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樹木としてのオーク
オークはブナ科コナラ属の樹。北半球の亜熱帯から温帯にかけて幅広く分布し、その数は300~350種と言われています。樹種によっては高さが30m以上にもなるオークは、のびのびと枝が広がる樹形が美しく、秋にはドングリをたくさん実らせます。その威風堂々とした巨大な姿は、森の中でもひときわ目を惹きます。ヨーロッパ各地では古くから神聖な樹として崇められてきました。人類はオークから誕生したという神話もあるほど。特にイギリスでは、“The king of the forest(森の王)”と呼ばれ、オークにまつわるさまざまなことわざや言い伝えが残っています。良質な木材として使用されるのが北米産のホワイトオークです。

部材としてのオーク
オークは、ぬくもりを感じさせる落ち着きのある色合いが特徴。
木肌には豊かな風合いがあり、その木質感は時を重ねるごとにさらに深まっていきます。

重厚な木質感と自然素材の心地よさを感じる豊かな風合いがオークの魅力。木肌に現れる“虎斑”と呼ばれる木目は、光の当たり方で銀色に美しく輝きます。歳月を重ねるごとに深まる趣も魅力です。

木材の表面に凹凸をつける日本の伝統的ななぐり加工が、オークブラックの深い陰影と躍動感を一層引き出しています。また、立体的なテクスチャーはやさしさを感じさせ、現代においても上品な空間演出の方法として人気を集めています。

板目を活かすうづくり加工を施したフロア。オークの木目が浮き上がり強調されることで、ほかの床仕上げにはない独特の表情を醸し出します。
ヨーロッパでは古くから家具などに
重用され、世紀を超えて代々
受け継がれているオーク。
歳月を重ねるほどに深まる風格や味わいは、美しいホテルなどの中にも息づいています。
みなとみらいに位置するラグジュアリーライフスタイルホテル「ウェスティンホテル横浜」。そのモダンな客室の床や壁にはオーク材が使用されています。アースカラーのインテリアと調和し、くつろぎと静寂に満ちた特別な時間をつくり出しています。

ウェスティンホテル横浜
自然の心地よさを感じる風合いが、
オークの最たる魅力です。
“森の王”の名にふさわしく
落ち着いた雰囲気で空間を満たしながら
住まいに風格を漂わせます。
オークは種類も多く、特にヨーロッパの人々にとってはとても身近な存在です。
たくさんの異名を持つオークが存在したり、
生ハムづくりやコルクづくりに必要だったり、
ウイスキーを琥珀色にしたり。そんなオークにまつわる雑学をご紹介します。
オークの学名は、Quercus(クエルクス)。ラテン語で「美しい樹」という意味です。そのほかにも「良質な木材」という意味があります。オークは種類が多く、学名は樹種ごとにさらに細かく分類されています。オークは世界各地に生育していることもあり、樹種によっては正式な学名以外にもたくさんの異名を持つものが存在します。たとえば、コモンオークには142種もの異名があります。これは、ヨーロッパの20以上の国でこの木が生育しているためだと言われています。

スペインには「ハモンハブーゴ」という最上級の生ハムがあります。この生ハムづくりには、オークが欠かせません。「ハモンハブーゴ」を名乗るには、3つの厳しい条件があります。まず、スペインの特定の地域のみに生息するイベリコ種の黒豚であること、そしてハブーゴ地方でつくられること、さらにコルクオークやホームオークの実であるドングリを食べて育っていることです。つまり、ドングリがなければスペインを代表するおいしい生ハムは生まれないというわけです。

ワインの栓に使われるコルク。このコルクは、オークの樹皮からつくられています。どのオークの樹からでもつくられるというわけではなく、分厚い樹皮を持つコルクオークという樹種に限られます。コルクの歴史は古く、古代ローマ時代までさかのぼります。当時は、壺の栓として用いられていました。現在のように瓶の栓として利用されはじめたのは15~16世紀頃。ちなみにワインの栓は、型を使って樹皮から抜くという意外に単純な方法でつくられています。

蒸溜したばかりのウイスキーは無色透明です。あの美しく輝く琥珀色は、オークの樽で眠り続けることでついていきます。長期間にわたり、樽は静かに呼吸し、オークに含まれるポリフェノール類がウイスキーの中に溶け出していくのです。この成分が、ウイスキーを琥珀色に染めます。ポリフェノール類はウイスキーの香味にも大きく影響し、糖蜜香や穀物香、フルーツ香などが強まり、ウイスキーならではのまろやかで芳醇な香味の華を咲かせます。
