1階は奥さまのフラワーアレンジメントの店舗と教室、2・3階が住宅です。街の人に親しまれる華やかで上品な店舗と、ご家族が落ち着いて過ごす住宅という二つの要素を、法規制の厳しい都市部の環境のもとで実現することがテーマでした。
私はまず敷地の状況をつぶさに見ます。敷地のどこが一番気持ちのよい場所になるのか。周辺の状況によっては、一概に南側がよいとはいえません。また都市部では建物が近接していたり、高さ制限などの法律上の規制も厳しく設けられています。まず敷地を見て、設計の骨格となるものを考えていきます。
ご家族の団らんの中心となるダイニングとキッチンは2階に設けました。南側は窓を大きく取ることが多いのですが、道路を隔てて間近に住宅が建っているため、あえて大きさを抑え、プライバシーに配慮しました。
奥さまのワークスペースをダイニングの側に設けました。遠くまで視線が伸び、2階で最も気持ちのよい場所です。二面に窓を設け、眺めが楽しめるようにしました。
3階の子ども室は高さ制限をクリアするため、壁の一部を斜めにしています。壁の下側に引き違いの扉を付け、収納スペースとして活用しました。
ご家族とお客さまの動きや、視線の先に見えてくるものをそれぞれ細かく想定し、間取りや動線をじっくりと考えます。ご家族の暮らしが始まって「動きやすい」「ここから見える景色が好き」といったお話を聞かせていただけると、本当にうれしく思います。
お仕事で忙しい奥さまにとって、ご家族がそろうLDKは大切な場所です。どこにいてもお互いの姿が見え、気配が分かるように、ひと続きのオープンな空間にしています。
キッチンは階段のすぐ側に配置しました。1階の店舗から自宅に戻った奥さまがすぐに家事に取りかかれるように配慮した間取りです。
キッチンからはダイニングとその先のワークスペース、さらにリビングも見通すことができます。家事をしながらでもご家族との会話が楽しめます。
共働きが家族の当たり前の姿になる中、効率のよい家事動線などへの配慮がこれまで以上に求められています。住まいの設計において、女性の建築士ならではの感性を活かしてプランニングを進めるようにしています。
玄関ホールは、明るいベージュの大判タイルを床と壁に使っています。花や観葉植物が彩りを添える上品でエレガントな空間に仕上げました。
浴室と洗面は明るい3階に設けました。広々とした一体の空間とすることで、気持ちよく使うことができ、掃除もラクにできるように配慮しました。
奥さまがお持ちだったクロスをトイレの壁に使いました。壁に凹凸を付けて立体感をつくり、クロス張りの部分を強調しています。
リビングの床には上品で落ち着いた印象のウォルナットを使いました。木調のクロスを巻いた柱が、空間をゆるやかに仕切る役割を果たしています。
リビングに続けて畳のスペースを設けました。必要に応じて引き戸で仕切ることができます。床の間が季節のしつらえを楽しむ場所になります。
玄関ホール奥には大きな1枚ガラスの開口部を設け、光を採り入れるとともに、外の緑を絵のように切り取りました。
1階の店舗には柱のない大空間を確保しました。奥さまの作品であるプリザーブドフラワーを展示するスペースであるとともに教室としても利用します。
建物の足下に植栽のスペースを設け、外観の彩りとしました。街並みに豊かな表情を添えています。
住宅の入り口は別に設けています。玄関ドアを奥に設けることで落ち着いた雰囲気をつくりました。
1階の店舗は大きなガラス面を確保し、店内の様子がよく見えるようにしています。