契約前からプランニングに関わる魅力。
自分の考えとお客様の要望の
バランスを見極めて。
以前勤めていたハウスメーカーでは、鉄骨系プレハブ住宅の設計業務に従事していました。主に営業担当者がお客様からヒアリングをして基本プランを作成し、契約後の詳細な実施設計を私が担当するというものでした。私が住友林業に強く惹かれた理由の一つは、契約前のプランニングの段階から案件に関われる点でした。案件の敷地解析から、お客様の要望をヒアリングした上で、基本プランの作成、契約後の実施設計、着工後の現場確認など、引き渡しまで家づくりの大半に携われることは、前職にない大きな魅力でした。その過程で大切にしているのは、設計士としての自分の考えと、お客様の要望とのバランスを調和させることです。自分の考えとお客様の要望には相違が生まれることが少なくありません。しかし、お客様の要望のみを設計に反映させると、竣工後、快適な住まいが実現できるどうか疑問を抱くこともあります。一方、設計士の自分の考えばかりを主張していては、家づくりは前へ進みません。お客様とコミュニケーションを取る中で、お客様の言葉や表情の変化を感じ、最終的にお客様に満足いただくプランを提案していくのが、設計士の役割だと考えています。
木造ならではの「自由設計」を活かして、
狭小敷地のポテンシャルを最大限引き出した。
住友林業に入社した大きな理由の一つは、木造住宅ならではの「自由設計」に魅力を感じたからです。入社して初めて担当した案件で、それを強烈に実感することになりました。都心にお住まいのお客様でしたが、狭小敷地で、斜線制限が厳しく、鉄骨系プレハブではサジを投げてしまうような非常に厳しい建築条件でした。以前まで勤めていたメーカーでは、屋根勾配は3種類、天井高も2種類しか選択肢がありませんでしたが、住友林業の木造住宅は天井高をミリ単位で設計可能で、屋根勾配も自由に設計できます。文字通り設計の枠組みが根本的に異なっていました。今までのセオリーにとらわれることなく、自由設計であることをフルに活かし、敷地の中で最大ボリュームの家を実現。敷地のポテンシャルを最大限に引き出すことができ、設計士としての幅が広がった良い経験となりました。着工前、更地に縄を張って実際の大きさを確かめた際、お客様はその狭さに不安を感じていたようでしたが、お引き渡しのときには「この敷地でここまで広い空間が実現するとは思わなかった」と喜んでいただき、とても嬉しかったことを覚えています。
いかにして、お客様の要望に応えるか。
困難な局面を乗り越えていく設計士の醍醐味。
もう一つ強く印象に残っている物件があります。お客様は自ら集めた情報を基に、「格好の良い、見栄えのする、機能性の高い家」を求めていました。しかし、お客様の要望を実現するには予算内では収まりません。また、大きな吹き抜けと断熱性を両立させるなど、相反する要素を総合的にまとめ上げていくことが求められました。要望と価格の折り合いを付けるために、数十種類のプランを提案。最終的には3Dで建物のイメージをリアルに伝え、実際に使用する部材のサンプルを何十種類も確認しながら納得いただきました。設計の仕事というのはスムーズに進むことはなく、今回のようにお客様の要望と価格との乖離、立地環境や敷地の制限・条件等々、厳しい局面に向かい合うことが少なくありません。入社して多くの物件に関わってきましたが、どれも鮮明に覚えているのは、困難な場面を乗り越えて家づくりをしてきたからだと思います。そしてそれが設計士の仕事の醍醐味だと感じています。私は現在、「デザイナー」という肩書で、主に高難易度の物件の設計を担当しています。今後更に経験を積み、スキルやセンスを磨くことで、より高難易度な物件を担当する「マスターデザイナー」にも挑戦していきたいと思っています。
物事の本質を理解し、自分なりに考えて、周囲に流されることなく、あるべき姿に向かって仕事に取り組むこと。その姿勢が、自分にとっての本気です。真面目に取り組んでいるからこそ、人とぶつかることもありますし、本気だからこそ納得いかないときは、自分の想いを貫くことで、自分の捉え方、考え方、感じ方を大事にしてきました。