多角的な議論を通して取締役会の実効性と資本効率を高めていく。
中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase 2」1年目の成果についてどのように評価されていますか。
岩本 中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase 2」(以下Phase 2)の策定時は事業環境が右肩上がりでしたが、足元では米国住宅市場の減速や金利上昇といった外部要因により、業績は想定どおりには進んでいません。当初の計画との差をどう捉え、どの領域で、どのように挽回していくのかを考えなければならない局面に来ていると考えています。一方で国内住宅事業においては優れた商品力と効果的な事業戦略により、堅調な業績を維持されています。引き続きPhase 2の目標達成に向けて着実に取り組んでほしいと思います。
栗原 Phase 2の初年度は、好業績だったPhase 1の3年間と比較すると業績が想定どおりに進んでいないという点は正面から受け止める必要があります。一方で財務規律を維持しながら積極的な投資を継続している点は評価しています。また、組織面での改革も大きな進展を見せており、コーポレート本部において積極的な人財採用や各地域への駐在員の派遣体制の整備などが進められました。これにより、人財面の体制およびグローバル・ガバナンスの強化が図られ、将来の飛躍的な成長に向けて経営の土台構築が着実に進展しました。さらに、不動産事業本部の新設により、戸建住宅とは異なる事業特性に応じた経営資源の強化とリスク管理体制の構築が実現しました。これらの組織体制の見直しを通じて、2025年度は次の成長段階につながる重要な基盤づくりの年になったものと評価しています。
豊田 Phase 2初年度の業績はこれまでの好調と比べ厳しい結果であったと受け止めています。その中で、海外子会社の人財・ガバナンスなど、経営資源の質的転換が求められる段階に入ったものと感じています。その変化を捉え取締役を含む経営陣が議論した上で必要な施策を講じられており、数字には表れていなくても、当社において成長基盤の構築が進んでいると認識しています。また、同年度は、森林ファンドの進捗や中大規模木造建築の推進に向けた組織の改編など、国内外で脱炭素化に向けた取り組みが進展したことに注目しています。
助野 Phase 2初年度は業績面で苦戦しましたが、当社の事業領域においては外部要因による業績変動は避けられません。一方で、そのような状況下でも競合他社より影響を小さく抑える方法を考えることが重要です。競争優位性を維持するには、競合他社にない住友林業固有の強みを特定し、それを徹底的に強化することが肝心です。当社ならではの強みに経営資源を集中させ、他社が容易に模倣できない水準まで磨き上げていくことを通じて、景気回復時により大きな成長を実現できるはずです。
長期ビジョンの実現に向け、経営資源配分のあり方、事業ポートフォリオの最適化について、現時点の課題なども含めてどのように考えていますか。
岩本 筑波研究所を訪れ、短期的な収益性だけでは判断できない投資の重要性を実感しました。木造建築の耐震や耐火性の向上、無花粉スギの開発など、長期的な価値を生む研究が着実に積み重ねられています。こうした基礎から応用までの技術力は、買収した海外の会社にはない当社固有の強みであり、海外での現地事業との連携によって新たな価値を生み出せると考えています。企業の内部留保はまず設備投資、研究開発、人財育成に回すべきであり、その成果を世界に展開することで、住友林業は真のグローバル・カンパニーへ成長できるでしょう。
助野 効果的なポートフォリオ・マネジメントにおいては、企業が保有する事業の収益性を厳格に評価し、資源配分を最適化する経営判断が重要です。高収益事業に積極的な投資を行い、成長戦略を示せる企業に対しては、投資家は投資による将来的な企業価値向上を期待し、株主還元をさほど求めません。一方で、低収益性事業を長期保有し続ける場合は、コングロマリット・ディスカウントが生じ、投資家から株主還元への要求が強まる傾向があります。定期的な事業ポートフォリオの見直しと低収益事業への明確な方針提示が企業価値向上には不可欠です。
グローバル・ガバナンスと人財育成についてのご意見やお考えがあればお聞かせください。
