人権

人権尊重の取り組み

基本的な考え方

住友林業グループは、2008年に国連グローバル・コンパクトに署名、国際人権章典(世界人権宣言と国際人権規約)、国際労働機関(ILO)中核的労働基準、及び国連のビジネスと人権に関する指導原則を尊重し、2019年7月に定めた住友林業グループ人権方針を2023年4月に改訂しました。また、国連グローバル・コンパクトやその日本ローカルネットワーク(HRDD分科会等をむ)、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)等へ参加しています。これら国際規範をもとにした「住友林業グループ倫理規範」において人間尊重と健全な職場の実現を掲げています。女性、子ども、先住民、マイノリティー、社会的弱者を含む、あらゆる人びとの人権を尊重するとともに人種、民族、国籍、性別、宗教、信条、障害の有無、性的指向・ジェンダーアイデンティティーなどによる差別を一切しない旨を定め、強制労働、児童労働についても一切容認していません。

また、ビジネスパートナーに対してもこの内容を含む方針の浸透を図り、人権デューディリジェンスの実施及び人権リスクへの対応を通じ、人権リスクの把握と低減に努めています。必要な場合には、ビジネスパートナーによる人権尊重の取り組みに対して可能な限りの支援を行います。

住友林業グループ人権方針

住友林業グループは、公正、信用を重視し社会を利するという「住友の事業精神」に基づき、人権の尊重をすべての活動の基本原則と考え、当社グループの事業に関わるあらゆる人々の人権を尊重します。

住友林業グループ人権方針(以下、本方針)は、当社グループの経営理念、行動指針、倫理規範、調達方針等を人権尊重の観点から補完し、当社グループの人権尊重への考え方をより明確なものとするために制定しました。

  1. 人権尊重のコミットメント
    住友林業グループは人権尊重に際し、世界人権宣言、国際人権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約及び経済、社会、文化的権利に関する国際規約)、国際労働機関(ILO)「労働における基本的原則及び権利に関する国際労働機関(ILO)宣言」などの国際規範で定義される人権を尊重し、国連ビジネスと人権に関する指導原則、OECD多国籍企業ガイドラインに準拠し、事業を展開する各国の関連法令の順守を徹底します。
    法令と国際規範に乖離がある国や地域においては、可能な限り国際規範を尊重し優先して取り組みます。
  2. 適用範囲
    本方針は、住友林業グループのすべての事業活動において適用するものです。また、国連ビジネスと人権に関する指導原則が広く実施されていくために、当社グループのビジネスパートナーに対しては、本方針で記載するすべての人権尊重を理解したうえでのコミットメントを求めます。
    本方針はすべてのビジネスパートナーの労働者の権利尊重を含み、ビジネスパートナーやその他の関係者が人権に対する負の影響に関連している際には、当社グループとして本方針に基づき、これらのパートナーや関係者に対し、人権を尊重し、侵害しないよう求めます。
  3. 人権尊重への取り組み

    ●人権デュー・ディリジェンス
    住友林業グループは、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、これを事業に必要なプロセスとして組み込み、継続的に実施していきます。
    人権デュー・ディリジェンスとは、潜在的または実際の人権リスクを評価・特定し、そのリスクを防止または軽減するための措置を講じるものです。

    ●救済
    住友林業グループの事業が、人権に対する負の影響を直接的に引き起こしたり、あるいはこれに関与・助長したことが明確である場合、社内外のしかるべき手続きを踏まえ、その救済に取り組みます。
    また、そのために必要なグリーバンスメカニズムの手続きを構築し、社内外からの救済へのアクセスのための通報窓口を維持するととももに、是正措置や救済措置の実効性を継続的に評価していきます。
    ビジネスパートナーにおいて、当社グループの事業に直接的関連する人権への負の影響が判明した場合には、当該パートナーの救済に向けた取り組みに協力します。また、ビジネスパートナーがグリーバンスメカニズムを構築し、救済に取り組むことを期待します。必要な場合、国・公的機関が運営する司法・非司法的救済メカニズムに対して協力します。

    ●教育
    住友林業グループは、本方針が住友林業グループすべての事業活動に組み込まれるようにするため、役職員、従業員等に対し、定期的かつ適切な教育を行います。
    ビジネスパートナーに対しても、人権に関する適切な教育がその労働者に提供されることを期待し、必要な場合にはその取り組みを支援します。

