持続可能な森林資源の
活用

持続可能な森林資源の活用

国産材の活用

2050年カーボンニュートラルや脱炭素社会の実現に向け、日本では官民をあげ国産材自給率の上昇に取り組んでいます。

九州での国産材活用促進への取り組み

住友林業は、2022年2月、鹿児島県志布志市と、同市における事業検証に関する立地基本協定書を締結しました。この志布志プロジェクトは住友林業によるウッドチェンジの推進構想である木材コンビナート設立への第一歩としての取り組みとなります。

2020年、米国での住宅建設需要の増加や新型コロナウイルス感染症拡大を起因としたコンテナ不足等により、世界全体で木材価格が高騰するウッドショックが起こりました。木材供給の約6割を輸入に依存している日本では、価格面・数量面で大きな影響を受けており、国産材の活用促進が国としての課題となっています。国産材活用促進のためには、林業従事者から木材製造・加工業者そして建築業者全てが、事業収益を確保できる安定的な供給体制の構築が必要です。

国産材普及に向けた木材コンビナート設立を目指す

住友林業はこれらの課題を解決するため、現在、志布志港から丸太のまま輸出されている低級材を付加価値のある高強度構造材に加工する新工場の建設を検討し、国内向けの安定供給および志布志港からアジアや北米などへの製品輸出を目指しています。

住友林業は、国産材のカスケード利用を前提とした木材コンビナートの設立によって、木材製造の生産性向上と木材製品の安定供給を図り、価格競争力を強化します。また、木材の付加価値向上による林業従事者の雇用創出や、国産材利用促進に伴い、炭素固定期間の増加による脱炭素貢献につなげていきます。

径の大きさや曲がり、節・腐れなどの要因で、製材・合板用に利用できず、輸出などに回っている木材

志布志プロジェクトの概要

カスケード利用のフロー

木質資源の活用

チップ化による木質資源のリサイクル

住友林業グループでは、木材の製材過程で発生する端材や、新築・解体現場で出る木くずをチップ化し、製紙やパーティクルボードなどの原料として、また発電ボイラーなどの燃料として供給するチップ事業を通じて資源の循環利用に貢献しています。

今後もバイオマス発電向け燃料の供給需要が高まる中、端材や木くずだけではなく、間伐材などの林地未利用木材も利用し、燃料用途の取扱数量のさらなる拡大を目指します。

木材チップ取扱数量

木材チップ取扱量

2020年度以降の集計期間は各年1月から12月、2019年度の集計期間は4月から翌年3月

「きこりんプライウッド」の販売促進

住友林業グループでは、合板など、木質ボードの輸入商品の調達のうち、森林認証材・植林木を使用した製品の割合を目標設定し、その拡販に努めてきました。中でも FSC認証またはPEFC認証を受けた森林の木材や、持続生産可能な植林木を製品の50%以上使用しているJAS合板は、「きこりんプライウッド」として販売し、その売上の一部は、インドネシアで実施している植林事業に投入してきました。この「きこりんプライウッド」は、森林認証材の採用、また植林木を50%以上使用した環境配慮型商品である点が評価され、2018年9月に第1回エコプロアワード奨励賞を受賞しています。2021年度からは「きこりんプライウッド」の定義を住友林業グループの木材調達基準に合わせ「持続可能性が確認された木材を100%利用した合板」とし、さらなる拡販に取り組んでいます。新定義での2023年度の販売実績は295,691m3となりました。

一般社団法人産業環境管理協会が主催。エコプロダクツに関する情報を需要者サイドに広く伝えるとともに、それらの供給者である企業等の取り組みを支援することで、日本のエコプロダクツのさらなる開発・普及を図ることを目的に2004年度創設。2018年度にこれまでの「エコプロダクツ大賞」をリニューアルし、新たに「エコプロアワード」となる

きこりんプライウッド

きこりんプライウッド

中大規模木造建築事業の取り組み

住友林業は、330年を超える歳月で森づくりを行っています。そして、世界の様々な木の特性を熟知し、木が活きる住空間をつくっています。その多様な経験・知識・技術を大きく発展させることで、住宅以外の中大規模建築での木造化・木質化を提案する「建築(木化)事業」を推進しています。木は光合成で大気中のCO2を吸収し、伐採して木材製品になっても炭素として固定し続けるため、こうした木材の利用拡大は脱炭素社会の構築にも貢献します。近年では、2017年に土木・建築の事業分野において国内外で数多くの施工実績を持つ熊谷組との業務資本提携、そして2021年には鉄骨造/鉄筋コンクリート造建築の受注や施工管理ノウハウを持つコーナン建設をグループ化し、住友林業が持つ木造建築や内外装の木質化技術等と組み合わせ、中大規模木造建築などの非住宅分野を拡大させます。木化事業を通して、木の文化の伝承や林業活性化、環境、経済が調和した持続可能な社会の実現への貢献を進めていきます。

