トップコミットメント

写真:脱炭素社会の構築に向け、今、動き出す 住友林業株式会社 代表取締役 社長 光吉 敏郎

不確実性の時代、事業を通じた社会課題解決へ

2020年は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに世界が揺れ、収束の兆しが見えぬまま終わった一年でした。変異株の出現もあり感染拡大は止まるところを知らず、実用化された治療薬が少ない中で、頼みのワクチン接種の進捗も国や地域により格差がでています。グローバル経済の発展と成長の一方で、深刻化してきた社会の格差拡大や自国優先主義の台頭など顕在化しつつあった不安材料をコロナ禍が一気に加速させた印象です。世界中で激甚化する森林火災や水害などには歯止めがかからず、日本国内でも熊本県を中心とする九州地方を襲った7月の豪雨により大きな被害がもたらされました。新型コロナへの対応とともに、規模、頻度において想定を上回る自然災害や、政治経済、社会環境の不確実性を「ニューノーマル」として受け入れていかなければならない時代にあると改めて認識しています。

しかし、心配事を書き連ねて始めるメッセージ発信の在り方は変えていきたいと考えています。企業は社会的責任を重く担う一方で、事業を通じて社会課題の解決に向け貢献できる面も多々あります。住友林業グループは、日本、インドネシア、ニュージーランド、パプアニューギニアでの約28万ヘクタールに及ぶ持続可能な森林経営をはじめ、再生可能な自然資源である木を活かした事業を行っています。国内外で木材・建材の製造・流通を担い、日本、米国、豪州で年間2万戸を超える木造住宅を供給。国内では、木質バイオマス発電事業や有料老人ホームの運営なども行っています。そうした生活に関するあらゆるサービスを提供するグループだからこそ、環境的価値、社会的価値からなる「公益的価値」を提供することで様々な社会課題解決に向けて貢献できると考えています。

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次期中期経営計画策定に向けマテリアリティを見直し

現在、2019年度から着手した「住友林業グループ中期経営計画2021」サステナビリティ編の振り返りと並行して、次期中期経営計画の策定に向けグループの重要課題見直しを行っています。2015年3月に現在の重要課題を策定して以降、パリ協定の締結・発効、SDGs(持続可能な開発目標)の採択と大きな変化がありました。国内でも、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によるPRI(国連責任投資原則)への署名を受け、ESG投資への流れが一挙に加速しています。そこで、地政学的変化、デジタル化など技術革新、社員やお客様などステークホルダーの嗜好変化などを分析するとともに、M&Aや資本業務提携などを通じ大きく成長した当社グループの持つ強みを踏まえ、当社ならではの貢献領域を改めて整理しています。社内外のステークホルダーへのアンケート、個別ヒアリングや取締役による議論を重ねながら決定していく計画ですが、それは即ち、私たちが暮らす地球環境の限界(プラネタリーバウンダリー)の枠内で企業経営の方向性を定めることだと考えています。

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脱炭素の社会に向けチャレンジ

昨年10月の菅政権によるカーボンニュートラル宣言も含め、現在、世界121ヵ国・地域がパリ協定と目標を同じくする2050年の脱炭素社会を宣言しています。当社グループは、自社事業のオペレーションにおいては、TCFDへの賛同、温室効果ガス長期削減目標SBTの設定、RE100宣言など、気候変動対策として取り組むべき課題について、中期経営計画サステナビリティ編で既に着手しています。しかし、2050年の脱炭素社会に向けた中間地点としての2030年の社会像をどう描き、経営の優先順位をどう考えるか。この4月には、米国バイデン大統領が呼びかけた気候変動サミットで自国の目標引き上げを発表、我が国も2030年までの削減目標を26%から46%に引き上げるとしました。各国もこれに続く流れで、次世代に解決を委ねるのではなく、今、動きだすことへのコミットが鮮明になってきたのです。森林によるCO2吸収・炭素固定の機能や木材製品・木造建築による炭素固定・CO2排出量削減、バイオマス発電用燃料の活用などに社会からの期待はますます高まっています。当社グループは川上の森林経営から川中の木材・建材の製造・流通、川下の木造建築や再生可能エネルギー事業を通じて再生可能な自然資本である森林資源を有効に活用し、「公益的価値」を提供することにより脱炭素社会の実現に貢献します。

