トップコミットメント

トップコミットメント

目指すべき姿を描いた
長期ビジョンを策定

2050年の脱炭素社会実現を見据えて、住友林業グループは目指すべき姿を定めこの2月に発表しました。地球環境、人々の暮らしや社会、市場や経済活動に価値を提供することで、将来世代を含むあらゆる人々や生き物たちにとって地球が快適な住まいとして受け継がれていくことを目指します。「今すぐ」行動し成果を出すことが何より重要ですから、長期ビジョン「Mission TREEING 2030」は国連が定めたSDGs(持続可能な開発のための目標)と同じ2030年を目標年度としています。

長期ビジョン策定にあたったこの2年は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け世界が大きく変化した時期でした。人の移動と接触の制限は働き方を変え、当社グループが日本、米国、豪州で主力事業とする新築戸建住宅に対する需要は大きく伸長しました。一方で、サプライチェーン混乱等はあらゆるセクターの事業活動の基盤を揺るがしており、国内市場は木材不足と価格高騰、すなわち「ウッドショック」に見舞われました。さらに、ロシアによるウクライナ軍事侵攻は、エネルギー、食糧セキュリティの観点からも周辺国に留まらず多くの国や地域に甚大な影響を及ぼしています。グローバルに事業を展開するあらゆる企業もその影響を受け、先行きの見通しが非常に困難な状況です。

不確実な時代に、気候変動、生態系損失、不平等の拡大を止め、公益的価値を社会に提供していくためには、立ち止まって考えている余裕はありません。とるべき選択肢を誤らず目指すべき方向に進むために必要なもの、「Mission TREEING 2030」は、遠くで我々を導く灯台の役割を果たしてくれると考えています。

前中期経営計画の成果を基盤に、
更なるチャレンジ

住友林業株式会社 代表取締役 社長 光吉 敏郎前中期経営計画は昨年最終年度を終え、非財務の目標を定めたサステナビリティ編は概ね目標を達成することできました。詳細は「サステナビリティレポート2022」でご確認いただきたいと思いますが、大きな成果としてサプライチェーンの取り組みがあります。「持続可能な森林からの木材・木材製品の調達100%」を目指す、初めて期限を定めた目標です。直輸入材を中心に調達基準を精査し直し、合法性はもとより環境や人権など持続可能性に課題が残る樹種や地域については、取引先と協力しより信頼性の高い認証材への切り替えなどを進め、それ以外は9月を最後に契約終了、現在は100%を達成しています。
新たな中期経営計画では、直輸入材や製造事業所の原材料調達に加え、国内流通資材についても、その持続可能性やライフサイクルにおけるGHG排出量の捕捉、削減取り組みを行う予定です。

昨年11月に開催されたCOP26では、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ1.5℃以内に抑える努力を追求すること、石炭火力発電の段階的削減が合意されました。住友林業グループはこれに先立つ9月SBTイニシアチブ(科学と整合した目標設定イニシアチブ)が国連グローバルコンパクトなどと主導する「Business Ambition for 1.5℃」に署名。2050年ネットゼロに向け、2030年SBT目標を1.5℃目標と整合する2017年度比54.6%削減に引き上げました。全製造事業所への太陽光パネル設置などを通じRE100への移行を加速し、CO2排出量は3年間18.5%削減する計画です。

情報開示においては、TCFD対応として2018年に実施していた国内住宅事業と木材建材流通事業のシナリオ分析に加え、新たに海外住宅事業と資源環境事業の分析を実施しました。既出の2事業に合わせ、2030年4℃2℃(1.5℃)2つのシナリオを検討。森林資源の持続的活用により脱炭素化が加速する社会像を描いた一方、ステークホルダーの嗜好によっては森林保護政策がより強化される想定もでき、森林、木質資源のもつ機能と効果を正しくステークホルダーに説明していくことの重要性も浮かび上がりました。WBCSD(持続可能な開発のための経済人会議)の森林セクター企業のForest Solutions Groupなどと協力し、グローバルな政策立案者など広くステークホルダーに積極的に働きかけていきます。

