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気候変動の緩和
ZEH・LCCM住宅の販売
日本のCO2排出量の15.3%※1は家庭部門が占めており、その削減に向けて、新築住宅におけるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)普及の取り組みが国全体で進められています。
住友林業グループの「中期経営計画サステナビリティ編Phase1(2022年~2024年)」では、 新築戸建注文住宅におけるZEH受注比率を2024年度に80.0%にする目標を掲げ、構造材として断熱性に優れた木を用いるとともに、風や太陽など自然の恵みを活かす独自の設計手法「涼温房(りょうおんぼう)」を取り入れ、一年を通して快適に暮らせる住まいを提供してきました。こうした「木の特性・自然の恵み」を活かすノウハウと、断熱性能の向上や省エネ設備の導入など「エネルギー消費量を減らす」技術、創エネ・蓄エネ機器やHEMS※2など「エネルギーを賢く活かす」技術を融合し、家庭内のエネルギー効率を高めることで、居住時のCO2排出量を削減する住まいを提供しています。なお、2024年度のZEH受注比率は前年度比0.4ポイント減少の79.3%※3となりました。
2022年4月には、「LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス) 住宅」を発売しました。 LCCM住宅とは、建設時、居住時、解体時の省CO2に取り組み、さらに太陽光発電などを利用した再生可能エネルギーの創出により住宅のライフサイクル全体でCO2収支をマイナスにする住宅です。「住友林業の家」の構造材である木は、生長過程で光合成によりCO2を吸収し、伐採された後も炭素として固定します。加えて、当社独自のビッグフレーム(BF)構法は、間取り変更のリフォームが容易な可変性の高さが特長であり、建物の長寿命化による炭素の長期間固定化につながります。住友林業のLCCM住宅はこうした木の利点を活かし、建設、改修、 解体時のトータルでCO2排出を抑えたうえで、太陽光発電システムなど再生可能エネルギーの活用や、省エネ設備、設計の工夫により、LCCMを実現しています。
このLCCM住宅を普及していくために、2022年からは森を育てる家「環境貢献度プレゼンシート」による提案を開始。設計段階の「炭素固定量」と「再植林相当面積」を別邸に簡易算出できるようにすることで、環境貢献度の見える化を図っています。この取り組みを推奨するため、展示場ごとに「環境貢献度」の掲示を行っています。
住友林業グループは、LCCM 住宅をはじめとした住まいの提供を通じて、脱炭素社会の実現に貢献していきます。
※1環境省「2022年度の温室効果ガス排出・吸収量(詳細)」より
※2Home Energy Management Systemの略。発電量や電気使用量を“見える化”する家庭用エネルギー管理システム
※3Nearly ZEH、狭小ZEH Oriented、多雪ZEH Orientedを含む
新築戸建注文住宅における
ZEH受注比率実績※
(2024年度)
79.3%
※中期経営計画サステナビリティ編2024の評価指標(集計期間:2024年1月~12月)

LCCM住宅モデルハウス「米子(木の家Lab.)展示場」

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住友林業のZEH・LCCM住宅の特長
断熱性に優れた木の家
木の熱伝導率を「1」とすると、コンクリートは約13倍、鉄は約440倍もあります。木は熱を伝えにくい断熱性に優れた素材です。さらに、住友林業では独自の基準による、高い性能の断熱材「グラスウール(高性能品)24K」を使用しています。

