建築士として私がいちばん大切にしているのはご家族にとって暮らしやすい住まいであるかどうかです。心地よい光が差し込むリビングやダイニングもプライバシーがしっかりと守られていなければ落ち着いた場所にはなりません。とくに使い勝手や動線については女性ならではの視点も活かして細部まで丁寧に考えます。お打ち合わせの時間も楽しんでいただきながら、ご家族に愛される住まいをつくり上げたいと思っています。
1階は奥さまのフラワーアレンジメントの店舗と教室、2・3階が住宅です。街の人に親しまれる華やかで上品な店舗と、ご家族が落ち着いて過ごす住宅という二つの要素を、法規制の厳しい都市部の環境のもとで実現することがテーマでした。
私はまず敷地の状況をつぶさに見ます。敷地のどこが一番気持ちのよい場所になるのか。周辺の状況によっては、一概に南側がよいとはいえません。また都市部では建物が近接していたり、高さ制限などの法律上の規制も厳しく設けられています。まず敷地を見て、設計の骨格となるものを考えていきます。
ご家族とお客さまの動きや、視線の先に見えてくるものをそれぞれ細かく想定し、間取りや動線をじっくりと考えます。ご家族の暮らしが始まって「動きやすい」「ここから見える景色が好き」といったお話を聞かせていただけると、本当にうれしく思います。
共働きが家族の当たり前の姿になる中、効率のよい家事動線などへの配慮がこれまで以上に求められています。住まいの設計において、女性の建築士ならではの感性を活かしてプランニングを進めるようにしています。
店舗併用のご自宅の新築は、お店を経営され自ら先生もされている奥さまとのお打ち合わせが中心でした。もちろん奥さまと私の間には、依頼する・依頼されるという関係があります。しかし、時にはそのことも忘れて友達同士のように、一緒に考え、悩み、理想のキッチンを求めて街を歩き、楽しく家づくりを進めさせていただきました。建築の専門家であると同時に、いつもお客さまの傍らにいて同じ視線の高さで何でも相談いただける存在であること、それが私の理想です。そのような機会をくださった奥さまとご家族に、心から感謝しています。