    ●ライツホルダー・ステークホルダーとの対話
    住友林業グループは、人権侵害の深刻性等を鑑みて、人権に対する潜在的な、あるいは実際のリスクの特定、及び実際の影響に対する軽減・救済措置、人権への取り組みに関するモニタリング・評価等について、ライツホルダーや関連するステークホルダーとの対話や協議を行っていきます。それにより得られた情報や教訓を人権デュー・ディリジェンスのプロセスに組み入れていきます。

    ●情報開示
    本方針に基づく取り組み、潜在的及び実際の人権への影響に対する当社グループの対応についての説明責任を果たすため、適切に情報開示、報告を行います。

代表取締役 社長 光吉 敏郎

(別表)

住友林業グループにおける
人権対応重点課題

国際規範で定義される人権における当社グループにおける重点課題は下記のとおりです。なお、この重点課題は、当社グループの事業や社会情勢の変化に基づき、適宜適切に見直すものとします。ビジネスパートナーに対しても、ここで記載するすべての課題に関する人権尊重へのコミットメントを求めます。

  1. 1.国際規範の観点から尊重が求められる人権課題

<差別の禁止>

  • 性別、年齢、国籍、民族、人種、出身地、宗教、信条、障害の有無、性的指向、性自認等を根拠としたあらゆる差別の禁止

<労働者の権利>

  • 児童労働の禁止
  • 強制労働の禁止(外国人・移民労働者を含む)
  • 人身取引の禁止
  • 結社の自由と団体交渉権の尊重
  • 低賃金労働(最低賃金、生活賃金を下回る労働)の防止
  • 長時間労働の防止(労働時間に関するILO労働基準条約の尊重)
  • パワーハラスメント、セクシャル・ハラスメントの禁止
  • 労働安全の確保
  • 労働者の健康(メンタルヘルスを含む)の確保

<事業に関連する脆弱な人々への権利尊重>

  • 事業を行う地域に関連する地域住民の権利尊重
  • 土地・天然資源・先住民族の権利尊重※1
  • 女性の権利尊重※2
  • 子どもの権利尊重※3
  • マイノリティの権利尊重
  • 高齢者等の人々の権利尊重
  • 移民・難民の権利尊重※4
  • 将来世代が保有する環境権への配慮(持続可能な森林管理等)
  • 水と衛生へのアクセスに関する権利尊重
  • 人権擁護者(ヒューマン・ライツ・ディフェンダー)の権利尊重

    ※1「国家の食糧安全保障の文脈における土地所用、漁業、森林所有に関する責任あるガバナンスのための自主ガイドライン(VGGT)、「IFCパフォーマンススタンダード」に記載されている権利、ILO「1998年の先住民及び種族民条約(第169号)または国連「先住民族の権利に関する宣言」等の尊重を含む

    ※2女性差別撤廃条約の尊重を含む

    ※3子どもの権利条約の尊重を含む

    ※4 すべての移民労働者とその家族の権利の保護に関する国際条約の尊重を含む

<プライバシー・表現の自由>

  • 顧客、従業員を含めた個人情報の保護を含むプライバシーの尊重、デジタル保護
  • 表現の自由に関する権利尊重
  1. 2.人権デュー・ディリジェンスで特定された人権課題

当社グループが実施する人権デュー・ディリジェンスで特定された人権課題として、以下の課題を重要と認識し、リスク軽減に取り組んでいます。

  • 先住民族・コミュニティの権利尊重
  • 労働安全衛生
  • 外国人労働者の権利尊重
  • グリーバンスメカニズムの構築

(2023年4月時点)

デューディリジェンスの実施及び
重要リスクへの対応

住友林業グループは、人権デューディリジェンスのしくみを通じて、人権への負の影響を特定し、その防止、または軽減を図るよう努めています。

住友林業グループにおける
サステナビリティ実態調査

2012年度からグループ各社のサステナビリティの取り組みについてサステナビリティ実態調査を毎年実施し、人権についても各社の状況を把握、その結果はESG推進委員会を通じて取締役会に報告するとともに改善を行っています。2022年度は、主な国内外グループ会社59社(国内29社、海外30社)の状況について、人権研修の実施や救済窓口の設置状況の調査を行いました。結果として、人権研修の実施が49社、救済窓口の設置が46社、リスク緩和の措置が59社で行われていることを確認しました。また各社調達先に対しては、アンケート調査とヒアリングを通じ、人権侵害の未然防止に努めています。