素材の熱伝導率比較

住友林業独自基準の断熱材
「360゜TRIPLE(トリプル)断熱」の標準採用
住友林業では、戸建注文住宅(耐火仕様を除く)の断熱性能を強化した「360゜TRIPLE断熱」を標準採用しています。高性能な「断熱材」に加え、断熱性の高い「構造材」と「窓」で建物全体を包み360°しっかり断熱し、経済的で快適な暮らしを実現します。
「360゜TRIPLE断熱」は夏涼しく、冬暖かく、省エネルギー性能を高めた住まいです。国が進めるBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)※のZEH水準に対応する仕様にしています。
住友林業では戸建注文住宅についてBELSを全棟で申請しています。BELSは新築・既存の建築物の省エネ性能を第三者評価機関が評価し認定する制度で、建物の省エネ性能、資産価値を示す指標となります。BELSの全棟申請は大手ハウスメーカーでは初めての取り組みです。2024年度において、BELS認証率(本体着工時)は99.4%となりました。断熱性能を強化した住友林業の住宅は、BELSの評価書に裏付けされた確かな安心と快適さを住まい手に提供しています。
※国⼟交通省が定めた「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度ガイドライン」に基づく第三者認証制度の⼀つ。制度運営主体は⼀般社団法⼈住宅性能評価・表⽰協会。省エネルギー性能を客観的に評価し、星マーク等で表⽰する。「Building-Housing Energy-efficiencyLabeling System」の略称
断熱性に優れたガラスを採用
住まいの中で、一番熱損失が大きいのは窓です。夏は窓から入る熱を遮断し、冬は室内の暖気が窓から逃げないよう断熱することが大切です。住友林業では、もっとも熱損失が大きい窓には、「アルゴンガス入りLow-E複層ガラス」を採用しています。これは複層ガラスの間に、空気より熱を伝えにくい「アルゴンガス」を封入し、さらに特殊金属膜をガラスにコーティングしたものです。優れた断熱・遮熱性で、夏は窓から入る熱を遮断し、冬は室内の暖気が窓から逃げないようにしています。

Low-Eガラスによる断熱イメージ
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環境配慮機器の搭載率推移(受注棟数ベース)
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
---|---|---|---|---|
太陽光発電システム | 68.9% | 78.1% | 78.9% | 77.7% |
エネファーム | 25.5% | 20.5% | ‒ | ‒ |
エコワン | 19.4% | 24.4% | ‒ | ‒ |
エネファーム・エコワン※ | ‒ | ‒ | 43.9% | 40.3% |
環境配慮機器搭載率 | 78.2% | 84.6% | 86.2% | 84.1% |
※2023年度よりエネファーム・エコワンを合算した搭載率を記載
賃貸集合住宅のZEH化と木造マンションの販売開始
住友林業は、賃貸集合住宅「Forest Maison(フォレスト メゾン)」全棟でZEH-M(ゼッチマンション)※1化を推進し、快適な室内環境と大幅な省エネ性能を実現しています。国が進めるBELSのZEH水準に対する仕様を標準とし、省エネ性を高めたZEH-Mを全棟で取得します。また、太陽光発電の搭載も推進し、生活時に排出するCO2を削減します。
賃貸集合住宅「Forest Maison」は、2023年5月より戸建住宅商品と同様の360°トリプル断熱を採用しました。住まいの断熱性能を大幅に高め、高効率な設備機器を導入して快適な室内環境を保ち、共用部を含む建物全体の一次エネルギー消費量の20%以上を削減※2する、ZEH-M Orientedの基準以上の性能を実現しています。さらに、2023年11月には、住戸ごとのゼロエネルギー化を推進する賃貸用木造マンション「Forest Maison GRANDE」を発売。木造マンションはRC造や鉄骨造マンションと比べて部材製造時や建設時のCO2排出量(エンボディドカーボン)が少なく、木の炭素固定の効果もあるため環境への負荷が低いことが特徴です。
※1Net Zero Energy House Mansion(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンション)の略。住まいの断熱性・省エネ性能を上げ、太陽光発電などでエネルギーを作り、年間の一次消費エネルギー量(空調・給湯・照明・換気)の収支をプラスマイナス「ゼロ」にする集合住宅。国が定める集合住宅のZEH基準で、一次エネルギー消費量の削減率に応じて、「ZEH-M」、「NearlyZEH-M」、「ZEH-M Ready」、「ZEH-M Oriented」の4区分に分類される
※22016年省エネ基準による「暖房」「冷房」「換気」「照明」「給湯」の基準一次エネルギー消費量との比較

