トップメッセージ

住友林業グループのバリューチェーン

「ウッドサイクル」を回し森と木の価値を最大化
脱炭素社会への貢献を通じた持続的な成長を
目指します

2030年に向けた長期ビジョンの足場固めとなる中期経営計画。2年目となった2023年は期初の計画を上回る業績を達成しました。国内外で大きな転換点を迎えている今だからこそ、揺るぎのない住友の事業精神のもと、グループ一丸となってさらなる成長を追求していきます。

2023年の振り返り

 住友林業グループとしてのあるべき姿を長期的な事業構想に落とし込んだ長期ビジョン「Mission TREEING 2030」と、その足場固めの3年間として位置づけた中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase 1」(2022年~2024年)を発表後、早くも2年が経過しました。中期経営計画2年目となる2023年の業績は、期初計画を上回る売上高1兆7,332億円(期初計画差+1,352億円)、経常利益1,594億円(同+394億円)、当期純利益1,025億円(同+255億円)となりました。

当社の主力市場となった米国住宅市場は、2023年はコロナ禍以降の住宅販売価格の高騰に加えて、住宅ローン金利の上昇を背景にアフォーダビリティが大きく低下しました。一方で、戸建住宅販売の9割を占めてきた中古住宅の流通在庫は、リーマンショック前で400万戸、コロナ禍前は200万戸ありましたが、住宅ローン金利高騰の影響で100万戸程度という低水準の状態に陥り、新築住宅が住宅需要を賄うかたちになりました。

 当社では、顧客が支払う住宅ローン金利の最初の数年分をビルダーが一部負担する、レートバイダウンと呼ばれるインセンティブを効果的に駆使することで、期初想定を大幅に上回る結果につながりました。Z世代やミレニアル世代を中心とした住宅購買層の需要に対し400~600万戸とも言われる慢性的な住宅不足が今後も続く見通しの中、サンベルトエリアと呼ばれる成長市場を中心に持続的な成長が期待できます。

■ 中期経営計画の達成に向けて

 現行の中期経営計画の最終年となる2024年は、米国戸建住宅事業が伸長する見通しであり、経常利益は1,730億円と計画策定時の目標を達成する見込みです。日本以外の主要先進国では、インフレ抑制のため金利高の状況が続き、資材コストや労務費の上昇なども加わり、中期経営計画策定時点に比較して事業環境は厳しさを増していますが、業績目標達成に向けて順調に推移していることは、これまで私たちが取り組んできた戦略・施策の成果だと考えています。

 財務指標のKPIとして、ROE15%以上、自己資本比率40%以上、ネットD/Eレシオ0.7以下を掲げています。ROEについては、円安進行により為替換算調整勘定が増加し純資産が膨らんでいることもあり、達成に向けたハードルはやや高い状況にありますが、自己資本比率とネットD/Eレシオは現時点でおおむね達成できると見ています。

 次期中期経営計画においても、長期ビジョン「Mission TREEING 2030」の達成に向けて、強固な財務基盤を維持しながら、引き続き米国、豪州、東南アジアなど成長市場での事業拡大と国内事業の競争力強化を図るため「森林」「木材」「建築」の分野を中心に積極的な成長投資を継続すると同時に適切な株主還元策を進め企業価値の最大化に努めます。

Mission TREEING 2030

世界の住宅市場でポテンシャルが最も高い米国を中心にさらなる拡大を目指していく

 長期ビジョンで掲げる2030年の年間販売戸数、米国23,000戸、豪州5,500戸の達成を目指し、オーガニックグロースを基本に、優良な案件があればM&Aも引き続き検討していきます。2023年1月には戸建着工許可件数全米2位のフロリダ州で、主に戸建賃貸住宅の建築販売や宅地開発などを行うSouthern Impression Homes社をグループに迎え、未進出であったフロリダに拠点を確立することができました。その後、既存住宅グループ会社である、Brightland Homes社、DRB社がフロリダ州にそれぞれ支店を開設し、戸建分譲住宅事業でも進出を果たしています。さらに、2024年3月には同州でNo.1の宅地開発デベロッパーであるMetro Development Groupと良好な関係を構築しており、潤沢な宅地パイプラインを保有しているBiscayne Homes社の事業を譲受しました。2030年にフロリダ州で年間販売戸数5,000戸を目指していますが、同州の住宅市場のポテンシャルと当社グループの継続的かつ積極的な事業展開を見据えると、2030年を待たずに販売目標を達成する可能性も十分にあると見ています。

