推定樹齢400年の福島県指定の天然記念物「泉の⼀葉マツ」の後継樹を育成
「泉の⼀葉マツ」は福島県指定の天然記念物で推定樹齢400年と⾔われ⻑年地元で愛されてきましたが、東⽇本⼤震災以後、松くい⾍被害※1によって樹勢が⼤きく衰えていました。南相⾺市が後継樹育成の可能性を模索する中、「奇跡の⼀本松」※2で増殖成功の実績があった住友林業に協⼒依頼があり、2013年より後継樹の育成に着⼿。松ぼっくりの内部にわずかに残った種⼦を採取することに成功し、2015年3⽉には発芽することができました。2018年末には成⻑した苗に「泉の⼀葉マツ」の特徴である⼀葉の出現が観察されたことから、後継樹を⾥帰りさせることとなりました。
※1 松くい虫被害とは、マツノザイセンチュウが松の体内に入り水分の通導を阻害し、松を枯らしてしまうこと。
※2 東日本大震災の津波に耐えた岩手県陸前高田市の「奇跡の一本松」。住友林業筑波研究所が震災直後から苗の育成に取り組み、10本の苗が育った。
泉の⼀葉マツ
クロマツの針葉は通常2本で1対となっていますが、このマツには1本だけのものが交じっており、学術的にも希少なことから、福島県の天然記念物に指定されました(1955年12⽉)。かつて武蔵坊弁慶がこの地で⻑者屋敷を焼き払った際、燃え盛る屋敷の様⼦をこのマツに腰かけて眺めていたという伝説があり、「弁慶の腰かけマツ」「弁慶松」の別名でも呼ばれています。
一葉マツの種子の収集と苗木の育成
採集した松ぼっくり
松ぼっくりを分解
集められた種
播種1年後の様⼦(2015年1⽉)
2年後の様⼦(2016年2⽉)
3年後の様⼦(2017年4⽉)
住友林業は、植林苗や歴史的に貴重な名⽊を増殖する技術として、接ぎ⽊や組織培養などのクローン増殖技術を開発しています。2000年に世界初の組織培養でのシダレザクラのクローン増殖を京都・醍醐寺の「太閤しだれ桜」の後継樹育成で成功して以来、⽂化的、科学的に価値が⾮常に⾼いと⾔われている名⽊の後継樹を育成し続け、全国の老木や文化継承に大きく寄与しています。