ニュースリリース
(2020年)
2020年08月24日
CLTの災害時移動式応急仮設住宅を開発
茨城県境町、(一社)協働プラットフォームと包括連携協定締結
茨城県境町(町長:橋本正裕 茨城県猿島郡境町)と住友林業株式会社(社長:光吉 敏郎 本社:東京都千代田区)、一般社団法人協働プラットフォーム(代表:長坂俊成、東京都千代田区)は8月24日、CLT※1を活用した災害時移動式応急仮設住宅の開発で包括連携協定を結びました。CLT建築技術やモバイルオフグリッド技術※2を用いた安全・安心なまちづくりと災害時に利用する移動式応急仮設住宅※3の開発が目的です。
境町は移動式応急仮設住宅の可能性を追求し災害に強いまちづくりを目指します。住友林業は木造住宅で培った技術を用いてCLTを活用した移動式応急仮設住宅の開発を担当、協働プラットフォームは災害専門家としてモバイルオフグリッド技術や応急仮設住宅の仕様など防災・減災に関する専門的な知見を提供します。
本協定に基づき境町の公園内に住友林業が開発中の「CLT combo(仮称)※4」1棟を建設します。平常時はキャンプ場などの宿泊体験施設として利用、災害時には被災地へ移設し応急仮設住宅として活用可能な施設です。CLTを用いることで強固かつ容易に施工でき、木のぬくもりを感じられる応急仮設住宅を建設できます。国産材のCLT活用で新たな木材の需要創出にも貢献できます。
平常時は地域の社会資源として利用しながら、災害時には被災地の支援物資・インフラとして貸し出し、相互に支援する仕組みを「社会的備蓄」と呼びます。三者の本協定は機動性に富む移動式住宅で「社会的備蓄」を目指す試みです。
■施設概要
建築主 |
一般社団法人協働プラットフォーム |
建築地 |
茨城県猿島郡境町大字蛇池字西原706-1他41筆、大字長井戸字ビバ砂3-1他1筆 |
建築面積 |
35.76㎡ (10.8坪) |
延床面積 |
32.40㎡ (9.8坪) |
構造 |
CLTパネル造 |
用途 |
宿泊施設 |
設計 |
㈱梶浦暁建築設計事務所 |
施工 |
住友林業ホームエンジニアリング㈱ |
工期 |
着工 2020年8月17日 |
※1CLT…Cross Laminated Timber。直交集成板。板の層を各層で互いに直交するように積層接着した厚型パネル。
※2モバイルオフグリッド…災害時に電力やガス、上下水道等ライフラインが途絶した場合に、ライフラインに依存することなく、生活を継続する仕組み。太陽光発電、蓄電池を利用して、移動式住宅や車両へ電力などを供給する技術や、給水や排水が不要な循環式シャワーやバイオトイレなど。
※3移動式応急仮設住宅…住宅を解体せずにそのまま移設可能な応急仮設住宅(災害により居住可能な住居を失った被災者へ供与される住宅)。災害救助法に基づく応急仮設住宅の分類は1)建設型(プレハブや木造などにより現地で組み立てる方式)、2)借り上げ型(既存の住宅を公費で借り上げる方式。みなし仮設住宅とも呼ばれる。)、3)その他。移動式応急仮設住宅はその他に分類される。
※4CLT combo…CLTを構造材に用いたボックスユニットを、建築現場に運んで組み立てる木造建築物。
住友林業は移設・組み替え可能な木造建築物として「CLT combo(仮称)」を開発しています。現在、国内で多くの人工林が伐期を迎え、国産材の利用拡大、自給率向上への取り組みを急ぐ必要があります。本協定を通じ、近年注目を集めるCLTの新たな活用方法を創出します。地球温暖化の原因となるCO2を炭素として固定する木造建築物を、移設・組み換えしながら繰り返し長く利用することで地球環境にも配慮します。木の持つ癒し効果を活かし、平常時はキャンプ場等で非日常感を演出し、災害時には被災者のストレス軽減を担います。