 米国の不動産開発市場については、コロナ禍以降、商業・オフィス物件の需要が低迷しており、本格的な回復にはキャピタルマーケットの改善や需給の調整に時間が必要と見ていますが、戸建住宅の不足とアフォーダビリティの低下を背景とした集合賃貸住宅の需要は底堅く推移するものと思われます。当社は2023年11月に、テキサス州とカリフォルニア州を拠点に集合賃貸住宅を開発・建築するJPI社を買収しました。これによりCrescent社とあわせた米国での集合住宅着工戸数は年間8,000戸を超える規模となり、次期中期経営計画中には、毎年10,000戸を超える集合賃貸住宅の供給体制が整い、戸建住宅事業に次ぐ柱となる見込みです。

 新規エリア進出や事業用地の積極的取得を進める上では、全体のガバナンス体制整備と個社のマネジメント力の向上が必要です。加えて、資材共同購買やシステム統合などによる合理化・生産性向上を進め、大手上場ビルダーをしのぐ強靭な収益体制を築き、市況変動に耐性のある事業モデルの構築を加速させていきます。その一例としてFITP※2事業の拡大があります。トラスや床・壁パネルなどの構造部材の製造から施工までをカバーするFITP事業による工期短縮とコストダウンを推進し、戸建住宅と集合住宅の強固な収益基盤の構築を進めます。労働者不足対策やサプライチェーンの安定化につながるFITP 事業は、年間23,000戸の販売体制の構築に寄与します。2023年12月末時点で東海岸メリーランド州やテキサス州などで5つの工場がすでに稼働しており、2024年5月にはノースカロライナ州で新たな工場が稼働しました。今後も事業エリアを広げていきます。 2 Fully Integrated Turn key Provider

■ 国内住宅事業の構造改革、危機感をもって対応

 日本の2023年の新設住宅着工戸数は約81万9,000戸と4年連続で90万戸を下回り、持家の着工戸数も前年割れが続きました。また、木材価格はコロナ禍前の水準に戻りましたが、エネルギーコストの上昇により木材以外の建築資材価格は高騰し、慢性的な人手不足と相まって厳しい事業環境が続きました。そのような中、当社の戸建注文住宅は、2021年以降、段階的に実施してきた見積価格の見直し効果もあり、2023年の住宅セグメント単体の売上総利益率は前期比+4.2ポイントの23.4%と大幅に改善しました。住宅セグメント全体の経常利益は、分譲住宅事業や不動産仲介、賃貸管理、緑化事業の貢献もあり過去最高の328億円となり、厳しい状況下においても一定の成果を出すことができました。

 当社の住宅事業の強みの一つは、高い耐震性や環境性能を備えた高品質なビッグフレーム(BF)構法をベースに、お客様のご要望にお応えできる木質感あふれる本格的な注文設計による住宅をお届けできることです。住友林業の家づくりは、木材をはじめとした資材の調達から営業、設計、施工、アフターメンテナンスと、多くの社員と協力施工店体制に支えられています。日本の新設住宅着工戸数は、現状の80万戸台から2040年に向けて60万戸台に減少すると見られています。当社の強みにさらに磨きをかけることで、注文住宅、賃貸住宅、分譲住宅あわせて年間約10,000棟の安定供給体制を確固たるものとし、国内住宅市場のシェアを高めていく方針です。当社の戸建注文住宅の2023年の市場シェアは3.69%まで上昇し、現行の中期経営計画がスタートする前の2020年(2.92%)から大きく上昇しました。

 日本の建設業界では、職人の高齢化や現場を支える施工業者の後継者問題などを背景に人手不足が深刻化しています。人手不足による労務費の高騰や資材コストのさらなる上昇も想定され、事業を取り巻く環境は大きく変化しています。当社においても、人財育成や施工体制の整備や合理化は、今まで以上にスピード感をもって対応していく必要があり、DXやAI技術も駆使しながら収益性の改善に努めます。