「Forest Maison GRANDE」外観イメージ
事業用建築ブランド「The Forest Barque(ザ・フォレスト バーク)」発売
2024年5月、木造の事業用建築ブランド「The Forest Barque(ザ・フォレストバーク)」を発売しました。「住友林業の家」として年間8,000棟規模を供給するサプライチェーンを活かし、設計のシステム化にも対応した当社独自のビッグフレーム構法を採用。耐震性に優れ自由度の高い設計が可能で事務所や診療所、店舗向けを想定しています。構造躯体を現し(木材が見えるように仕上げること)にするなど木質感あふれた質の高い空間を提案します。高断熱仕様でZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)※に対応し、建物使用時のCO2排出量(オペレーショナルカーボン)の削減に貢献します。
※快適な室内環境を保ちながら、省エネと創エネで「建物で消費する年間の一次エネルギーの消費量を正味(ネット)でゼロにする建物」

「The Forest Barque」外観イメージ
リフォームによる性能向上
住友林業ホームテックでは、1999年以前の省エネ基準、及び2000年以前の耐震基準で建てられた住宅に対して省エネリフォームと耐震・制震リフォーム(性能向上リフォーム)を推進しています。省エネリフォームについては、2023年12月に既存住宅の省エネ性能向上のためAIを活用した「断熱改修工事提案システム」の開発について公表しました。断熱改修工事を推進し、より少ない一次エネルギーで快適な状態をより長く維持できるなど住環境を改善し住まい手のQOL※1の向上、ウェルビーイングの実現を目指します。
また昨今、継続的に発生する地震への不安から安心・安全な住まいづくりのニーズが高まっています。オリジナル制震ダンパーを用いた「耐震・制震ダブル工法」※2を中心に耐震・制震リフォームを積極的に進め安心・安全な住まいを提供します。
省エネ・耐震・制震を組み合わせた性能向上リフォームの推進により、住まいの快適性と一次エネルギー消費量の削減、建物の長寿命化を図り、脱炭素社会の実現に貢献します。
※1Quality Of Lifeの略。生活の質、生きがいや満足度
※2高層ビルにも採用されている油圧ダンパー式の制震装置を、在来軸組構法の2階建て住宅用として開発した「制震ダンパーS型」を用いた工法。制振ダンパーは、地震の揺れを吸収・低減して建物の変形を防ぎ、繰り返し起こる余震の振動に対しても性能を発揮
環境配慮型リフォーム
近年では、異常気象や巨大地震等が問題になっています。耐震性能や断熱性能向上リフォームを推進する事で、建物の長寿命化による炭素の長期間固定化につながります。
住友林業ホームテックでは、2024年度を目標年度とした「中期経営計画サステナビリティ編Phase1(2022年~2024年)」において、「環境配慮型リフォーム受注率向上」を目標に掲げました。
リフォーム提案の「商品」化に取り組んでおり、リフォームプランには「空間提案」「性能提案」「安心サポート」の3つのサービスを盛り込んでいます。2024年度は、一般の住宅(「住友林業の家」のオーナー以外)における耐震工事・構造補強工事・断熱改修工事・スマート商材※3設置工事の4つの工事提案の受注額は総受注額の79.1%となり、2023年度の75.2%から3.9ポイント上昇しました。
一方、「住友林業の家」における耐震工事・外装工事・断熱改修工事・スマート商材設置工事の4つの合計受注額は総受注額の64.1%となり、2023年度の61.8%から2.3ポイント上昇しました。
2027年度を目標年度とし「中期経営計画サステナビリティ編Phase2(2025年~2027年)」においても環境配慮型リフォーム受注率向上を目標に掲げており、環境に配慮したリフォーム提案を進めていきます 。
※3太陽光発電システムや蓄電池、エネファームなど
海外における環境配慮型住宅の開発
アメリカ
アメリカでは、ENERGY STAR認証の取得を推進しています。ENERGY STAR認証とは、EPA(米国環境保護庁)が推進する省エネ性能評価プログラムです。断熱性能、冷暖房システム、気密性、給湯器、照明・家電などの各分野において、気候帯ごとに基準が設けられています。
住友林業グループの一部米国ビルダーではENERGY STAR認証を取得し、省エネ性能の高い住宅の提供を通じて、環境負荷の低減に貢献しています。
ワシントン州で事業展開するメインビュー社では、さらに高い性能を備えた環境配慮型住宅の販売を推進しており、2023年に引き渡した住宅の全戸が同国のエネルギー省が設けるZero Energy Ready Home※1基準を満たしました。メインビューの家は電気を主源とするHVACシステム※2の搭載によりエネルギー効率を最適化している他、エネルギー回収換気システムによって全部屋の室内空気質を正常に保ち、U値※30.25以下の断熱窓により室内を快適な温度に保つ工夫をしています。メインビューの家は環境に優しいと同時にお客様の快適な生活をサポートしています。
※1省エネ性能が高く、太陽光パネルを実装できるよう設計された住宅。実装の際は、年間の電気使用量を発電量で相殺することが可能
※2「Heating, Ventilation, and Air Conditioning(暖房、換気、空調)」の頭文字をとったもので、建物内を快適な環境に保つためのシステム
※3熱貫流率。数値が低いほど断熱性が高いことを示す


