トップコミットメント

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Top Commitment 今こそ求められる包括的なアプローチ「Mission TREEING 2030」 Top Commitment 今こそ求められる包括的なアプローチ「Mission TREEING 2030」

不確実な時代、サステナビリティが試される

サステナビリティレポート発行に向け一年を振り返るたび、事業環境変化のスピードはますます速まっていると感じます。自国優先、覇権主義の傾向が更に強まり、かつてないレベルでの地政学的変動とともに国際的な外交の枠組みや相互依存しながら発展してきたグローバル経済秩序が大きく揺らいでいます。後戻りできない変化という見立てもあり、新しい現実に向き合い対応することが必須になってきました。またAIの急速な進化が業務効率化や新価値創出をもたらす一方、データセンターの急増による電力・水消費の急拡大、雇用・産業構造への影響、さらにはフェイクコンテンツ拡散やサイバーリスクの増大など深刻な課題をもたらしています。
同時に気候変動は加速しています。NASAや気象庁など複数機関によると、2025年は2024年、2023年に次ぐ3番目に暑い一年となり、森林火災やハリケーンによる水害などにより甚大な経済損失がありました。日本国内でも歴代最高気温の41.8度を観測、熱中症搬送者が10万人を超えるなど人々の生活や健康面の被害に留まらず、労働安全リスク増大や工期への影響も看過できない状況です。
そもそも「サステナビリティ」とは、地球環境や社会経済の変化に即応しながら事業継続に向け中長期的な視点で備え、レジリエンスを高める取組みです。サプライチェーン途絶によるエネルギーや資源ひっ迫を含め不確実性が高まっている今こそ、足元の事業利益とビジネスモデル転換も見据えた中長期的なESG取組みの一体化推進の成果が試されています。

カーボンニュートラルへの取組みは着実に進捗

住友林業グループは、長期ビジョン「Mission TREEING 2030」に沿ってバリューチェーン「ウッドサイクル」の各事業分野である森林、木材、建築、エネルギーを循環させグローバルに事業を推進しています。2025年は、中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase2」の初年度となり、「脱炭素化への挑戦」「グローバル展開の深化」「事業とESGの更なる一体化」など5つの基本方針を掲げています。
売り上げの62%を占める建築・不動産事業については、2026年から新たに不動産事業本部を設け国内外の不動産開発事業を統合した上で、海外の住宅事業を独立させました。この2月に発表したTri Pointe Homes社の連結子会社化で、当社グループは全米5位のホームビルダーとなります。豪州では2024年にMetricon社をグループに加え豪州1位のビルダーの地位を確立しており、国内と合わせ2030年目標である年間65,000戸の供給体制がみえてきました。
一方、建設資材高騰や職人不足、工期長期化といった課題は日本のみならず米国や豪州でも顕著にみられます。これらは住宅価格の急激な上昇を招き、アフォーダビリティに深刻な影響を及ぼしていることから、住まいを供給する当社にとって重要な経営課題となっています。米国では昨年7月、ルイジアナ州の製材工場を子会社化し、木材調達から、屋根トラス、壁パネルの設計、製造、施工までの垂直統合化を推し進め、サプライチェーンと施工の合理化を通じて、安心・安全で競争力のある住宅の提供に努めます。
「脱炭素化への挑戦」の成果としては、SBT(Scope1、2)の2025年目標24.4%削減を大幅に上回る40.4%削減を達成しました。再生可能エネルギー率は目標45.1%に対し52.7%、国内の住宅事業に限れば目標前倒しで100%を達成したことなどが主要因です。2030年以降のカーボンニュートラルに向けては「移行計画」を策定中であり、2028年開始の中期経営計画(Phase3)サステナビリティ編に各事業の具体的な取組みを織り込む計画です。