この調査による2022年度の当社倫理規範に関する人権に対する違反件数は0件でした。

サステナビリティ調達による人権の尊重

住友林業グループは、人権や労働者の基本的権利の擁護や腐敗防止を調達先に求める「住友林業グループ調達方針」に基づき、公正で責任ある調達活動を行っています。とりわけリスクの高い輸入材の調達については、200を超える全ての仕入先に対して、供給品やその原材料の調達国・地域に労働者及び地域住民の権利侵害が存在しないかどうか、存在する場合、労働者及び地域住民の権利に配慮した伐採が行われていることを確認しているかどうかを含むサステナビリティに関するアンケート調査を行い確認しています。また、リスク区分によりリスク緩和措置が必要と認められる対象サプライヤーに対しては、ヒアリングや現地調査を実施するなどして確認しています。さらに、2022年度は、人権問題の社内浸透を図るため、住友林業グループの木材調達担当者に向けて、「人権とサプライチェーン」をテーマに勉強会を実施しました。

重要な人権リスクの特定と対応

人権デューディリジェンスの取り組みを強化すべく、事業本部ごとにバリューチェーン上のステークホルダーにおけるリスクのマッピングを行い、インパクトを分析し、事業本部ごとの人権リスクの重要度・優先度の洗い出しを行っています。また、新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響をあらたなリスク要素とし、2020年度にはマッピングの見直しを行いました。

資源環境事業では「先住民やコミュニティが有する土地の権利侵害及び関連法令への対応」「山林での労働安全衛生管理(危険作業など)」、木材建材事業では「先住民が有する土地の権利侵害」「工場での労働安全衛生管理(火災や粉じん爆発など)」「木材伐採地での児童労働(危険作業含む)」、住宅・建築及び海外住宅・不動産事業では「移民労働者の労働条件(強制労働など)」を重要リスクとして特定しています。

特定されたリスクについてはそれぞれの事業ごとにリスクの低減・是正のための対応を行っています。2020年度は、例えば、特定された重要リスクのうち、特に重要度が高く国内で大きな社会的注目を集めるテーマである「外国人技能実習生の人権尊重」について、協力工務店及び技能実習生の監理団体に対し第三者機関によるヒアリング及び書類確認、外国人技能実習生へのインタビューを行いました。結果として、人権侵害等につながる大きな問題は確認されませんでした。 2021年度は、「先住⺠族・コミュニティの権利尊重」に関して、一層のリスク低減を図り、事業展開地域のステークホルダーとのさらなる良好な関係を築くため、海外の資源環境事業におけるグリーバンスメカニズムの運用状況について取り組みの確認・是正点の洗い出しを行いました。第三者機関によるオンラインを通じたヒアリングの結果、インドネシア、パプアニューギニア、ニュージーランドの3つの海外植林の現場において適切なグリーバンスメカニズムの運用により、行政機関・コミュニティとの継続的なコンサルテーションが行われていることが確認されました。一方で、対外的な情報開示の拡充、ライツホルダーとの対話による仕組みへの反映等について取り組みの改善が必要であることがわかりました。2022年度はビジネスパートナーへ人権尊重のコミットメントを求めるため第三者の意見も受けながら住友林業グループ人権方針の見直しを行い、より国際的な指針に準拠した内容としました。

今後はさらに予防、回避、軽減、是正するための対応策、実施計画をステークホルダーごとに定め、PDCAを回し、取り組みの向上を図っていきます。

新規事業計画時の人権リスクチェック

住友林業では、新規事業やプロジェクトの計画にあたり、サプライチェーン全体を視野にリスクチェックを行っています。労働者などステークホルダーへの人権配慮等の社会面項目についても対象となっています。

グリーバンスメカニズムの運用・整備

住友林業では、グリーバンスメカニズム(苦情処理メカニズム)の重要性を認識しており、通報窓口を運用しています。今後も社内外の通報窓口を整備し、人権侵害の防止や人権侵害が起きた際に必要な救済措置をとることに役立てていきます。

住友林業グループ
人権インパクト分析マップ

住友林業グループ 人権インパクト分析マップ

(2020年7月改定)