メインビューの住宅
オーストラリア
オーストラリアのヘンリーは、同国における大手ビルダーとして初の一般顧客向けゼロ・エミッション・ハウス※1の開発を実現させるなど、環境負荷低減のための様々な取り組みを行ってきました。また、ヘンリーが販売を推進している太陽光パネルを搭載したオール電化住宅では、光熱費を最大75%節約でき、居住時のCO2排出量が最大100%削減可能となります。
さらに、他社に先駆けて省エネ性能基準であるエナジー・レイティング※2の7スターに対応した住宅新商品MainVue Collectionの販売を開始しました。MainVue Collectionは、断熱性の性能の向上や間取りの変更によるエネルギー効率の向上により、7スターを実現しています。ヘンリーは、今後も、同国住宅業界の省エネ性能向上の取り組みをけん引していきます。
※1従来の住宅より70%以上の省エネ効果が期待できる環境配慮型住宅
※2豪州における建物内の冷暖房に対するエネルギー負荷を評価する指標で、断熱材や窓、建物の種類や大きさ、向き、立地する気候帯が評価項目

MainVue Collection の住宅
アジア
住友林業は、インドネシアをはじめとしたアジア各国で「脱炭素設計のスタンダード化」に取り組んでいます。戸建住宅事業では環境に配慮した住宅の開発を進め、建築の環境性能を評価する「EDGE認証※1」の取得に取り組んでいます。
インドネシア
インドネシア・ジャカルタ近郊デポック市の戸建分譲住宅事業においては、住友林業が国内外で培った設計・施工技術を導入し、災害等にも強い快適で安全性の高い住まいを提供します。太陽光パネルを標準搭載するなど、環境に配慮した開発を進めています。
また2023年、同国ボゴール市において太陽光パネル標準搭載の戸建分譲住宅事業を開始しました。ボゴール市の戸建分譲住宅事業では、日本の住宅事業での知見を活かした「涼温房※2」の設計手法に基づき、深い庇・軒による日射遮蔽、自然通風や植栽を活用した室内や敷地内の温度調整などによる快適な住環境の創出に加え、太陽光パネルによる創エネにより、居住時のCO2排出量(オペレーショナルカーボン)を抑制します。さらに製造過程で大量のCO2を排出するレンガの代わりに環境負荷の少ないオートクレーブ気泡コンクリートブロック※3を採用し、エンボディドカーボンも抑制します。これらの取り組みにより、デポック市およびボゴール市での両事業においてEDGE Advanced認証を取得しました。2021年に開始した同国スラウェシ島マカッサル市における戸建分譲住宅事業でもEDGE認証を取得しています。今後も同国をはじめアジア各国で「脱炭素設計のスタンダード化」を加速します。
※1世界銀行関連機関IFCが開発した主に発展途上国で運用される建築環境認証。建てるときに使用するエネルギー量、暮らすときに使用するエネルギー量・水使用量を現地の一般仕様における建物と比べ、それぞれ20%以上削減する必要がある。同条件でエネルギー量を40%以上削減した場合、EDGE Advanced認証が付与される
※2風、太陽、緑という自然の恵みを活かして、夏のそよ風や冬の陽だまりのような心地よさを生み出す住友林業の設計手法。敷地ごとに周辺環境を考えながら、風の流れ、日差し、緑の特性を活かした設計で冷暖房機器に頼り切らない快適な住まいを実現
※3高温高圧多湿養生を意味するオートクレーブ処理で製造管理された軽量気泡コンクリート