助野 社外取締役の立場から見ると、グローバル・ガバナンスを機能させるには、「監視する側」と「監視される側」の独立性を確保する組織設計が不可欠です。そのため、効果的なガバナンスには、本社のコーポレート本部が現地のレポーティングラインの外から海外各地域統括会社を直接監督する体制の構築が重要です。コーポレート本部主導による「監督」と「執行」の明確な分離で、実行性のあるガバナンスを実現できると考えています。
ガバナンスの観点で私が特に意識しているのは、買収先企業との向き合い方です。買収した会社は、当社にない強みを持っており、ある意味「先生」でもあります。その強みを尊重しながら、どうガバナンスを利かせるかが重要です。例えば、海外のトップを取締役会に招き、直接対話する場を設けることは、グループに加わった意義などを共有し、信頼関係を築くうえで有効だと考えています。
栗原 ガバナンスを機能させるためにも、数字や資料だけでなく、対話の場を設けていくことが重要だと思います。以前のコロナ禍でも、現地の経営トップと本社の取締役がオンラインで対話する工夫をしていましたが、今は現地に赴く機会も増え、現地トップや社員との直接対話や、施工現場や市場なども直接肌で感じるとともに、社外役員が感じたことを取締役会で共有しています。
海外での多事業の拡大とともに、本社の事業部だけが直接現地と向き合うやり方には限界があり、地域統括会社の役割が今後さらに重要になると思います。コーポレート本部が統括会社をどう支え、どう管理するのかという点も含め、当社グループに合った新たなグローバル・ガバナンスの形を模索する段階だと考えます。
助野 グローバル人財は、若いうちから海外に出して経験させるのが一番だと思っています。現地でトップを任せ、課題対応を通じて力を付けさせる。あわせて海外から人を迎え、現場で協働することも重要です。外に出すことと、外から迎えること、この両輪が人財育成の基本だと考えています。
豊田 海外事業については、人財の持続性も課題だと認識しています。同じ地域に長く駐在している方が多いのは、事業が急速に拡大したことに比して人財の母数が十分でなかった結果です。育成、外部採用、それを支えるコーポレート本部の体制整備を同時に進めていかなければなりません。
取締役会の実効性について感じる課題があればお聞かせください。
豊田 取締役会で議論する上では、資料の内容に加え、伝え方も重要だと感じています。資料は非常に充実していますが、要点を整理する工夫があるとさらに議論しやすくなります。また、付議事項についての主要論点を事前に共有いただけると、議論の質はさらに高まると思います。
栗原 社長から考えを聞くことは重要ですし、その機会は多いです。最近は本部長が説明する機会も増え、主管者会議※や取締役会での説明力は確実に高まってきていると感じます。取締役会としても、その成長を評価しつつ、さらに説明の質が高まれば、取締役会も執行もより効果的に議論が進められると思います。
本会議は主に各事業の業績レビューと今後の事業戦略について報告を行う。出席者は取締役・監査役の全員に加え、各組織のトップ(主管者)。
豊田 取締役会の議論の中で、社長ならではの視点が示されることで、それまで捉えきれていなかった論点が一気に整理される場面もあります。社外取締役の立場からすると、社長の考えを直接聞くことは、経営を理解する上で必要なプロセスの一つだと感じています。本部ごとの取締役会への報告とは異なる視点で、全体的な事業の中での位置づけを意識するような議論も重要です。
岩本 本部長が事実や詳細を説明し、社長が一段高い視点から全体を整理する。その一言で議論が腹に落ちる場面があり、現在は良いバランスが取れていると思います。そのやり取り自体が、取締役会を通じた経営人財の育成につながっていくと思います。
栗原 昨年、社長のサクセッションプランが不明確だという指摘が社内外からこれまであったことを踏まえ、社長の任期の考え方、候補者プールの設定、見直しのタイミング、求める経験や資質について、指名・報酬諮問委員会でより一段踏み込んだ議論を行い、目線合わせを進めました。社長候補の人事に関して、全員が共通認識を持てたということは、大きな前進だったと思います。





































