ニュースリリース
(2019年)
2019年04月15日
住友林業株式会社
愛知県丹羽郡大口町
~愛知県大口町の桜の新品種~
組織培養でクローン苗木を400本増殖、納品
住友林業株式会社(社長:市川晃、本社:東京都千代田区)は、愛知県大口町(町長:鈴木雅博、愛知県丹羽郡大口町)に、同町内の諏訪神社にある桜の名木から組織培養で増殖したクローン苗木400本を納品しました。この桜は樹齢100年を超える名木で、住友林業の品種鑑定で新品種であることが判明しました。
今後、増殖した苗木は、同町内の五条川沿いの桜並木の植え替えや町内の植栽等に活用される予定です。
■経緯
大口町を流れる五条川沿いの自然歩道の桜並木は、約7kmに渡り約1,700本のソメイヨシノが植栽されている全国でも有名な桜の名所です。植栽から60年の歳月が経ち、近年の温暖化などの環境変化の影響から樹勢に衰えが見え始め、町は桜の保存を検討しています。
五条川の桜並木の植え替えに備えるため、2014年11月、町内に古くからある貴重な桜のひとつである諏訪神社の桜の品種鑑定を住友林業へ依頼。住友林業は栽培品種や神社仏閣の名木など約250品種の桜のDNAに関するデータベースを保有しており、様々な品種名不明の桜の品種を同定してきました。諏訪神社の桜のDNAを照合したところ、登録されているどの品種ともDNAが完全一致しなかったため新品種と判明しました。
町に古くからある名木のこの桜を組織培養技術により種を保存し、今後の五条川沿いの桜並木の後継種として植え替え時に積極的に活用していくことを想定しています。
・2014年11月 桜の増殖に関して、大口町内の桜の名木の品種鑑定の依頼を受ける
・2015年3月 大口町から組織培養によるクローン増殖の依頼を受け研究を開始
・2018年3月 組織培養により諏訪神社の桜の苗木増殖に成功
・2019年3月 増殖した400本の苗木を大口町へ納品
■五条川の桜並木
大口町の中央を北東から南西に流れる五条川。その堤には昭和30年代から旧大口村の村民により桜の植栽が進められ、現在では約1,700本の桜が咲き誇る桜の名所となっています。町内だけでなく、愛知県や周辺からも花見客が集まる桜の名所として“日本さくら名所100選”にも選出されています。
■住友林業グループの今後の取り組み
住友林業グループは、神社仏閣や自治体の皆様が所有・管理する名木・貴重木を後世に受け継いでいく取り組みをサポートし、調査、品種同定、増殖、樹勢回復、再整備計画などを行っています。今後も日本の花木である桜を始め、梅や松など歴史的・社会的に貴重な樹木を後世に繋ぎ伝統ある風景を次世代へ受け継ぐ取り組みを進めていきます。
≪参考資料≫
住友林業では、これまでに様々な寺社仏閣や自治体が管理している名木や貴重木について、組織培養、接ぎ木、種子による後継樹の増殖を行ってきました。また、増殖した苗が確実に同じ形質(花や葉など)を受け継いでいるかを確認するため、形態観察に加え、遺伝子による鑑定を行っています。
■これまでの事例
“太閤しだれ桜”(京都市伏見区・総本山醍醐寺)、“日光椿など”(京都市左京区・霊鑑寺、市天然記念物)“御室桜”(京都市右京区・仁和寺、国名勝指定)、“祐天桜”(東京都品川区・清岸寺、区天然記念物)“奇跡の一本松”(岩手・陸前高田市)、“長興山しだれ桜”(神奈川県小田原市・長興紹太寺、市天然記念物)、“妙法桜”(神奈川県鎌倉市・安国論寺、市天然記念物)、“紅和魂梅”(京都市右京区・北野天満宮)、“真鍋のサクラ”(茨城県土浦市・市立真鍋小学校、県天然記念物)、“ヒロシマエバヤマザクラ”(広島市南区、市天然記念物)、“泉の一葉松”(福島県南相馬市、県天然記念物)
■育成の流れ
組織培養の材料となる茎頂(けいちょう)部 芽の分裂組織で、幹や葉はここから作られていきます。
茎頂から誘導した多芽体(たがたい) 植物の成長に必要な成分を混合した培養液の中で茎頂を培養すると、3~4か月後に50個程度の芽の塊に成長しています。
多芽体からの芽の伸長液体培地から、寒天で固めた固体培地に多芽体を移植すると、芽が伸長するとともに、正常な葉が形成されます。
人工培土での発根 多芽体から伸長した芽を1本ずつ切り分け、人工培土に植え付けます。3週間ほどすると発根します。
屋外での順化無菌のフラスコから取り出し、外の条件に慣らします。
以上
《本件に関するお問い合わせ》
住友林業株式会社
コーポレート・コミュニケーション部 佐藤・大西
TEL:03-3214-2270
大口町役場建設課
TEL:0587-95-1626
《名木・貴重木の後継樹育成に関するお問い合わせ》
住友林業株式会社
森林・緑化研究センター
TEL:03-3214-3635
WEBサイト:http://sfc.jp/flrc/