デボック市における開発イメージ
ベトナム
住友林業は2024年より株式会社熊谷組、NTT都市開発株式会社と現地大手不動産開発会社Kim Oanh Group(以下KOG)との協業で、ビンズン省において大規模タウンシップ開発プロジェクトに参画しています。
KOGはベトナム南部にて分譲住宅の幅広い開発実績を有し、脱炭素技術や木造にも高い関心を示しています。住友林業が国内外の住宅事業で培った設計力や環境負荷が低い建材、熊谷組の大規模建築・土木のノウハウ、NTT都市開発の国内外での多様な不動産開発経験及びNTTグループとしての情報通信分野でのノウハウを組み合わせ、サステナブルな街づくりを目指し、ベトナムにおけるカーボンニュートラルな社会の実現に貢献します。

ビンズン省における開発イメージ
CO2の見える化
研究開発
住友林業は、木造建築や木質材料のもつ価値を明らかにし、さらにその価値を高めて脱炭素社会の実現に寄与していくため、エンボディドカーボン削減効果をはじめとする木造木質化による環境貢献の見える化に取り組んでいます。
また、森林の公益的価値、特にCO2の蓄積・排出に関するライフサイクルを科学的に解明することで、住友林業グループが所有・管理する森林の資産価値向上や脱炭素化の推進、サーキュラーバイオエコノミーの確立を目指しており、樹種別、地位別、施業別の森林の炭素固定量を推定する研究に取り組んでいます。
木造建築物の現存炭素貯蔵量を推定
東京農工大学は、2022年10月、過去およそ50年間に民間企業が建設した木造建築物の炭素貯蔵量の推定方法に関する研究成果をオープンアクセスジャーナル「Scientific Reports」で発表しました。
2011年に開催された第17回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP17)で、炭素量変化を各国の温室効果ガスの吸収量または排出量として計上することが合意※された、「伐採木材製品」(Harvested Wood Products、以下HWP)は、森林から伐採された後も炭素貯蔵機能を持つため、その有効活用は気候変動緩和へ重要な施策となります。
HWPを有効活用するためには、まずその炭素貯蔵量を正確に把握する必要があり、本研究ではHWPの用途の中でも最も多くの炭素を貯蔵する木造建築物を対象とし、建設した建築物におけるHWPの炭素貯蔵量の推定方法を検討しました。
建築物のデータを住友林業が提供し、東京農工大学と共同で推定手法の検証を実施。本研究の成果により、より高い精度で木造建築物の炭素貯蔵量を把握、推測することができるようになりました。
研究対象の建築物は住友林業が1969年から現在までに建築した木造住宅とし、築年数ごとの住宅現存数とそれぞれの年で建設した住宅数を用いて住宅残存率を求め、これに最も適合するモデルを作成しました。
このモデルを用いて、住宅事業開始時から2024年度までに建築された木造建築から、解体された分を差し引いた、現存する木造住宅の炭素貯蔵量は787万トンCO2と推計されました。これは、住友林業の国内社有林約4.8万haの炭素貯蔵量1,405万トンCO2の半分強の炭素貯蔵量となり、住友林業の木造住宅は長期にわたり都市の森としてCO2を貯蔵する機能を持つと考えられます。