例えば国連環境計画(UNEP)の年次報告によると※1、2060年までに世界の建築物は延べ床面積で二倍に増えると予測されています。人口増加以上に床面積の拡大傾向が顕著で、それらの多くは都市部においてこれから建設されるのです。現在、世界の温室効果ガス排出量の38%は建設部門からで、うち7割超は居住時のエネルギー利用からくる排出※2。とはいえ、居住時の省エネ技術や施策はかなり進展していますし、再生可能エネルギーの普及が進めば自ずとCO2排出量は下がります。そのときに大きな課題として残るのが、建設にかかる原材料調達から加工、輸送、建設、廃棄時に排出されるCO2「エンボディド・カーボン」です。欧州各国、米国では、すでにグリーンビルディングの建築基準や認証要件、政策インセンティブなどに取り入れられていますが、住友林業グループが事業を展開する日本や豪州などでは、エンボディド・カーボンの議論は端緒についたばかり。脱炭素社会の構築に向けた大きなうねりを創り出すため政策への提言も積極的に行っていきます。

※1 パリ協定が締結された2015年のCOP21で発足した「建物・建築におけるグローバル・アライアンス(GABC: Global Alliance for Buildings and Construction)」が、国連環境計画の調整のもと発行している建築部門の年次報告書2017年版に初出

※2 GABC発行「2020 Global Status Report for Buildings and Construction」より

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ダイバーシティとパートナーシップで創り上げる
レジリエントな組織

持続可能な森林経営を通じたCO2吸収、木材・木造建築の提供による炭素固定という自社事業における貢献にとどまらず、広くエンボディド・カーボンを削減し、サーキュラーバイオエコノミーを実現していくためには、サプライヤーや異業種との協業が必須になってきます。同質な集団ではなく、多様な背景や経験をもつ様々な社員、ビジネスパートナー、ステークホルダーと協力してこそ幅広く社会の変化に対応することができます。この3月には、資本業務提携している株式会社熊谷組との共同開発で、「環境と健康をともにかなえる建築」をキーコンセプトに中大規模木造建築ブランド「with TREE」を立ち上げました。資材調達から設計、建築、さらにはコンサルティングを通して環境的価値と利用者の健康を両立させる建築を提案していきます。

また、組織を取り巻く環境が大きく変わるとき、レジリエントな経営に最も重要となるのは「人」です。女性活躍推進宣言をはじめとするダイバーシティ経営、介護や育児に伴う多様な働き方や健康経営を見据えた長時間労働の是正を目指してきましたが、新型コロナウイルス感染症対策で「働き方改革」が一気に進みました。森林という再生可能な自然資本を事業のベースにしている当社グループにあって、サステナビリティへの取り組みはかねてより自明ではありましたが、現在の中期経営計画の基本方針の一つに「ESGへの取り組みの一体化推進」を掲げたことで、社内の本気度が一段あがっていると感じています。ガバナンス体制についても、社外取締役を3人に増やし、社外取締役及び女性取締役の比率はそれぞれ33%、22%にしています。

2050年に90億人を超えると予想される世界人口のウェルビーイングの基盤となる住宅の供給、雇用の創出、労働安全、ヘルスケアといった社会的価値、これに森林経営、木材・建材製品によるCO2の吸収・炭素固定による貢献という環境的価値も加えた「公益的価値」の創出を目指した事業展開を進めるにあたり、様々なステークホルダーが同じゴールをみていることが大事です。住友林業グループ社員が一丸となり、ビジネスパートナーや地域の皆様と共に共通のゴールを目指すことで変革のスピードを高め、より大きな効果を生み出していきます。

住友林業グループが約半世紀にわたって提供してきた戸建住宅は、もはやオフィスで業務をこなし帰宅後にくつろぐ場所「自宅」ではなくなりました。睡眠・通勤・勤務・家庭生活・余暇といった時間や在宅勤務・リモートワークと日常生活の空間は境目が曖昧になって、仕事とプライベートが細切れに混ざり合った生活スタイルが進んでいます。こうした社会変化を見据えながら、循環を通じた資源効率の最大化、脱炭素社会の構築を目指し、住宅・非住宅それぞれ最適の空間やコミュニティを提供してまいります。住友林業グループにご期待ください。

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