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樹木としてのチーク
チークは、東南アジアの熱帯地域やインドに分布しているクマツヅラ科に属しています。雨季と乾季がはっきりしているモンスーン気候の森で生育し、樹高は40mほどにもなり、直径2mを超える大木に育ちます。落葉広葉樹の仲間であるチークは、雨季に葉を繁らせ、乾季になると葉を落とします。厳しい環境の中で育つこともあり、その耐候性には驚くべきものがあります。ミャンマーには1752年に伐られたチークの原木が記念樹としてそのまま保存されており、260年以上の時を経た現在もほとんど風化していません。木材として加工されてもその特性は変わらず、優れた耐久性を発揮するチークは、まさに世界を代表する銘木と言えます。

※チークは、原産国以外でも生育に適した地域で植林されている場合があります。
部材としてのチーク
チークは、しっとりとした光沢を生み出し、時とともに風合いは深みを増していきます。
耐久性が高く、高温多湿に強い性質を持っています。
さらに、木の樹脂成分が虫や菌を寄せつけないため、耐腐朽性にも優れています。

重厚感がありながらやさしく輝く光沢がチークの特徴。“木の宝石”とも呼ばれる優美な風合いで空間を満たし、この木でしかつくることのできない上品な雰囲気を醸し出します。

世界三大銘木にふさわしい金褐色の色合いと木目が描き出す美しい表情が、艶やかな上質感を演出します。光沢としっとりとした質感は、良質な天然の油分を多く含むチークならではのものです。

うづくり加工を施したチーク材は、木肌に描き出される木目が強調されています。その木目は、時の流れとともに色合いが深くなることで濃淡の差が弱くなり、落ち着きのある表情になっていきます。
最高級ホテル、タイの宮殿、そしてクイーンエリザベスⅡ世号や飛鳥Ⅱなどの豪華客船。
優美な光沢で人々を魅了してきたチークは、気品あふれる趣にふさわしい逸話に
彩られています。
歴史ある箱根のリゾートホテル「富士屋ホテル」。タイの国王と王妃が滞在するなど、かつては海外からの宿泊客が多く利用していました。その「メインダイニングルーム・ザ・フジヤ」の壁を彩っているのが、美しいチークです。空間に気品を漂わせ、特別なひとときを演出しています。また、タイにある世界を代表する豪華ホテルとして有名な「マンダリン・オリエンタル・バンコク」。このホテルの内装や家具にもチークがふんだんに使われ、ホテル内は優雅な雰囲気につつまれています。

富士屋ホテル
チークの原産国のひとつであるタイ。かつてこの国の王だったラマ5世は、ビクトリア調の豪華な「ウィマンメーク宮殿」を建てました。総チーク造りの3層建築で、チークによる建築物としては世界最大を誇ります。かつて王が暮らした宮殿は、チークが醸し出す優雅な気品にあふれていました。フランスのベルサイユ宮殿にもチーク製の家具が置かれるなど、王宮を飾るのにふさわしい素材として使われるのがチークです。

ウィマンメーク宮殿 写真提供:タイ国政府観光庁
チークは良質な油分である木製タールを含んでおり、耐水性に優れ、鉄の腐食も防ぎます。そのため、世界に名立たる船舶に使用されてきました。1869年に進水した「カティーサーク号」。この優美な帆船に使用されていたのがチークでした。その100年後の1969年に就航した豪華客船「クイーンエリザベスⅡ世号」のデッキと客室の内装を彩る素材として選ばれたのもチークでした。日本が誇る豪華客船「飛鳥Ⅱ」のデッキにも使われています。耐水性に優れていることはもちろん、チークはその美しさで高級船舶や豪華客船を彩っています。

「飛鳥Ⅱ」イメージ写真 提供:郵船クルーズ
優美な光沢に、落ち着きのある木目、
豊かな風合い。
それらが、重厚感がありながらも
気品あふれる上質な空間を演出します。
チークの価値が世界的に知れ渡ったのは
約100年前。
古くから寺院や船の甲板など、
あらゆる用途で使われてきました。
世界三大銘木であるチークの歴史や
特徴についてご紹介します。
チークが自生するインドやタイ、ミャンマーでは、古くから寺院などの建物にチークが使用されていました。インドでは、約2000年以上も前から使われていたと言われています。いまでも1000年以上前に建てられた寺院などでチーク材を見ることができます。タイやミャンマーでは、建築物だけでなく、家具や客車、桟橋、彫刻の素材にも使われるなど、その用途はじつにさまざまです。

タイやミャンマーで本格的に林業が営まれるようになったのは、いまから百数十年前のことでした。イギリスの木材会社がチークの耐水性と耐久性に着目して造船材として使用するようになってから、チークは銘木として世界的にその価値が認められるようになりました。19世紀から20世紀初頭にかけてインドのカルカッタで造られたイギリスの商船はすべてミャンマー産のチークが使用されていたと言われています。

チークの葉は樹齢に関係なく、とても大きな卵形をしています。長さは約30~60cm、幅は約25~35cmにもなります。初めて見ると少しびっくりするかもしれません。葉の表面はざらざらしており、まるでサンドペーパーのような感触です。大きな葉とは対照的に、花は小さいのが特徴。雨季がはじまる頃に枝先から房のように黄色がかった白色の小さな花をたくさん咲かせます。開花時には樹全体が白く覆われ、チーク林が広がっている地域を上空から見ると一面が白く見えるほどです。
参考文献:「東南アジア林産物20の謎」
渡辺弘之著(築地書館)

チーク材には天然の油分(タール状の成分)が含まれているという特徴があります。これが水分や湿気を弾く“防護膜”的な役割を果たしており、塗装を施さずとも、高い耐水性・耐朽性を発揮します。そのため、かつては船の甲板や内装など、水にさらされる過酷な環境でも使われてきました。