※京都議定書第二約束期間においては、HWPの炭素量の変化を評価し計上するルールが認められている(炭素貯蔵効果)。HWPの算定ルールが適用されるのは、国内の森林のうち「森林経営」を行っている育成林から生産された「製材」、「木質パネル」、「紙」
サプライチェーン全体でのCO2排出量の見える化
エンボディドカーボンを見える化
全世界の温室効果ガス排出量に占める建設部門の割合は約37%※と言われています。そのうちの約70%がオペレーショナルカーボンで、残り30%がエンボディドカーボンです。オペレーショナルカーボンは、ZEHやZEBの普及により削減が進んでおり、今後はエンボディドカーボンの削減が喫緊の課題です。エンボディドカーボンのCO2算定は、建物の全ライフサイクルを網羅して環境負荷を算定する必要があります。
住友林業は、建物のCO2排出量等を見える化するソフトウェア「One Click LCA」の日本単独代理店として2022年8月に日本版の販売を開始しました。
「One Click LCA」は欧州を中心に170ヵ国で利用され、国際規格ISOや世界のグリーンビルディング認証など、80以上の認証に対応したソフトウェアです。建物に使用する建築資材の調達から、輸送、施工・建設、修繕、廃棄・リサイクルのCO2排出量(エンボディドカーボン)を精緻に算定できます。
EPD取得サポート
建築資材の調達段階にあたる製品のCO2排出量は、建物のCO2排出量に最も大きな影響を与えます。製品のCO2排出量を見える化する仕組みとして、環境認証ラベルEPD(環境製品宣言)があります。EPDは Environmental Product Declarationの略で、原材料調達から廃棄に至るまでの製品の全ライフサイクルの環境影響を算定し、CO2排出量をはじめとする製品の環境負荷を定量的に示したもので、ISO準拠の環境認証ラベルです。
住友林業は、2023年2月に、木材・建材メーカー向けに環境認証ラベルEPD取得サポート事業を開始しました。One Click LCA社が提供する「EPDジェネレータ」を活用頂くことで、建築に関するあらゆる製品のEPDをスムーズに取得できます。2024年12月末時点で、当社のサポートにより20製品以上のEPDの取得が完了しています。
また、住友林業は、テナント・デベロッパー・建設関連事業者向けに「One Click LCA」による建物のCO2算定サービスを開始しました。建築業界でLCAの需要が高まる中、住友林業のLCA専門家の知見を活かして算定を行い、プロジェクトごとの算定結果をレポートします。2024年12月末時点で、当社によるLCA算定が100棟以上完了しています。
住友林業は、「One Click LCA」、「EPDジェネレータ」の普及促進を通じて、日本の建設業界の脱炭素設計を推進していきます。
※出典 global alliance for building and construction(2021)
世界の産業別CO2排出率

