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樹木としてのチェリー
チェリーの属しているサクラ属は亜属や園芸品種が多く、多種多様な樹がこの中に含まれています。サクラ属の中でも美しい銘木として知られているのがブラックチェリーです。北米の北東部に生育し、特に米国ペンシルバニア州に広がる森林で多く見られます。幹がまっすぐ伸び、高さは15~30mほどにもなるので、森の中で堂々とした雰囲気を漂わせています。ブラックチェリーは、古くから高級家具の素材として利用されてきました。やさしい表情の木目を描き出し、その色合いは時間が経つにつれ、赤みを帯びて深く濃く変化していきます。木肌がなめらかで肌触りがよいというのも特徴です。また、加工性にも優れているので上質感のある内装の素材としても選ばれています。

※ブラックチェリーは主に北米の北東部に分布していますが、果実を採取するためにほかの地域で栽培されている場合があります。
部材としてのチェリー
チェリーは、淡く赤みを帯びた色合いややさしい光沢が魅力。
その光沢は、時を重ねるごとに濃く深まっていきます。
また、木肌のきめが細かく、なめらかなので心地よい肌触りです。

上質感のある華やかな赤褐色の色合いがチェリーの特徴。なめらかでやさしい木肌が放つ光沢は、見る角度や光の当たり方によって豊かに表情を変えます。時の流れとともに光沢は増し、その趣は多くの人々から愛されています。

チェリーの美しさをさらに引き立てる、オイル仕上げを施したフロア。落ち着きのある木目に沿って現れる濃色の模様はチェリーならではの味わいで、心地よいやすらぎを与えてくれます。

華やかさとナチュラル感を醸し出す風合いが魅力のフロア。木肌はきめ細かく、触れるととてもなめらかです。毎日の暮らしの中に癒しをつくり出し、居心地のよい空間を叶えます。
世界的な建築家レンゾ・ピアノが設計した
オーディトリアム音楽公園の
コンサートホール。
そして、北欧家具の名匠ハンス・J・ウェグナーがデザインした世界で最も美しいと
称される「ザ・チェア」。
チェリーが彩るものは、世界の巨匠が
手がける作品です。
オペラをはじめとする音楽の歴史が息づくローマに誕生した緑豊かなオーディトリアム音楽公園。主にオーケストラによるコンサートに使われるメインホールはヨーロッパ最大級の大きさを誇り、緻密に計算された設計によって優れた音響効果を生み出しています。このメインホールの内装に使われているのが、ヨーロッパでも銘木として名高いチェリーです。特に優美な曲面でデザインされた天井は、チェリーの落ち着きある木目と艶やかな光沢のある美しい色合いにより、ホール全体を華やかに彩っています。

オーディトリアム音楽公園 メインホール
レンゾ・ピアノ設計 撮影 Moreno Maggi
北欧スタイルの家具を代表する名匠ハンス・J・ウェグナー。彼がデザインする椅子は、フォルムの美しさで有名です。中でも特に名高いのが、その名もずばり「ザ・チェア」という作品。世界で最も美しい椅子と称され、背もたれからアームへつながる曲面の美しさが特に目を惹きます。ウェグナーの椅子というとフォルムの美しさばかりが評価されがちですが、じつは木が持つ本来の表情や性質を活かしてデザインされています。「ザ・チェア」の背には2カ所のつなぎ目があり、微妙に色合いが異なっているのが特徴です。そのつなぎ目は光を受けると2つの美しい光沢を放ち、艶やかな木肌のチェリーの魅力を感じることができます。

ハンス・J・ウェグナーの「ザ・チェア」
森の中で育つ樹木は、一本の木から製材しても木目や色合いなどが場所によって微妙に異なります。この微妙な違いこそが自然素材の魅力であると考えたウェグナーは、新しい椅子のアイデアが浮かぶと職人を訪ね、構造や材質、仕口(接合箇所)について綿密に打ち合わせを重ねました。木目と色合いに表情があり、木肌のきめが細かく、手触りのよいチェリー。そんな木の持つ個性を活かし、職人とともに生み出された一脚の椅子は、使うほどに風合いが生まれ、いっそう愛着が深まっていきます。

なめらかな木肌に描き出される落ち着きの
ある木目。その風合いが生み出すのは、
華やかでありながら、やすらぎを感じる
心地よい空間です。
木材としてだけではなく、人々の食料としても
親しまれてきたチェリー。
その語源や日本に伝わるまでの歴史など、
チェリーにまつわる雑学を紹介します。
チェリーは、日本語で「サクランボ」または「サクラの樹」のこと。チェリーが属するサクラ属の学名はPrunus(プルヌス)で、これはラテン語でスモモの樹という意味です。サクラというと日本では春に満開に咲き誇る桜の花をイメージしますが、実はスモモを基準種として属名が決められています。というのも、海外のサクラ属にはサクランボ、プラム、モモ、アンズ、ウメ、アーモンドなどの果樹が多く、どちらかというと果実のイメージのほうが強かったのかもしれません。

サクランボは歴史の古い果実で、原生種がイラン北部からヨーロッパ西部にかけて生育していました。紀元前の古代ギリシャでは、すでに栽培されていたという記録も残っています。その後、16世紀頃からヨーロッパで本格的に栽培されるようになりました。日本にサクランボが伝わったのは明治初期で、プロシア(現ドイツ)の貿易商人が北海道で栽培を始めたと言われています。日本に古くから伝わったものには、スモモ、ウメ、アンズなどがあります。