自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏
今年は3月になってもなかなか暖かくなりません。逆に、何度も雪が降りました。そのため、春告げ花や春の妖精(スプリング・エフェメラル)と呼ばれるキバナノアマナやアズマイチゲ、ニリンソウ、ヤマエンゴサクといった春を代表する草花が開花しないまま3月が終わろうとしています。
雪が降る日があるかと思うと、次の数日は初夏のような気温の日があったりと、まるでジェットコースターのような気温の変化もありました。そんな不順な天候で植物のリズムが狂ってしまったのでしょう。日当たりの良いところにフキノトウが姿を現したのが3月半ば、ふだん春一番に咲くミツマタが咲いたのが3月の終わりといった感じでした。ミツマタはたくさんの花が小さなボール状に固まって咲くので、あたりは甘い香りに包まれます。
春の雪は湿って重いので、降り積もる量が多いと木の枝が折れることがあります。雪が溶けたころに森を歩くと、たくさんの枝が落ちています。ほとんどが枯れ枝ですが、中には青々と葉をつけたウラジロモミが落ちていることもあります。新鮮な食べ物が乏しいために折れ落ちたウラジロモミの枝の樹皮をシカがかじり取っていました。シカはケヤキの根もかじっていました。よほど食べ物が乏しいのでしょう。
毎年恒例の「企画懇談会」を3月19日に開催しました。フォレストアークにステークホルダーの皆さんをお招きし、直近の活動報告と各種の調査報告、新年度の活動計画を発表し、話し合う場として開催しています。今年も「まなびの森」の活動を安全に、円滑に運営していく上で、ステークホルダーの方々からいただいた貴重なご意見を活かしていきたいと考えております。
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3月初旬に今シーズン一番の10㎝ほどの降雪がありました
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その後も何度か積雪があり、15㎝ほどまで
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森は乾燥していましたが、雪のお蔭げで苔も瑞々しい緑に
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フォレストアークの水場近くに散乱していたヒヨドリと思われる羽根 水浴びに遣って来て猛禽類に襲われたのでしょう
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3月中旬になって日当たりの良い場所にフキノトウがようやく出現
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やっと開花したミツマタの花
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雪の重みで折れたウラジロモミの樹皮が見事にかじられて
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太いケヤキの根の樹皮もかじられて
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企画懇談会で挨拶いただいた静岡大学 客員教授 増澤先生
今シーズンの冬は比較的暖かでしたが、立春の頃から連日寒い日が続きました。降雪は多くありませんでしたが、溶けた雪は寒さのためか屋根から40㎝近くもある長いツララをつくりました。軒下の地面から伸びている枝先にもツララができていました。
フォレストアークの近くに置いてある水場も凍りついており、氷の表面に奇妙なクボミができていました。その水場を狙っているセンサーカメラで確認すると、なんとシカが氷を舐めているではありませんか。氷を舐めて水分補給をしたその結果、氷の表面にクボミができたわけです。
植樹エリアの中には割と大きなヌタ場があり、動物や野鳥が沢山集まる人気スポットとなっています。そのヌタ場がそれまでより深く30㎝以上になっていました。そこにもセンサーカメラが設置してあります。動画をチェックするとイノシシが5頭もヌタ場でまるで「押し競まんじゅう」をするように泥浴びをしていました。たくさん集まったイノシシたちがブヒブヒブヒ…と、その結果としてヌタ場が深くなったようです。
「まなびの森」では「日本野鳥の会」南富士支部に委託しているモニタリング調査の1つとしての鳥獣生息調査が年4回行われています。2000年から25年継続しているこの調査は2月で100回を迎えました。1月と2月は冬鳥の調査が主目的です。鳥の数は多くはありませんでしたが、ちょっと珍しい発見がありました。苔むした倒木の上にホオノキの実が1つ転がっていました。その周りにはホオノキの実の殻が散乱しています。想像するに、リスがホオノキの実を食べていたのでしょう。そして、第100回の鳥獣調査は17名の参加者の下、無事終えることができました。
富士山の麓、富士宮の街中では梅が咲き始めましたが、「まなびの森」で一番早く咲くミツマタやオニシバリの蕾はまだ固いまま。開花はあと少し先でしょうが、季節は着実に春に向かって日も伸びています。
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積もった雪が溶けて40㎝近くもある長いツララが
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軒下の枝の先にもツララが出現
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水場は凍りついてまま その氷の表面に奇妙なクボミができています
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水場に集まってきたシカの群れ 氷を舐めて水分補給 その結果が氷表面のクボミ
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植樹エリアの中のヌタ場 深さが30㎝以上になりました
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このヌタ場にはセンサーカメラが設置 そこに集まったイノシシの群れがひしめきあっまるで「押し競まんじゅう」状態に
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鳥獣調査の様子 2000年から25年継続 年4回なので今回で第100回目
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苔むした倒木の上に残されていたホオノキの実のリス食痕
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第100回の鳥獣調査を終えて「はい、チーズ!」
新しい歳、2025年が始まりました。
昨年、天候異変のせいか巨大化したケヤキの葉っぱのことをご紹介しましたが、もう1つ森の中で異変がおきています。例年、今の時期のミツマタは枯れ枝と蕾だけになっているのですが、今年は一部の株で茶色の枯れ葉が沢山ついているのが見られます。これは落葉する時期の昨年11月ごろ気温が高めでまだ葉を落とす時期ではないと勘違いしたためと考えられます。温暖化がもたらした現象と言えるでしょう。
冬になり葉が落ちて見通しの良い森を歩いていると、空中に茶色いボール状のものが浮かんでいるのを見つけました。目を凝らすと、高さ10mほどのヒメシャラの細い枝先に作られたキイロスズメバチの巣であると分かりました。長さ30㎝ほどで少し長楕円の形をしています。スズメバチの仲間は次のシーズンに巣を再利用することはないので、そのままにしておくことにします。
毎朝、大きく育った霜柱は朝日にキラキラ輝き、まるで宝石のようです。キハダの根際がシカにかじられ、鮮やかな黄色が遠くからも見えます。一面茶色に覆われた殺風景な森のようですが、よく見るとあちこちに目を楽しませてくれるものを見つけることができます。
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朝陽を浴びて水晶のようにキラキラ輝いている霜柱
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シカに齧られ鮮やかな黄色が現れたキハダの根
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ヒメシャラの枝にあったキイロスズメバチの巣
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枯れ葉が付いたままになっているミツマタ
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たくさんのミツマタの蕾 開花は1ヶ月ほど先でしょうか