 具体的には、2023年にイノベーション推進部を新設し、注文住宅事業における受注から設計・施工までの業務フローの棚卸を行い、徹底的な収益構造の分析、競合他社との比較を行っています。そこから見えてきた課題の解決に向けて業務プロセスを見直し、従来の枠にとらわれない抜本的なビジネスモデルの改革に着手していきます。そして商品・仕様の見直しをはじめ、お客様満足度向上につながるプラスアルファの付加価値提案、社員や現場の職方の働き方改革につながる施工の合理化や生産性向上など、既成概念にとらわれない「事業の構造改革」すなわち「事業のバリューエンジニアリング」を実行していきます。新たな成長分野という点では、非住宅の木造建築への取り組みも欠かせません。国内の住宅市場の木造化率はすでに80%程度ありますが、学校やオフィスなど非住宅市場の木造化率は依然として10%弱に留まっており、政府による木造化の後押しもあることから、今後のポテンシャルが高い市場と捉えています。

 当社の戸建住宅には独自のBF構法という大きな武器があります。合理化された構造計算により強い耐震性能を担保できることに加えて、構造躯体を中心に資材調達から加工までのサプライチェーン全体がすでに構築されており、全国での施工体制も整備されていることから最も競争力のある構法といえます。非住宅分野における木造化の推進には、BF構法による展開が鍵を握っており、その体制整備を進めています。2024年5月には同構法を採用した木造の事業用建築ブランド「The Forest Barque(ザ・フォレストバーク)」を発売し、着実に前進しています。BF構法は、木造建築に実績のあるデベロッパーやゼネコン業界が持ち合わせていない当社独自の強みです。BF構法が持つ効率的な設計・生産システムとサプライチェーンを活用し、ZEHマンション型賃貸住宅や非住宅物件への展開を加速するためタスクフォースチームを組成して4階建て3,000m2の規模の建築を可能とする技術開発を着実に推進していきます。

 長期ビジョンの実現に向けて、主力の注文住宅事業における年間着工棟数8,000棟の維持と、収益力回復はもとより、大きな成長余地がある賃貸住宅、非住宅建築、分譲住宅、リフォーム、不動産仲介・管理、環境緑化などの事業拡大を図る明確な成長戦略を実行していきます。そして2030年における住宅事業全体の経常利益は、現状の300億円程度から倍増となる600億円の達成を目指せると考えています。株主や投資家との対話の中で、当社グループ内で相対的に収益性が高い海外での事業に経営資源を集中してはどうかとの意見をいただくことがありますが、国内の木造建築市場は建設業界の脱炭素化の流れもあり、非住宅物件を中心に市場が拡大していくと見ており、資源環境事業や木材建材事業とあわせて、今後のグループ全体の成長に欠かせない事業の一つだと捉えています。

「ウッドサイクル」の進化、脱炭素事業の加速

 長期ビジョンでは、当社の事業活動を通じて「地球環境」「人と社会」「市場経済」の3つの価値を同時に高めることを目指しており、事業方針の一つに「森と木の価値を最大限に活かした脱炭素化とサーキュラーバイオエコノミーの確立」を掲げています。

 木には吸収したCO₂を炭素として内部に貯蔵する「炭素固定」という重要な機能が備わっており、伐採した木を木造建築や家具などの木材製品として長期にわたり使い続けることで吸収したCO₂を長期間、大気に排出せずに済みます。当社グループは、森林経営から木材流通・木造建築・バイオマス発電まで「木」を軸にした事業活動を展開しており、事業そのものが脱炭素社会への貢献につながる非常に稀有な企業です。当社のユニークなバリューチェーン「ウッドサイクル」の「森林」「木材」「建築」の各分野における事業を一層進めていくことで、自社のみならず、社会全体のCO₂吸収・固定に寄与していきます。

 2023年の進捗は、まず「森林」分野では、同年6月に北米や中米の森林資産をターゲットとした森林ファンド「Eastwood Climate Smart Forestry Fund I」を組成しました。当社を含む日系企業10社が出資し、資産規模は約600億円で運用期間は15年の計画です。組成後の森林アセットの取得も順調に進んでおり、これまでに計112,580エーカー(約45,600ヘクタール)の森林資産を取得済です。2030年までに保有・管理森林面積を50万ヘクタールまで拡大することを目指しており、日本および東南アジア、南米、オセアニアなどでの2号ファンドの組成にも取り組んでいます。ファンドの仕組みを活用することで個々では実現できない面積・資金規模で森林を適切に管理し、グローバルな気候変動対策を実践します。また、森林ファンドを通じて森林のCO2吸収能力を高め、質の高いカーボンクレジットの創出・還元で脱炭素社会の実現に貢献し、生物多様性の維持や水資源の保全といった自然資本としての森林の価値を高めていきます。

