社外取締役メッセージ

山下 泉

長期ビジョンの実現に向けた着実な取り組みを

社外取締役 山下 泉

 ロシアによるウクライナ侵攻を契機とした世界的なインフレ進行・急激な金利上昇を受けて当社を取り巻く経営環境は大きく変化し、特に、米国を中心とする海外住宅・不動産事業の業績は、かなりの下振れを余儀なくされています。しかし、これら諸国の中長期的な潜在成長力は高く、金利のピークアウトとともに成長軌道に復すると見込まれますため、当面は、投資・在庫リスクの管理を徹底しつつ、施工合理化による生産性向上への取り組みなど次の成長ステージへ向けての基盤固めを進めていく時期と考えています。

 当社にとってもっとも重要な経営課題は、人口減少・少子高齢化を背景に伸び悩む国内事業の活性化と地球環境問題・脱炭素へ向けての貢献です。その実現のためには、長期ビジョン「Mission TREEING 2030」に掲げられた多岐にわたるプロジェクトに全力で取り組み、着実に成果をあげていくことが求められます。その推進にあたっては、①各プロジェクトの工程・プロセスの「見える化」を徹底し、当社各組織・部門の連携・協力による実効性のあるプロジェクト管理の実施と、②優れた技術・ノウハウを持つ他社との協業・オープンイノベーションの活用が、不可欠となります。当社が、(株)IHIと協力して取り組む「インドネシア熱帯泥炭地での持続可能な森づくり」プロジェクトは、そうした先進事例の一つです。

 こうした内外でのさまざまなプロジェクトへの取り組みを通じて、元気で、高いスキルを持つ多様な国籍・バックグラウンドを有する人財ポートフォリオを構築・育成し、建設的な緊張感のある風通しの良い、よりイノベーティブな職場環境をつくり上げていくことが、当社の企業価値の持続的かつ力強い成長につながっていくものと確信しています。

栗原 美津枝

多様な視点を経営に反映させ企業価値と社会価値向上に尽力

社外取締役 栗原 美津枝

 当社グループは、グローバルなウッドサイクルを構築し、独自のバリューチェーンを展開しています。その事業環境は、木材価格が高騰したウッドショックが、さまざまな要因が絡んで起こったように、世界の経済情勢や地政学リスクが高まる中で不透明さを増しており、経営の一層の高度化が必要です。

 気候変動などの社会課題に対し多くの事業機会を持つ当社ですが、脱炭素では、国内外の持続的な森林経営とともに、ノウハウを活かした炭素計測の技術開発や建築での脱炭素設計の標準化、森林ファンド組成などで、自社の「カーボンネガティブ」だけでなく、良質な環境価値の創造をリードすることが大切です。

 また、リスク管理の高度化も必要で、国際情勢や経済安全保障も考慮して、サプライチェーンの再点検や現地の経営力の強化が重要です。さらに、生物多様性や人権の尊重へも、より感度を高め、取り組みと開示を加速する必要があります。

 このためには経営基盤の強化が欠かせません。成長投資の拡大や事業特性を踏まえた財務基盤のあり方は常に議論していく必要があります。また、人財戦略では、管理職のキャリア採用や海外子会社の外国人常勤取締役はすでに4割を超えていますが、女性活躍などの多様性や、「挑戦」する風土をさらに醸成していきたいと思います。

 グループやサプライチェーンも含めたDX推進に加え、グループのコミュニケーション力を高めることも大切です。横の事業連携に留まらず、経営戦略やリスク管理、各事業の密なコミュニケーションで、複雑で不透明な事業環境の変化を捉え対応する力(レジリエンス)が高まります。

 社外取締役として、多様な視点を経営に反映させつつ、平時からグループガバナンスを進化させるとともに、組織のレジリエンス向上等により、企業価値と社会価値をより高めるよう尽力してまいります。

豊田 祐子

ガバナンス構築および女性活躍に向けた議論への貢献目指す

社外取締役 豊田 祐子

1. 社外取締役として、どのような観点からガバナンスを行おうとお考えでしょうか。

 2023年3月に新たに取締役会の一員となり、光栄に感じるとともに、身が引き締まる思いです。社外取締役は、会社内で業務執行に携わってきた方とは異なる独立した立場・視点で関わることによる監督の有効性に大きな意義があり、ステークホルダーからも期待されるところです。その基本を押さえた上で、法曹の経験に基づく視点を生かしつつ、多角的な見方によりガバナンスに貢献したいと思います。

2. 取締役の活動にもつながる法曹のプロフェッショナルとしての信条をご教示ください。

 法曹として案件に対応する際には、柔軟に考えられる部分と、守るべき部分を峻別し、プロジェクト全体を見て判断することが大切であると考えています。不必要に保守的になってビジネスの足枷とならないよう留意すると同時に、避けるべき法的リスクは的確に指摘し、全体を俯瞰して採るべき手段を決定することが必要です。取締役としての活動においても、このような考え方は有用であると考えます。

3. 住友林業の取締役会で果たしていきたい役割についてお考えをお聞かせください。

 コーポレートガバナンスは、一律のものではなく会社ごとに適切なシステムを構築していくものであるため、その時々の議論や潮流を踏まえた上で、会社および取り巻く環境について深く検討することが必要です。当社について深く理解し、よく議論することで、当社に合ったガバナンス構築に貢献したいと考えています。また、当社の創業以来の森林経営は、地球規模の問題への有力な解決策となるウッドサイクルとして進化し、着実に歩みを続けています。しっかりしたガバナンスを基盤として「Mission TREEING 2030」を推進していくために、海外子会社の特性を踏まえたグループガバナンスの推進、脱炭素化への取り組みおよびその発信、人材を十分に活かすための環境整備等、さまざまな課題の解決に貢献したいと考えています。特に、女性活躍について真剣に考え、女性のみならず従業員一人ひとりがさらに活躍していけるよう、力を尽くしていく所存です。