建物をつくるというより、まず心地のよい場をつくることを考えています。この場所に建てたときに、どのような要素で心地よさを生み出すのか。正解はさまざまで、家具や照明、植栽などでつくりだす居心地のよさもありますし、素材のような小さなものから生まれることもあります。また自然の景色、天然の素材、手づくりのものなど、日々変化を楽しめるものをメインとして空間を構成することも心がけています。その土地、その方、素材感などあらゆる条件を複合的に考えながら、心地よい場をつくり出したいと考えています。
建築士 村田 幸司神奈川県Kさま邸
窓辺から海を臨む3階建ての別荘。ゴルフの帰りにゲストをお迎えし、夕日を眺めながらお酒を嗜みたいというご要望でした。立地に関してはお客さまが詳しかったので、こちらからは建築として重要なことをお伝えしました。同じ海でも1、2、3階で周辺環境との関わり方が変わるため、高さ方向と方位でどういうゾーニングにするかを入念に。窓は重要な構成要素ですので、プライバシーを配慮しつつ、デザイン性を持たせたいと考えました。
神奈川県Kさま邸
窓辺から海を臨む3階建ての別荘。ゴルフの帰りにゲストをお迎えし、夕日を眺めながらお酒を嗜みたいというご要望でした。立地に関してはお客さまが詳しかったので、こちらからは建築として重要なことをお伝えしました。同じ海でも1、2、3階で周辺環境との関わり方が変わるため、高さ方向と方位でどういうゾーニングにするかを入念に。窓は重要な構成要素ですので、プライバシーを配慮しつつ、デザイン性を持たせたいと考えました。
設計には法規制やコストなどいろいろな制約がありますが、初めはいったんそれらを脇に置き、理想的な形をまず考えるようにしています。そこからご要望にあったボリューム感や細かい規格を考慮し、プランに落とし込んでいきます。それが「心地のよい場をつくる」ということだと思っています。制約から入ってしまうと、どうしてもできないことばかりに目が奪われがちです。だからこそあえて感覚的なところから入り、あちらに山が見えたり、夕陽が見えたりしたら気持ちがよいだろうとイメージを沸かせます。理想のイメージをお客さまと共有し、その後に具体的な条件や実現が難しい場合の理由、メリットデメリットを説明していきます。
お打ち合わせではまず、お客さまのお話からスタートしていただくようにしています。
こちらで事前に準備はしているわけですが、新しいご要望などを伺い、一緒に検証をしていくことで、よりよい解決策が生まれることがよくあります。
自分の既成概念に囚われず、お客さまとの化学反応を愉しむ事を心がけています。
いちばん心地よい場所は、窓辺にあったほうがいいと考えています。窓は外部とつながる場所をどうつくるかという意味で大切です。同時に内外のデザイン性、風通しや採光、断熱や防犯など、複数の機能に関わります。建築を考える上でとても重要な要素ですので、その窓の役割を一つひとつ丁寧に考えます。光を採り入れるためなのか、外を見るためなのか、意味のない窓をつけて寒くなってしまわないかなど。その場所にあった窓を必要な量で納めることを意識しています。
エントランスの玄関収納の上は、キッチンと同じ壁面を採用しています。木材ですがスチールのようにみえる金属系の塗料を加工し、重厚感を醸し出しています。棚の上の花器が美しく映えます。
2階に設けたバルコニーからもゆっくりと景観を楽しめます。海を眺めながらの一杯は室内とはまた違った美味しさを味わえます。
設計を終えて
ほぼ原案通りの外観をかっこいいと特に気に入ってくださり、うれしく思います。またお客さま自身で色々と調べてきていただいたことも多く、打ち合わせの中でアイデアが掛け合わされ、新しい気づきが生まれました。一方で建築として大切なことを提案させていただき、柔軟に取り入れていただいたからこそ実を結んだのだと思っています。始まりと終わりでの変化を受け入れながら、私自身も成長させていただいたと感じています。
取得資格
一級建築士
これから住まいづくりをする方への
メッセージ
家を建てるということは、暮らしという側面から好きなものや大切にしたいものを見つけるとてもよい機会だと思います。忙しい合間にも少し時間をとって好きなものを掘り下げ言語化していくと、後からの迷いもなくなります。また光や影の美しさのように、写真から分かるものもありますが、体感しないと分からないものもあります。例えば手触りや質感。ボールペンのざらざら感が好きだとか、この木のテクスチャが好きだとか。身の回りのものから感じることを伝えてもらえれば、私たちも一緒に掘り下げていくことができます。住宅は個人のもの。正解はお客さまの中にあるからこそ、好きなものの言語化に時間をかけていただきたいです。そして最終的に同じ感動を共有したいと思っています。