 「木材」分野では、木材の炭素固定機能や多様な価値を社会に訴求し、木材利用の拡大を図っています。特に戦後植林した森林が伐採時期を迎えた国産材の活用は急務であり、木材コンビナート設立により国産材丸太の活用拡大と製品の安定供給を図る取り組みを進めています。2023年11月に福島県いわき市において、恒栄資材、和田木材と当社の3社で国産のスギを中心に製材や木材加工品を製造する(株)木環の杜を設立しました。2026年3月に新設工場の稼働を目指しています。川上の森林所有者や素材生産会社から原木が供給され、川中の製材工場、プレカット工場および川下の住宅メーカーまで製材品、木材加工品を流通させるサプライチェーンを地域のステークホルダーと協業で強化し、木材市場の活性化に貢献していきます。

 「建築」分野では、国内外で中大規模木造建築のプロジェクトが進行しています。世界のCO₂排出量のうち、建設セクターからの排出が4割近くを占めていますが、木造建築は、RCや鉄骨造に比べ建築資材の原材料調達から加工、輸送、建築、廃棄時のCO₂排出である「エンボディドカーボン」削減に大きく貢献することができ、当社の事業機会としても非常に伸びしろがある分野です。昨年の具体的建築事例としては、海外では2023年10月に豪州メルボルンで15階建て一部RC造の木造オフィスビルが竣工しました。2024年は米国、英国でもそれぞれ木造オフィスビルが竣工予定です。国内では、熊谷組をはじめとするゼネコンとの木材ハイブリット建築の協業加速に加えて、不動産開発案件を通じた宿泊施設などの木造建築を推進しています。

 国内外において「森林」「木材」「建築」分野で「ウッドサイクル」を回す取り組みについては、さまざまなステークホルダーから高い関心と今後への期待を寄せていただいています。同時に、脱炭素社会への貢献をより具体的に示してほしいというご要望もいただいています。これまで、木を伐採して再植林し、さらに木材を活用することで社会全体の炭素固定量が増え脱炭素に貢献できることを、日本のスギをモデルに示してきました。2025年から始まる次期中期経営計画では、具体的に当社が所有・管理する国内外の森林や木材製品の製造、木造建築の普及におけるモデルを示していきたいと考えています。その上で、森林ファンドや木材コンビナート、中大規模木造建築など、具体的な事業における脱炭素化への貢献を定量化し、当社事業の推進が「地球環境への価値」「人と社会への価値」「市場経済への価値」を創出していることを提示したいと考えています。


住友林業の人的資本経営

 当社の事業は「住友の事業精神」にある「信用を重んじ、確実を旨とする」という取り組みを自ら実践する社員に支えられています。これは日本国内の社員に限らず、海外の事業会社のパートナーや社員も同じ価値観を共有しています。いかなる時も真摯な姿勢で仕事に打ち込むことができる社員が多くいることは、当社グループがこれからも長きにわたり成長していく上で欠かせない強みの一つです。

 長期ビジョンで掲げる「森林」「木材」「建築」の各分野における取り組みは、既存の事業セグメント間を横断するものも多く、これまでの枠組みや考え方にとらわれないアイデアや行動にもとづくイノベーションが必要です。誠実さに加えて、自己研鑽に励み、目標達成にこだわる姿勢やチャレンジ精神を備え、既存事業の変革を進め、新規ビジネスを「形にするちから」を持てる人財を継続的に育成していくことが、未来を見据えた上での課題でもあります。

 このような背景のもと、当社グループは「事業の変革と創造を担う人財の確保・育成」「社員のパフォーマンスを最大化する仕組みと自由闊達な企業風土」「健康経営の推進」を3つの柱とする人財戦略を定めました。同時に、2024年から優秀な人財を早期に抜擢できるようにするなど、組織の総合力を最大限に発揮することを目指した新人事・評価制度も導入しました。