再生可能な自然資源、木材が果たす役割

日本でも2028年を目処に建築物の計画から解体までのライフサイクル全体の環境負荷(建築物LCA)を算定・評価する制度が導入されることが決定され、同時にSHK制度※1の改定により木材利用による炭素貯蔵量(HWP = Harvested Wood Products)が報告項目として追加されました。
480万人の雇用を支える建設セクターは、我が国のCO2排出量の4割近くを占めており、カーボンニュートラルへの取組みが急務です。木は成長の過程で光合成によりCO2を吸収し、伐採後も大量の炭素を固定しますから、木造化・木質化は重要なカギとなります。他の建築資材と比べ、製造過程におけるCO2排出量も圧倒的に少なく、1,500㎡の3階建てオフィスビルでは鉄骨造に比べ約45%減、炭素固定量も勘案すると67%の削減効果があります※2。新規制の対象は、延べ床面積5,000m2以上の建築物(概ね10階建て程度のオフィスビル)ですが、これまで使用時の光熱費削減に焦点が当たってきた建設セクター全体のカーボンニュートラルに向けた転換点となることに期待しています。
また住友林業は昨年9月、非営利団体Built by Natureが提唱する「責任ある木造建築に関する原則」に賛同しました。この原則は、2022年のCOP27で発足した「森林・気候リーダーズ・パートナーシップ(FCLP)」など多くのステークホルダーと協議を重ねて作られたもの。木造建築推進に向け「持続可能な森林管理の確保」「ライフサイクル全体の考慮」「木材の炭素貯蔵能力の最大化」などを掲げており、住友林業が進めてきた建築の木造化・木質化の取組みや理念と見事に合致します。日本、スウェーデン、英国、カナダなどの12カ国に加えデベロッパー、デザイン事務所な400近い組織が参加・賛同していますから、国や自治体、金融機関、大学や研究機関と協働し、グローバルな変革の潮流をつくります。

「測れないものは管理できない」:森林の自然資本価値を顕在化

カーボンニュートラルと同等あるいはそれ以上の注目を集めているのが、2030年までに自然の損失を止め反転させる「ネイチャーポジティブ」の目標です。世界のGDPの半分以上が森林や河川・海洋などがもたらす生態系サービスに依存している一方、「自然はタダ」と捉えられ正当な価値評価が経済に織り込まれてこなかったことが自然棄損の根本原因です。生態系サービスの価値を測定し数値化することは容易ではありませんが、既に森林による炭素吸収がクレジットとして取引されている実績があり、住友林業も2022年10月に米国で森林アセットマネジメント会社を立ち上げ、2023年より1号ファンドの運用を開始しています。炭素吸収にとどまらず持続可能な森林経営がもたらす生態系サービスの価値が正しく評価され、森林や森林由来の再生可能な製品・サービスへの投資が促進されることが自然損失を止める重要なカギですが、世界的に合意された自然の測定方法はまだありません。
昨年11月のCOP30では、国際環境団体ネイチャーポジティブ・イニシアティブ(NPI)が「自然測定プロトコル」の開発に取り組むと発表しました。当社も参画する持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)や資本連合(Capitals Coalition)、TNFDら11の機関と合意したもので、温室効果ガス排出の計測方法を定めるGHGプロトコルの「自然」版を策定する計画です。
住友林業は自然資本の中でも「森林」に焦点をあてた価値評価を目標に、ISFC(持続可能な森林国際連合)の一員として、世界38か国に2,300 万ヘクタールの森林を保有する18 社合同のプロジェクトを開始しました。木材供給、水供給、気候調整、生物多様性の生息地維持など7つの指標を選び、共通の測定手法を用いて数値化し、最終的には金額換算までチャレンジします。数値で示さない限り、森林は経済活動から「見えない」存在となり、自然の損失を止めることはできないのです。

制度開示準備に向けたガバナンス強化

「経営基盤の強化」として、2025年にコーポレート本部を設置、AIを活用した業務高度化とリスク管理の両立を追求し、米国、豪州、インドネシア、英国の地域統括会社にも人財を派遣することで組織・ガバナンス強化を図っています。グローバル人財を継続的に育成するとともに、26,700人を超える規模に拡大した住友林業グループの社員、さらにはサプライヤーとのエンゲージメントを高め、一丸となって「Mission TREEING 2030」のゴールを目指します。
ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)の提言を受け、日本を含む21カ国が非財務情報開示基準の導入を決定しており、国内では時価総額3兆円以上の企業は2027年3月期から義務化されます。住友林業は既にGHG排出量や女性管理職比率などの一部サステナビリティ情報を有価証券報告書で開示していますが、今般のSSBJの決定を踏まえ2027年12月期からの早期適用を目指し、関係部署横断のタスクフォースにて制度に則った開示と非財務情報の収集効率化に取り組んでいます。開示は目的ではなく経営の結果であり、基本方針のひとつである「事業とESGの更なる一体化」を通じ経営判断に資する非財務情報の収集・活用に取り組んでまいります。

※1 SHK制度:温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度

※2 林野庁公表資料「木材利用推進・省エネ省CO2実証業務報告書」を基にした当社筑波研究所試算

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