まなびの森通信

まなびの森通信

自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏

【第254回】早い秋の訪れ

2026年 8月31日

 夏の終わりが近づいてくるころ、森のあちらこちらで甘い匂いが漂っています。その甘い香りの主は、クサギの花です。この甘い香りに魅了されるのはミヤマカラスアゲハやモンキアゲハなどの夏を代表するチョウたちです。匂いに誘われ、盛んに吸蜜しています。クサギ以外に夏の終わりを告げるのはボタンヅルの白い花です。たくさんの白い花を咲かせますが、こちらはチョウ類には魅力的ではなくハナアブやカミキリたちがたくさん寄ってきます。
 ふと樹の幹を見てみると、クワガタがいました。そのクワガタは6本の脚の付け根の色が赤く、その名もアカアシクワガタという名前です。
 林床に赤い実を付けた植物があります。トチの葉に似ていることでつけられた名はトチバニンジン。あの高麗人参(オタネニンジン)と同じ仲間で、それなりの薬効もあるそうです。
 秋が近づくといろいろなキノコが姿を現します。アキヤマタケやキイボガサタケ、ウスタケなどです。いずれも食用にはならないばかりか、有毒なものも混じっているので注意が必要です。苔むした倒木の上には小さなキノコがたくさん発生しています。クヌギタケと言うキノコで、ある有名な菌学者に「とてもキノコらしい形をしたキノコ」と言わせたそうです。
 先月、ご紹介した菌従属栄養植物であるツチアケビが早くも赤い実をつけています。赤いウィンナーを思わせるツチアケビの実は、1mほどの茎に何個もぶら下っており、森の中では遠くからでも目立ちます。
 林床に白いうつむきの花が咲いています。ギンリョウソウモドキと言う菌根菌寄生植物です。春に咲くギンリョウソウに少し似ていますが、うつむきのまま咲き、夏の終わりを儚んでいるように見えます。別名をアキノギンリョウソウと言います。日暮れが早くなってきた8月終わりにはススキの穂が伸びて、秋がすぐそこに来ていることをあらためて教えてくれます。

  • 夏の終わりが近づくころに薫り高い花を咲かせ、チョウたちを魅了するクサギの花

  • 秋の訪れを告げる花であるボタンヅル、葉の形がボタンのそれに似る

  • 脚の付け根が赤い、その名もアカアシクワガタ

  • トチバニンジンの鮮やかな赤い実が目を惹く

  • 蝋細工のように見えるアキヤマタケ

  • 傘の上の突起が特徴的なキイボガサタケ

  • 菌学者に「キノコらしい形のキノコ」と言わせたクヌギタケ

  • 先月、くすんだオレンジ色の花を咲かせていたツチアケビの実

  • ギンリョウソウモドキ、別名はアキノギンリョウソウ

  • ススキの穂が伸びて秋の訪れを告げる

【第253回】シトシト梅雨が明けると真夏の日々が、

2026年 7月31日

 今年の7月前半はシトシト、ジメジメと梅雨らしい天気が続きました。そのせいか、いろいろなキノコがニョキニョキ発生しました。この季節には珍しく、ナラタケモドキがたくさん見られたほか、5月半ばから何度も発生しているキツネノロウソクやイヌセンボンタケも。
 加えて、今年はバイケイソウの花が多くみられる年です。「まなびの森」ではだいたい2年に1回の割合いでたくさん花を咲かせます。この花の匂いは独特で、少し石油化学製品のような香りです。
 この時期は、ヒメシャラと一廻り大きなヒコサンヒメシャラも季節どおりに花を咲かせますが、高い枝先で咲くので、咲いている花を見ることはほとんどなく、落花で花の季節を確認しています。菌従属栄養のラン科植物であるツチアケビとキバナノショウキランも咲きました。
 そして、寄生植物のキヨスミウツボも森の中のあちらこちらで見られます。アジサイ科の植物に寄生しているそうで、「まなびの森」ではツル植物であるイワガラミなどから栄養をもらっているのでしょう。
 また、数年ぶりにシャクジョウソウに出遭いました。こちらは菌根から栄養をもらっているので菌従属栄養型と言えるでしょう。秋に咲くギンリョウソウモドキ(別名、アキノギンリョウソウ)と同じ属の植物です。
 林床でカサカサッと何かが動いたので、目で追ってみると長さ2m近くある大きなアオダイショウでした。森の中で出遭うのは珍しいです。そのまま見ていると、アオダイショウは巧く細い木に登り始め、枝を伝っていきました。フォレストアークの壁をも登るその身体能力にはビックリです。
 梅雨明け後の富士山のふもとでは連日の猛暑ですが、今年も「まなびの森」は30℃以下の比較的快適な夏となっています。