 かつての組織は、一人のリーダーの掛け声の下で全員が一丸となって進むことが、効率的にも良しとされていましたが、現在のように多様な価値観が混在し、正解が分からない時代においては、私は、全体としては同じ方向性を持ちながらも、日々の動きの中で一人ひとりが判断し行動できる組織を作っていくことも非常に大切だと考えています。

 当社は2024年4月にDEI( ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)の意義を明確化した「住友林業グループDEI宣言」を制定しました。当社はすでに行動指針において多様性の尊重や新たな視点による仕事の創造などを掲げていますが、DEI宣言を制定することで、社員一人ひとりが自分事として「あらゆる人が尊重され、公平な環境のもと、組織社会において受け入れられている」職場環境を整えていくことができる集団を目指していきたいと思います。

 人財戦略の制定、新人事評価制度の導入、そしてDEI宣言といった当社ならではの人的資本経営を推し進めることで、住友林業グループ全体の経営基盤を一層強固なものにし、持続的成長を図っていきます。


ステークホルダーとの対話を通じた企業価値向上

 当社は2023年第2四半期決算資料において「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を取りまとめ、開示しました。開示後は、株主や投資家からの反響も多く、資本コストや資本政策に関する対話が増えたことに加えて、2024年2月には東京証券取引所が、投資家が評価するPBR 向上の取り組みの好事例の一つとして当社を取り上げたこともあり、新規の投資家からIRミーティングの申し込みが入るケースも出てきています。

 私は、企業価値向上には株主や投資家をはじめとしたさまざまなステークホルダーとの対話が必要不可欠だと考えており、社長就任以降、IR 活動も積極的に進めてきました。就任当時は海外投資家とのIRミーティングでは通訳者を介して対話していましたが、海外駐在を含むそれまでの長い仕事上の経験を通して自らの言葉で直接対話することの大切さを身をもって実感してきたこともあり、全て英語での対話に切り替えました。投資家との信頼関係も構築でき、幸いにもIRミーティング後に当社株式を取得していただくケースも出てくるようになりました。

 PBRも2023年の初めは0.7倍程度でしたが、足元では1.0倍を超える水準が続き、2024年5月には1.5倍まで上昇しました。将来の持続的な成長シナリオと実績を示すことで、当社のPBRは現状水準を超えて、さらなる高みを目指していけるポテンシャルが十分にあると見ています。力強い成長が期待できる米国や豪州、ASEAN 市場をはじめとした海外事業で利益を安定的に創出し続けること、また国内事業の競争力を高め、収益性を改善しながら、脱炭素社会への貢献を具現化していくことは、企業としての責任として認識しております。そして、それらを裏付ける財務資本戦略を明瞭に示し、株主・投資家からもご意見をいただいている株主還元方針についてはより分かりやすい内容にしていくこと、これらが我々に求められていることだと考えています。今後ともステークホルダーの皆様と企業価値向上に向けて歩みをともにしていければと思います。

揺るぎのない「住友の事業精神」。ブレずに成長を追求

 長きに及んだ新型コロナウイルス感染症の脅威が去った一方で、世界情勢に目を向けると、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は泥沼化し、ハマス・イスラエル紛争の長期化、台湾海峡の緊張など、世界の地政学的リスクが高まっています。主要先進国で長期化していたインフレ鎮静化のための金融引き締めは、利下げをうかがう動きに変わり、日本においては日銀のマイナス金利政策が解除されるなど、大きな転換点を迎えています。

 当社は1691年の創業以来、「自利利他公私一如」の考えのもとで、自社のみならず社会全体への価値提供を目指してきました。このような変化の激しい時代だからこそ、公正、信用を重んじ、確実を旨とし浮利に趨はしらず、という「住友の事業精神」を軸に、さらなる成長を追求していくことが重要だと改めて認識しています。住友林業グループは社員一丸となり、「Mission TREEING 2030」達成に向け積極的にDX、SX(サステナビリティトランスフォーメーション)を推し進め、国内外の多くのビジネスパートナー、ステークホルダーとともに、持続可能で豊かな社会づくりに貢献してまいります。

代表取締役 社長

代表取締役 社長

光吉 敏郎