INTERVIEWインタビュー

木や緑に関する様々な分野の最前線にいる人々。
いま何を考え、どのような未来を見ているのでしょうか。

都市木造の研究は、
前を歩く人がいない。

東京大学 
生産技術研究所・木質構造デザイン工学 教授腰原幹雄

歴史はある、前例はない。

日本は千年以上の木造建築の歴史があるといいますが、多層の木造建築はほとんどありません。
縄文時代のやぐらや城の天守閣くらいで、法隆寺の五重の塔にしても内部空間は一層ですし、東大寺大仏殿も平屋です。
多層の木造建築は、今の私たちが試行錯誤しながら造っていかなければなりません。

日本人の木への愛着が、
技術的な強みにつながる。

日本人は木造建築への思い入れや愛着がある。木造建築というのはこういうものだ、と。例えば、防耐火性能ですが、防耐火性能を高めるためには、木を燃えないもので覆ってしまうのが簡単な方法です。ヨーロッパは、木を石膏ボードでくるんで木が見えなくても耐火性能を上げればいいというところにたどり着けるわけです。でも日本は、木造建築なんだから木が見えないと、となる。そのぶん技術開発のハードルが上がりますが、木の良さを活かしながら性能を上げていくことが日本の技術的な強みを生み出すことになるように思います。

環境にやさしいスクラップ&ビルド。

木を循環型資源として捉えると、ふたつのことが考えられます。ひとつは、木が50年のサイクルで育つのなら、極端な話では建物も同じ周期もてばいいということになる訳です。資源の生産と合わせて建て替える環境にやさしいスクラップ&ビルドというのも生まれるかもしれない。

もうひとつは、カスケード利用です。
木造建築を解体したらチップにしてバイオマスにします、とよく言われますが、その前に、大きい断面で最初に建物を造って、
解体後は小さい断面にして小さい建築に使って、最後にチップにしてバイオマスにするというカスケード利用も考えられます。
森林資源の状況に合わせて、木は使い分けをしていくということができる材料だと思います。

失敗の中に、未来の種がある。

鉄筋コンクリート造とか鉄骨造はすでに標準的な技術というのがあって、開発の道がだいたい分かっています。
ですが都市木造は前例がない。真似をすれば研究ができるというものではありません。
バーチャルリアリティのような技術を使えば事前に分かると言われるかもしれませんが、
木造建築はやっぱり触れる、匂いをかぐ、硬さを感じるという、そういう体感できないと判断がしにくいものです。
試行錯誤して失敗している中に種がある。
失敗はしたけど、これ何とかなりそうだよねとか、そうところから次の展開が出てくると思っています。