中大規模木造建築ブランド
「with TREE」

2021年に住友林業と熊谷組は中大規模木造建築ブランド「with TREE」を立ち上げました。コンセプトは「環境と健康をともにかなえる建築」。都市の建築に「木」が生む新しい価値を提供し、中大規模建築の木造化・木質化を推進します。住友林業が持つ森林や木材にまつわる知見と、鉄骨・RCや大規模建築にまつわる熊谷組の知見を融合し、協業体制の強化を図ります。2017年の業務・資本提携以来、協業の主軸である中大規模木造建築分野の取り組みとして、本ブランドを立ち上げ、資材の調達から建築、コンサルティングまで「環境価値」「健康価値」を高める提案をします。

「with TREE」 札幌で完工

住友林業と熊谷組が中大規模木造建築ブランド「with TREE」として初めて手掛けた、地下1階地上10階建ての耐火木質ビル(KAGAプロジェクト)が2023年6月に完工しました。上層階は木質ハイブリッド集成材を使用し、また、柱と梁の被覆木材には北海道産のカラマツを採用して、国内林業の活性化につなげます。木は光合成で大気中のCO2を吸収し、炭素として留め置き、伐採し木材製品になっても炭素を固定し続けます。住友林業は、中大規模建築の木造化・木質化を通じて脱炭素社会の実現に貢献していきます。

KAGAプロジェクト外観

住友林業で初の耐火木造4階建ての老人ホーム 完工

住友林業が設計・施工する初めての「耐火木造4階建て」の介護付き有料老人ホーム(西東京プロジェクト)が2023年5月に完工しました。1階の事務室や食堂はRC造の特性を活かした開放的な空間、2~4階の居室は木造ツーバイフォー工法の特性を活かし全室を同じ床面積としました。階段部分は2~4階まで全て木造とし身体への負担を軽減し、利用者のホスピタリティ向上に寄与します。「木」がもつ心理的・身体的ストレスの緩和効果で、建物空間の快適性を高めるつくりを実現しています。

エントランス

全景

コーナン建設との初のJV 城東テクノ開発試験センター完工

コーナン建設が2021年1月に住友林業グループとなって以降、両社共同企業体での初の設計・施工となる物件が完成しました。城東テクノの開発試験センターは地上3階建ての鉄骨造で、会議室やエントランスの一部を木質化することで、「木」がもつやすらぎ効果や調湿、抗菌作用を活かした快適な空間を作り出しています。試験機の使い勝手や研究員の動線など、施設のレイアウトは住友林業の研究・技術開発を担う筑波研究所を参考に設計。社員の憩いの場所として屋上の一部を緑化しています。今後もコーナン建設がもつ鉄骨造の建築・施工管理の知見と、住友林業が得意とする木質化技術を組み合わせ、中大規模建築で木の活用を推進します。

外観

エントランス

大阪万博住友館 着工

三井住友建設とのJVとなる物件が2023年12月に着工しました。住友発展の礎である別子の嶺を連想させるインパクトのある意匠 となっています。
外壁や屋根に当社社有林から切り出した合板を使用した、延床⾯積約2,700m3の鉄骨一部木造2階建てのパビリオンとなっています。
2025年の大阪・関西万博では、木材活用のシンボルとして木のぬくもりを来訪者の皆様に届けます。

大阪万博住友館(イメージ)

港区芝浦PJ 着工

前田建設工業とのJVで設計・施工するRC・S・木造の9階建ての物件が2023年4月に着工しました。
RC構造の中に木材を組み込むことで、耐震性を保ちながら木造耐震壁のないひろびろとした空間を作り出します。人目に付きやすい外壁に重点的に木材を活用し、利用者に木のぬくもりを感じさせるものとなっています。
人々の暮らしに根付くレジデンスとして、脱炭素社会の実現を目指します。

港区芝浦PJ(イメージ)

