水資源の有効利用

水資源の有効利用

事業活動における節水

世界では今、水不足に対する危機感が増しています。今後、人口増加や途上国の経済成長によって水需要が高まることにより、この問題はますます深刻化することが予想されます。

住友林業グループの主要事業は、木材建材流通事業、住宅事業などであり、水の使用量は少ないビジネスモデルです。しかしながら、水を重要な資源とする事業も展開しており、そうした事業を中心に、水使用量を削減し、リスクアセスメントの実施や問題が発生した場合の対応策の検討を行う方針としています。

事業における水使用への取り組み

住友林業グループでは、国内外の製造会社に加え、2012年度からは所有する建物など、水使用量の実数測定が可能な拠点で水の使用量や水源を把握しています。そして、2016年度のグループ会社全体の水使用量を分析し、連結売上高の7.2%にあたる8社のグループ会社で水使用量の 91.8%を占めていることがわかりました。そこで、この8社を水の重点管理会社と位置付け、まず、国内の5社で水使用に関するリスクアセスメントと水不足になった場合の具体的な対応策をまとめました。また、水使用量が多い海外 3社に関しても、水使用の実態把握を開始しました。

なお、2016年度から2018年度にかけて紋別バイオマス発電所、八戸バイオマス発電所の稼働により水の使用量が大幅に増加しました。バイオマス発電では、木材などのバイオマス燃料を燃焼させて水を沸騰、その水蒸気でタービンを回して発電するため、水使用量の増加につながっています。

中期経営計画サステナビリティ編ではグループ全体の水使用量を目標化し、進捗管理を行っています。2022年度、グループ全体の水使用量は2,937千m3でした。2021年度に対して79千m3の増加となりました。主な要因として、2021年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響によるロックダウンのため海外製造工場の停止期間により水の使用が抑えられたこと、そして2022年は通期で稼働したこと、インドネシアの子会社クタイ・ティンバー・インドネシア(KTI)にて地下水のパイプの破損があり、数日間にわたり大規模な漏洩が起きたことがあげられます。グループ全体の水使用量は2021年度に比べ増えましたが、住友林業クレストの伊万里⼯場における工業用水の循環利用の節水策の徹底及び廃液処理装置の更新により、安定した水消費量の削減につながっています。紋別バイオマス発電所においては、生産活動における水資源使用量の削減を活動目標に設定し、水使用量の把握・管理を強化しました。今後、2024年度目標数値2,777千m3以内を目指し取り組んでいきます。

また、住友林業では、サプライチェーンにおける水使用量を把握するため、2015年度に住宅施工現場で協力会社が使用する水使用量のサンプリング調査を実施し、施工時の水使用量は床面積1m2あたり約0.0887m3であることを把握しています。

水使用量の推移

過去4年間水使用量の推移

部門別水使用量推移

オフィス部門他
(単位:千m3)
国内工場・発電事業部門他
(単位:千m3)
海外工場
(単位:千m3)
合計
(単位:千m3)
2020
年度
2021
年度
2022
年度
2020
年度
2021
年度
2022
年度
2020
年度
2021
年度
2022
年度
2022
年度
上水 81 87 80 1,359 1,337 1,341 342 340 364 1,785
地下水 42 52 54 10 8 8 189 238 305 367
工業用水 120 113 124 419 431 416 288 253 246 786
合計 243 252 258 1,788 1,776 1,765 820 831 912 2,937

※ 対象は当社グループが所有する建物など、水使用量の把握が可能な拠点

住友林業クレストの取り組み

合成樹脂接着剤などを製造している住友林業クレストの伊万里工場では、工業用水を製造設備の冷却に使用したあと、工場排水の希釈に再利用するなどの節水施策に取り組んでいます。加えて、2018年度からは、廃水(凝縮沈殿処理済み水)をさらに生物処理することで、工場排水の水質管理に必要な希釈水を抑制するなど、新たな節水施策を開始しました。これら節水施策により、2022年度の工業用水使用量は 54,750m3となり、2018年度比63%削減できました。

生物処理設備(曝気ブロワー)

生物処理設備(曝気ブロワー)

生物処理設備(曝気槽)

生物処理設備(曝気槽)

排水のCOD測定

排水のCOD測定

住友林業クレスト伊万里工場の節水施策

廃水(凝縮沈殿処理済み水)をさらに生物処理※1することで、水質管理に必要な希釈水を抑制(約350 m3/日)する。
COD※2自動測定装置による水質管理を実施し、必要最低限の希釈水で排水処理を行う。
製造設備の冷却に使用したあとの水を工場排水の希釈に利用する。
雨水回収用ポンプの増強などで雨水の利用率を向上させる。

※1 好気性微生物に空気(酸素)を供給し、有機物を吸収・分解させることで、COD値を下げる

※2 化学的酸素要求量のこと。水中の被酸化性物質を酸化するために必要とする酸素量を示したもので、代表的な水質の指標の一つ

関連イニシアティブへの参画

2017年度より、住友林業グループは、「CDPウォーターセキュリティ」の質問書に回答し、より詳しい水関連リスクへの取り組み内容等を開示しています。