海外森林における人権の尊重

住友林業グループの海外森林事業においては、ステークホルダーエンゲージメントとグリーバンスメカニズムの一環として、以下の取り組み事例があります。

インドネシアでの取り組み

インドネシアの西カリマンタン州における森林事業では、2012年に世界銀行のグループ機関であるIFC(International Finance Corporation:国際金融公社)とアドバイザリー契約を締結しました。近年重要視されている「保護価値の高い森林 (High Conservation Value Forests: HCVF)」の指標である先住民の権利や文化遺産の保護の考え方に沿って、事業地の土地利用計画が適切に実施されているか、また地域住民の生活への配慮が十分であるかなどについて、 IFCと共同で事業地内の調査を実施しました。

2013年には調査の内容と結果を共有するため、そして2015年には植林木の伐採に先立って事業内容、環境への配慮についての理解を深めるために、ステークホルダー(地域住民、周辺の企業、学識者、NGO、政府関係者)を招いて公聴会を開催するなど、人権に配慮した森林事業を進めています。

2018年にはIFCの協力を得て、「苦情処理メカニズム(Grievance mechanism)」をワナ・スブル・レスタリ(WSL)/マヤンカラ・タナマン・インダストリ(MTI)にて構築し、2022年からオペレーションを開始したクブ・ムリア・フォレストリ(KMF)も含めて運用しています。このメカニズムには2通りの苦情処理経路があり、一つはWSL、MTI、KMFに地域住民が意見を書面で伝える方法、もう一つはWSL、MTI、KMFが地域住民を訪問し、意見を収集する方法です。両経路とも7営業日以内に地域住民に対してWSL、MTI、KMF経営陣承認に基づく回答を行っています。

パプアニューギニアでの取り組み

パプアニューギニアのオープン・ベイ・ティンバー(OBT)においても、社内外を問わず地域の誰もが投函できる目安箱を設置しています。 2020年に投稿された意見として、例えば賃金に対する要望が数件ありましたが、内容を精査し対応が必要な場合には適切に対応しています。従業員だけでなく、周辺住民等からの相談なども受け付けているため、自分の意見を会社に伝える手段があることで会社に対する信頼の向上にも役立っています。

ニュージーランドでの取り組み

ニュージーランドのタスマン・パイン・フォレスツ (TPF)では、近隣住民や協力業者等のステークホルダーと重要なやりとりがあった場合は、ステークホルダーレジスターに登録しています。過去の経緯を把握した上でコミュニケーションをとることで、円滑な関係性の構築の一助としています。

関連情報はこちら

人権研修

住友林業グループでは、国内の新入社員研修で人権に関する講義を行っています。さらに一人ひとりが人権を尊重し、差別のない職場づくりに向けて取り組めるよう、社内WEBサイトが利用できるグループ全社員にeラーニング「仕事+人権」講座の受講(テスト 80点以上で修了)を毎年義務付けています。この講座は、障害者や外国人の他LGBTQなどに対する理解も促す内容で、2022年度は12,232名(単体5,611名、グループ6,621名) が受講しました。また、住友林業では、新任主管者研修においても人権の講習を取り入れています。 今後も、eラーニングや研修の機会を活用して社員の人権意識をより高めていきます。

米国での取り組み

米国では、連邦法や州法によって人種、性別、宗教、出自、健康状態等を理由とした雇用上の差別が禁止されています。住友林業グループの米国各社においても、従業員ハンドブックへの記載などを通じて機会均等・差別禁止に関する会社の姿勢・理念の共有に努めています。

ハラスメントの防止

住友林業では、就業規則の中で、役職員が守るべき規則の一項目(服務規律)としてセクシュアルハラスメント、パワーハラスメントやマタニティハラスメントを禁止する規程や懲戒基準を定め、会社としての方針を明確にしています。また、「住友林業グループ倫理規範」においても、各種ハラスメント行為を禁止し、社内WEBサイトや社員手帳・リーフレットで周知している他、グループでの各種研修やeラーニングにてハラスメント研修を実施しています。さらに、半年ごとに人事部より全社員宛てにハラスメント撲滅の注意喚起メールを配信しています。

2000年度から人事部内に「ハラスメント相談窓口」を設置し、相談に適切に対処できる体制を整えています。2022年度は「ハラスメント相談窓口」に相談のあった4件をレビューしました。

国内外のグループ会社においても、各社ごとに職場でのハラスメント・差別行為に関する相談窓口設置などの対策を実施しています。

住友林業では、新任主管者研修でハラスメントの講習を取り入れています。また、グループ会社も利用できるeラーニングを活用し、ハラスメントの基礎知識と防止策の講座を通じて社員の意識向上に取り組んでいます。