  • バイケイソウの花 吸蜜に来たカミキリムシの背中には黄色い花粉が付いています

  • ナラタケモドキ

  • キツネノロウソク 5月半ばから次々と発生

  • イヌセンボンタケ 立枯れた樹にびっしりと無数に発生

  • ヒメシャラの花

  • キバナノショウキラン 今年も新しい場所で咲きました

  • 久々に森の中で出遭ったアオダイショウ

  • キヨスミウツボの花

  • シャクジョウソウの花

  • こうして見るとギンリョウソウに近縁なことが分かります

  • ツチアケビの花

  • ツチアケビがランの仲間だと良く分かります

【第252回】今年の6月の異変

2026年 6月30日

 今年は梅雨期になったとたんに台風が襲来すると言う異例な天候で、月末にもダブル台風の到来となりました。そして、気温がこの季節としては低めで、そのせいかいろいろ例年とは違うことが見受けらます。
 まず、ウツギです。例年であれば6月中旬に薫り高い白い花が咲くのですが、今年はようやく6月下旬頃に花を咲かせ、今では甘い薫りがあたりを包んでいます。
 また、モリアオガエルの鳴声は5月末から聞こえ始めたのですが、クリーム色の泡卵塊がいつまでも見られずヤキモキしていました。こちらも6月下旬になってやっとフォレストアークの周囲の側溝などに卵塊を産み付けました。
 「長老シナノキ」の近くのヒメシャラの根元にニホンミツバチの巣が新しくできたようで、盛んに出入りしています。蜜源から戻ってきたミツバチの後ろ足には花粉団子も付けています。ニホンミツバチは一般的なセイヨウミツバチよりひと廻り小柄で、性格も穏やかだと言われています。せっせと蜜と花粉と集めて巣に戻って来る姿はなんともけな気で見飽きません。
 梅雨の始まりにはサンショウバラがきれいなピンク色の大きな花をたくさん咲かせました。ただ少し残念なのは、きれいな花の命の短さ、儚さです。
 林床が生育の場であるクモキリソウがなにかの拍子で苔むした樹幹に移住しているのを見つけて早や4年ほどになります。その「キノボリクモキリソウ」とでも名付けたいクモキリソウが今年も見事に花を咲かせました。シカの食圧を逃れ、着実に毎年生育している姿はなんとなく微笑ましいです。これも富士山南麓の空中湿度の高さが生み出したものの一つでしょう。
 エゾハルゼミが鳴いている森は、その鳴き声が賑やかなため野鳥の啼き声をかき消してしまうほどです。そんなエゾハルゼミの羽化を目にすることができました。セミの羽化は夜中~夜明け前の時間帯が普通ですが、目にした個体は昼間午後2時ごろに羽化していました。時間にして30分ほどでしょうか。緑まじりの白い体、丸まった羽根が少しずつ伸びていく姿はなんとも神秘的です。
 「まなびの森」にもまもなく暑い夏が到来します。

  • サンショウバラが今年もたくさん咲きました きれいな花の命は短い

  • 直径10㎝もある大きなサンショウバラの花

  • ヒメシャラの幹の窪みにニホンミツバチが出入りしています

  • エゾハルゼミの羽化の瞬間

  • クリーム色がかった白のヤマボウシの花

  • 6月下旬になってやっとウツギの花が咲きました

  • 立枯れた樹から発生したシロキクラゲ

  • そのシロキクラゲと姿かたちが似ている黄色いハナビラダクリオキン

  • ホオノキの古い実から発生したホソツクシダケ

  • そのホソツクシダケに似ているがとても小さいブナホソツクシダケはブナの殻斗から発生

  • 寄生植物の1種のキヨスミウツボの花

  • 林床から樹上に住まいを移したクモキリソウは「キノボリクモキリソウ」と称しては如何?

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