当社はこれらの取り組みを通じ、地域活性化や防災・減災などの社会課題解決に貢献していきます。
≪参考資料≫
●ダウンロード資料
・組み立てタイムラプス動画 |
|
・完成予想パース |
https://sfc.kumoud.jp/index.php/s/eQUr21DGCPkOZON |
●境町のコメント
茨城県境町は利根川上流に位置し、利根川や渡良瀬川が氾濫した場合、町の約90%が浸水域となります。浸水人口は95%と想定されているので町外への広域避難が必要となります。このような地域の災害特性を踏まえ、2018年より一般社団法人協働プラットフォームと協働して、木造や鋼鉄製コンテナなど様々なタイプの移動式応急仮設住宅の研究開発とその社会的備蓄に取り組んで来ました。境町は国難級の災害に備え、日本初のCLT技術を用いた移動式応急仮設住宅の開発と社会的備蓄に取り組み、全国の自治体との相互支援のネットワークを広げていきたいと思います。
●一般社団法人協働プラットフォームのコメント
近年、地球温暖化に伴う気候変動により風水害や土砂災害が頻発化・激甚化しています。その結果、住宅など建物とライフラインの被害が重なり、劣悪な避難生活が長期化し健康被害や災害関連死のリスクが高まりつつあります。また、南海トラフ大地震や首都直下型大地震など国難級の巨大災害の被害も切迫しています。国の想定によると南海トラフ地震では最大約205万戸の応急仮設住宅が、首都直下型地震では約94万戸がそれぞれ必要と推計されています。民間賃貸住宅を借り上げる応急仮設住宅(通称、みなし仮設住宅)を利用しても、南海トラフ地震では約84万戸、首都直下型地震では9万戸の応急仮設住宅を建設する必要があります。
2011年の東日本大大震災では、新たに建設された応急仮設住宅は約4万9千戸でしたが、全ての仮設住宅の建設が完成するまで約8か月かかりました。南海トラフ地震や首都直下型地震ではそれ以上の長い建設期間を要することは明らかであり、超長期の避難所生活による深刻な健康被害が想定されます。
このように長期化する避難生活の健康リスクを軽減する重要な対策の一つとして移動式住宅を利用した応急仮設住宅の社会的備蓄を提案してきました。平常時は公園やキャンプ場などで合宿研修や体験交流の施設、ワーケーションやグランピング等のレジャー施設、地域食堂などコミュニティのハブ施設として利用し、災害時に災害救助法に基づく応急仮設住宅として被災地に移設する官民協働の取り組みです。
この移動式住宅は、現在進行中の新型コロナウィルス対策の施設として、例えば、テレワークやリモートワークを支えるシェアオフィスや、臨時発熱外来や経過観察施設、軽症者の仮設病室など感染症対策の支援施設としての利用も期待されます。
社会的備蓄を普及するためには、本設の恒久住宅と同等の耐震性等の安全性と断熱性等の住環境性能を有するとともに、解体せずに移設し早期に入居が可能となる迅速性と移動性、何十年にもわたり何度でも移設しながら長期間再利用できる経済性が求められます。CLTはこれらの要求に応える技術であるとともに、100%国産木材を利用することができ、森林保全や林業振興、土砂災害の防止など国土強靭化と地球環境の保護にも貢献できるものと期待しています。
一般社団法人協働プラットフォームは、今回の3者連携協定に基づき、これまでの被災地支援の現場ニーズを踏まえ、CLT技術を用いたモバイルオフグリッド住宅の開発と官民連携によるに応急仮設住宅の社会的備蓄の推進を加速させたいと思います。
以上
≪ニュースリリースに関するお問い合わせ先≫
住友林業株式会社 コーポレート・コミュニケーション部 河村・真鍋
TEL:03-3214-2270