上智大学四谷キャンパス15号館が完成

住友林業が設計・施工した上智大学四谷キャンパス15号館が2022年6月に完工しました。

木造3階建ての耐火構造で、一般的な鉄筋コンクリート造や鉄骨造の同様な施設と比べ、構造躯体の資材製造時におけるCO2排出量をそれぞれ15%、20%削減※1。構造躯体に使用する木材は111.85m3、炭素固定量は約84トン(CO2ベース)に上り、40年生のスギ約280本※2の炭素固定量に相当します。当施設は「街を森にかえる」につながり、SDGsの達成、脱炭素社会の実現に貢献します。
本物件は2023年1月に「ウッドシティ TOKYO モデル建築賞」で奨励賞、3月に「木材活用コンクール」で木材活用など数々の賞を受賞しました。

※1当施設の構造躯体を鉄筋コンクリート造、鉄骨造とした場合の躯体の部材数量を構造計算より求め、それぞれのCO2排出量の算出結果との比較を実施

※2林野庁「建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン」。林野庁HPを参照し算出

15号館 外観

15号館 内観

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CLTを活用した木造郵便局

住友林業は、国内の郵便局として初めてCLT(直交集成板)※1を活用した丸山郵便局(千葉県南房総市)の施工を担当しました。丸山郵便局は日本郵政グループが推進するカーボンニュートラルの実現をめざす環境に配慮した郵便局(「+(ぷらす)エコ郵便局」)の第1号店舗で、2022年3月に開局しました。
外壁には千葉県産材の杉材を「焼杉※2」にして使用しています。ワークショップイベントとして地域の子供たちとともに焼杉を製作し、地域に愛される建物となっています。
また、循環型資源である「木」を活用するほか、太陽光による自家発電設備を導入しています。
本物件は2022年に「ウッドデザイン賞」の奨励賞(審査員長賞)、2023年3月に「千葉県建築文化賞」を受賞しました。

※1クロス・ラミネイティッド・ティンバー(直交集成板)。長い板状の木材を縦横交互に張り合わせた厚型のパネルで、強度や、断熱性に優れる

※2「焼いた杉板」のことで、木の表面を焼き炭化させたもの。その炭化層は防火性・防腐・防蟻効果がある

丸山郵便局 外観

製作した焼杉

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脱炭素社会の実現を目指す研究開発

住友林業グループは2018年に「W350計画」、2022年に「Mission TREEING 2030」を発表しました。筑波研究所は、住宅や建築のみならず、「木」を軸にした川上から川下までの様々な事業活動を通じて脱炭素化とサーキュラーバイオエコノミーの実現を目指す住友林業の目標達成に貢献するため、革新的な建築技術や新たな木質材料、新樹種の開発など、様々な未来技術により、街を森にかえる環境木化都市の実現を目指して研究開発を進めていきます。

研究開発成果を社会実装していくことで、木材需要の拡大による林業再生や、CO2固定量拡大等を通じた気候変動対策につなげ、地域活性化及び地球環境との共生に貢献します。

「環境木化都市」イメージ図(筑波研究所作成)

「環境木化都市」イメージ図(筑波研究所作成)

研究開発の成果の一部を社会実装

筑波研究所が開発した新技術の一つである、1時間耐火構造の木質ハイブリッド集成材有孔梁が、住友林業と熊谷組の共同企業体が工事中のKAGAプロジェクトに採用されました。

KAGAプロジェクトでは、7~10階に木質ハイブリッド集成材を使用しており、その木材には北海道産カラマツを採用することで、国内林業の活性化につなげています。また、その梁には木質ハイブリッド集成材有孔梁を採用することで、梁に直接配管を貫通することができるため、従来の木質ハイブリッド集成材梁と比べ天井高を確保でき、設計の自由度が向上します。また、設備配管用の嵩上げ材を設置する必要がなくなり、建築費全体のコストダウンと汎用性の拡大にもつながります。
当施設の構造躯体に使用する木材は39.9m3、炭素固定量は31.8トン(CO2ベース)です。これは計画地(139.05㎡)の約7.2倍にあたる広さのカラマツの森が吸収するCO2量に相当します。このような施設は街を森にかえ、脱炭素社会を実現します。

日本集成材工業協同組合が大臣認定を取得している木質ハイブリッド集成材の1時間耐火認定梁に、住友林業が開発した梁貫通技術を加えて新規認定を共同取得したもの

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