住友林業株式会社 代表取締役 社長 光吉 敏郎

気候、自然、平等 ―
包括的な取り組みがカギに

一方、新型コロナウイルス感染症や気候変動の影響は、女性や子どもなど社会的に弱い立場にある人たちが最も強く受けており、COP26では生態系喪失や拡大する不平等への対応の必要性に注目が集まりました。住友林業グループは、人権デューディリジェンスに基づくリスクマップを活用して外国人技能実習生の労働環境などを確認してきましたが、今期はグリーバンスメカニズムの構築に引き続き取り組みます。また上述の長期ビジョンは、2021年3月に改めて特定した重要課題を中核に策定したものですが、「森と木の価値を最大限に活かした脱炭素化とサーキュラーバイオエコノミーの確立」を事業方針の一つに掲げ、脱炭素のみならず、生物多様性や水など自然資源についても視野に入れ、社会面、経済面と合わせ目標設定しています。
ご承知の通り、木は生長する過程で光合成により二酸化炭素を吸収し、伐採された後も大量の炭素を蓄えています。木材を住宅や家具などに利用することは、炭素を長期間固定することにつながります。CO2排出削減に向けた様々な取り組みを経て、どうしても残るCO2排出量についてはオフセットすることが必要で、ここに森林の果たす大きな意義と役割があります。
住友林業は1691年の創業以来、国内外で「木」を軸にした幅広い事業を行っています。この「木」を軸にしたバリューチェーンが、生物多様性保全や人権などに配慮した持続可能な森林経営からの木材でつながっていること、その「ウッドサイクル」を安定的・継続的にまわすことで、自社のみならず社会全体の脱炭素化、資源循環に貢献できると考えています。

住友林業だから実現できる貢献:
ウッドサイクルによる
脱炭素への取り組み

「Mission TREEING 2030」を策定過程で、SDGsなどの社会課題解決に向けた社内の機運も高まり、「森林」「木材」「建築」の分野において、脱炭素化への貢献と当社の更なる成長を両立させる事業イメージが共有されてきました。具体的には、持続可能な森林経営の管理面積を50万haへ拡大をはかるとともに森林ファンドを設立し、カーボンオフセットを必要とする企業の脱炭素達成に貢献します。また、ウッドショックで経験した国内の木材不足リスクを低減するためにも国産材の自給率向上を期し、木材コンビナートを設立、製造時の熱源にバイオマスを利用するなど環境価値の高い木材を安定供給する計画です。
建築の分野では、CO2排出量の削減や見える化、脱炭素設計のスタンダード化に取り組みます。建築資材への環境ラベル導入、建築のライフサイクルアセスメント(LCA)算定が可能なソフトウェア「One Click LCA」の国内導入です。世界のCO2排出量に占める建設部門の割合は4割近くありますが、その3分の2は居住時の冷暖房・照明などによる排出です。再生可能エネルギーの普及で削減可能なこの「オペレーショナル・カーボン」と異なり、残りの3分の1は建築資材の原材料調達から加工、輸送、建設、改修、廃棄時のCO2排出である「エンボディド・カーボン」で、その削減には環境負荷の低い建築資材・構法がカギとなります。世界130か国で使用されているフィンランドのOne Click LCA社と日本総代理店契約を締結し、国内での普及を目指します。

変革のときこそ、レジリエントな組織で
多様なステークホルダーと協調へ

住友林業グループはよりダイバーシティ豊かでレジリエントな組織に成長・脱皮するべく、様々な取り組みに着手しています。持続可能な成長に向けた経営のコミットメントとして、役員報酬をESG 経営指標に基づく業績連動型に制度改革し、具体的に長期CO2排出削減目標であるSBT達成と紐づけました。また、多様な背景を持つ社員が安心して働くことができ個性を活かして力が発揮できるよう、目標達成と社員の成長を促す新しい業績評価制度を導入したほか、10月には「健康経営宣言」を行い、働き方改革を進めています。
住友林業株式会社 代表取締役 社長 光吉 敏郎多様なステークホルダーと協調していくためは、積極的に様々なアライアンスや団体に加盟し要請に耳を傾け、また自社の知見や技術、目指す方向性を共有することが重要です。これから本格化する生態系や水など「自然」に関しては、
TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フォーラムに加盟しました。また一年前と比べ、エンボディド・カーボン削減や森林を活用した脱炭素に対する関心は確実に高まり、お取引先やこれまで接点のなかった企業の皆様と協業についてご相談する機会が増えています。多くのステークホルダーと協力して「Mission TREEING 2030」を推進していくことを楽しみにしています。

住友林業株式会社 代表取締役 社長 光吉 敏郎