えも

2021年 4月30日

■4月管理人日記

 暖かい3月から4月に入り、例年より2~3週間早くマメザクラが開花しました。花も葉も小さい、富士箱根地域に見られる在来野生のサクラです。日本には10種類の在来野生サクラが知られています。ヤマザクラ、オオヤマザクラ、カスミザクラ、オオシマザクラ、エドヒガン、チョウジザクラ、タカネザクラ、ミヤマザクラ、クマノザクラ(2018年に新種として登録)、以上9種とマメザクラで10種です。
 サクラは自然交配や人工交配が起きやすい種類のようです。また、同じ種類の中でも変化が生まれやすいです。マメザクラ1つをとっても、少し大きな花を付けるもの、花の色が淡いピンク~濃いピンクと樹々によっては変化が見られます。中には白っぽい花で、緑色がかって見えるマメザクラもあります。
 森の中でパートナーを求めてシュジュウカラやヤマガラが啼き交わし、メジロのつがいが仲良くマメザクラの花の蜜を吸っていたり、キツツキの仲間のアカゲラやコゲラが樹の幹を突いてエサの虫を探したり。野鳥たちが非常に活発に活動しています。
 去年は森じゅうのブナが沢山結実しました。前にもお伝えしましたが、ブナは数年に1回一斉に沢山の実を付けて子孫を残そうとします。ブナの実は美味しいので、リスやネズミ、イノシシなど沢山の野生動物の大切な食糧となります。しかし、大量に結実することで食べ尽くされることなく、子孫を残すことができます。数年に1回、一斉に。ブナの樹はいったいどうやってその時を決めているのでしょうか。ブナの森の不思議の1つです。そのブナのかわいらしい実生が今年は沢山見られます。正に『ブナの大量結実作戦』大成功と言うことになります。
 5月から恒例の小中学生対象の自然体験教室が始まります。2006年から始めた社会貢献活動の1つですが、それを前に子どもたちの安全を確保する意味で『スズメバチトラップ』を設置します。「まなびの森」の常連となっている『まじぇる会』の皆さんに手伝っていただき、遊歩道沿いの倒木の近くなどスズメバチが巣を作りそうな場所にトラップを仕掛けていきます。去年設置のトラップは回収して中身を確認するのですが、中には100匹もスズメバチが入っているトラップもありました。
 さて、最後にご紹介するのはエイザンスミレ。ちょっと変わった深い切れ込みの葉が特徴的なスミレです。名前の由来は「京都の比叡山で見つかったから」と言うことらしいですが、比叡山以外でもあちこちで見かけます。

  • 蕾が赤みを帯びて開花が近づくマメザクラ

  • 七分咲きとなったマメザクラの背景は富士山

  • フォレストアークを背景に咲くマメザクラ

  • 大きめの花を付けるマメザクラがあり

  • 白っぽく、少し緑がかって見えるマメザクラも

  • かわいらしい花を付けるミヤマウグイスカグラ

  • ブナの芽生え

  • 1ヶ月ほど早いモミジイチゴの開花

  • 自然体験教室の始まる前に『スズメバチトラップ』を設置

  • 回収した去年の『スズメバチトラップ』の中身

  • スズメバチだけを並べてみると、1ヶ所でなんと100匹も

  • 深い切れ込みの独特の葉をもつエイザンスミレ

ページの先頭へ戻る