「One Click LCA」での算定事例

※建物の各ライフステージにおけるCO2排出量を算出できる
※建物に使用される各資材のCO2排出量を正確に把握することができる
※出典:上記グラフは、平成28年3月林野庁公表の「平成27年度 木材利用推進・省エネ省CO2実証業務報告書」の公表データを元に「One Click LCA」を使って当社が独自に算定した結果
再生可能エネルギー事業の推進
住友林業グループでは、建築廃材、林地未利用木材などをチップ化して燃料に利用する木質バイオマス発電や太陽光発電といった、再生可能エネルギー発電事業を進めています。2024年の発電実績は、合計49,972万kWh(石炭分含む)で、2023年度比1.6%増加となりました。
2024年度
発電量による
CO2排出抑制効果※
211,341t-CO2e
※電力会社から電力を購入した場合と比較したCO2排出抑制量。また、主に北海道電力、東北電力のCO2排出係数を用いて計算。前年度比で増加している理由は、バイオマス排出係数を変更したため
再生可能エネルギーによる発電量推移※1※2

※1木質バイオマス発電による発電量は住友林業連結子会社のみを対象とする
※22021年度以降の集計期間は各年1月~12月
木質バイオマス発電事業
住友林業グループは、主に建築廃材に含まれる木材を原料とするリサイクルチップや、製材に適さない材、森林に放置されてきた間伐材などの林地未利用木材を燃料用木質チップとして利用する木質バイオマス発電事業を展開しています。
木材を燃焼することで放出されるCO2は、木の成長過程で光合成により吸収された大気中のCO2であるため、木のライフサイクルの中では大気中のCO2を増加させません(カーボンニュートラルという考え方)。このため住友林業グループでは、木材の有効活用とCO2の増加抑制、さらには地域の森林環境整備など林業の振興に大きく貢献する事業として木質バイオマス発電事業に取り組んでいます。
住友林業グループは、2011年2月に建築廃材等を主燃料とした都市型の川崎バイオマス発電所(発電規模33MW)に34%出資し、この分野に参入しました。また、2016年12月には国内の林地未利用木材を主燃料とした紋別バイオマス発電所(発電規模50MW)、2017年4月には苫小牧バイオマス発電所(発電規模6.2MW)、2018年4月には八戸バイオマス発電所(発電規模12.4MW)、2021年6月には苅田バイオマス発電所(発電規模75MW)の営業運転を開始しました。
2023年11月に杜の都バイオマス発電所(発電規模75MW)が稼働し、住友林業グループが運営に参画する木質バイオマス発電所の発電規模は合計で約251.6MWとなり、約555千世帯分の電力を供給することになりました。
今後は、これまでの木質バイオマス発電事業の経験を活かし、地域の特性や条件に適した再生可能エネルギー事業の展開を図ります。

紋別バイオマス発電所

八戸バイオマス発電所
住友林業グループの木質バイオマス発電事業
名称 | 事業地 | 発電規模 | 営業運転 開始時期 |
主な特徴 |
---|---|---|---|---|
川崎バイオマス発電所 (住友共同電力株式会社、フルハシEPO株式会社との共同出資) |
神奈川県 川崎市 |
33MW | 2011年2月 |
|
紋別バイオマス発電所※ (住友共同電力株式会社との共同出資) |
北海道 紋別市 |
50MW | 2016年12月 |
|
苫小牧バイオマス発電所 (三井物産株式会社、株式会社イワクラ、北海道ガス株式会社との共同出資) |
北海道 苫小牧市 |
6.2MW | 2017年4月 |
|
八戸バイオマス発電所※ (住友大阪セメント株式会社、東日本旅客鉄道株式会社との共同出資) |
青森県 八戸市 |
12.4MW | 2018年4月 |
|
苅田バイオマス発電所 (株式会社レノバ、九電みらいエナジー株式会社、三原グループ株式会社との共同出資) |
福岡県 京都郡 |
75MW | 2021年6月 |
|
杜の都バイオマス発電所 (株式会社レノバ、ユナイテッド計画株式会社との共同出資) |
宮城県 仙台市 |
75MW | 2023年11月 |
|
※住友林業の連結子会社
太陽光発電事業
住友林業は、茨城県鹿嶋市に発電規模3.4MWの太陽光発電施設を保有しています。
一部の太陽光パネル架台には、主に国産のスギ材を用いたオリジナル木製架台を採用し、発電施設の環境負荷低減と木材の利用用途拡大に配慮しています。
2024年度の発電実績は、442万kWhです。

太陽光パネルと環境にも配慮した木製架台
投資における見える化
住友林業は、事業における投資の可否判断の際に温室効果ガス排出量を判断基準の一つにするため、インターナルカーボンプライシングの導入を検討しています。
脱炭素化支援機構に出資
住友林業は、地球温暖化対策の推進に関する法律に基づき2022年10月に設立された株式会社脱炭素化支援機構(JICN)に出資しています。
JICNは国の財政投融資と民間からの出資を資本金としてファンド事業を展開し、脱炭素に資する事業への投融資を通じて民間企業の脱炭素投資を促しています。住友林業グループはJICNの活動趣旨に賛同するとともに、脱炭素関連市場の成長が当社グループの事業機会拡大に繋がるものと考え、JICNに出資しています。当社グループの将来的な事業機会の創出に向け、JICNが支援する脱炭素分野の先進事例に関する情報・知見の蓄積も図っていきます。
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