トップメッセージ

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木の価値を、未来の価値へ

森林を育て、木を活かし、建築として長く使い、エネルギーとして活用し、再び森林へつなぐ。
住友林業グループは、この循環を「ウッドサイクル」として事業の基盤に据え、
環境価値と経済価値を両立しながら持続可能な社会と企業価値の向上を目指します。

中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase 2」
1年目の振り返りと経営の課題認識

 世界の政治・経済情勢は不確実性を増し、金利やインフレ動向、地政学的リスクなど、企業経営を取り巻く環境はこれまで以上に複雑になっています。住宅・建設市場においても、金融環境の変化や資材価格の高騰、労働力不足などを背景に、先行きの不透明な状況が続いています。さらに、地域ごとに市場環境や需要構造が大きく異なるため、グローバルに事業を展開する企業には、各地域の状況を的確に見極めながら柔軟な経営判断を行うことが求められています。加えて、脱炭素やESGを巡る潮流も、各国の政策や社会情勢の影響を受けながら揺れ動いており、企業にとって長期視点での意思決定は一層難しい局面を迎えています。
 こうした事業環境のもと、中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase 2」の初年度である2025年12月期は、住友林業グループにとっても難しい舵取りを求められた1年となりました。国内住宅事業や2024年11月に買収したMetricon社の業績が寄与した豪州住宅事業が堅調に推移し、連結売上高が前年を上回った一方で、当社業績の大きな柱である米国住宅事業での市場低迷が続いたことから、利益面では前年を下回る結果となりました。
 脱炭素社会の実現に向けた国内外での取り組みや、M&A、新規プロジェクトを通じたグローバル展開は着実に進展しましたが、一部の業績不振事業の収益性改善やAI活用のためのデータ基盤の構築、グローバル人財の確保など、「稼ぐ力の向上」や「経営基盤の強化」といった面では引き続き課題が残されています。

 当社グループは、これまで短期的な市場環境の変化に左右されるのではなく、長期的な視点で企業価値の向上につながる事業基盤の構築に努めてきました。森林から木材、建築、エネルギーへと広がるバリューチェーンである「ウッドサイクル」を通じて社会に価値を提供するという考え方は、当社グループの経営の根幹を成すものであり、森林資源の循環利用や木材利用の拡大など、時間をかけて価値を創出していく当社の事業にとって、長期視点に立った経営判断は不可欠なものとなっています。
 私は、厳しい環境こそが、ビジネスモデルの原点に立ち返り次の成長に向けた改革を進める、絶好の機会になると考えています。不確実性が高い時代だからこそ、短期的な市場動向に対応しながらも、長期的な価値創造の視点に立った経営判断が求められます。次の飛躍に向けた改革を実行し、長期ビジョン「Mission TREEING 2030」の実現に向けた道筋を確かなものにしてまいります。

グローバル展開の深化

光吉社長

 日本では今後も人口の減少が続きますが、世界には先進国・新興国を問わず人口増加と経済成長を続ける国々が多く存在します。成長市場の住宅需要を着実に取り込み、森林資源の確保や木材・建材の需要創出、木造建築の普及を図るには、当社のバリューチェーン「ウッドサイクル」を軸としたグローバル展開の深化は不可欠です。当社グループは、短期的な需給のサイクルを超えた中長期的な企業価値向上の視点に立ち、高成長が期待できる世界の市場で積極的な投資を進めています。
 当社グループの成長をけん引する中核事業に成長した米国戸建住宅事業では、M&Aによるエリア拡大とグループビルダー5社を通じた事業基盤の拡充により、合計供給戸数は全米第11位相当※1の規模に達しました。この事業基盤をさらに拡大するための重要なステップとして、2026年2月に米国の上場ホームビルダーであるTri Pointe Homes社の買収契約を締結しました。同社は全米13州で事業を展開し、2025年には約5,000戸の住宅を供給しており、特に、全米第3位の住宅市場であり当社グループが未進出のカリフォルニア州で強固な基盤を築いています。またデザイン性や品質、顧客ニーズに応える商品開発力に基づく、高付加価値戦略を強みとしています。

 Tri Pointe Homes社のグループ入りは、これまでグループビルダーとともに築き上げてきた米国におけるプレゼンスを確固たるものとした上で、新たな成長ステージへと押し上げるものとなります。買収完了後には、当社グループは全米第5位相当※2のホームビルダーグループとなり、長期ビジョン「Mission TREEING 2030」で掲げる2030年の米国での年間住宅供給戸数23,000戸の実現に向けた確かな道筋が見えてきます。
 また、米国と並ぶ成長のドライバーである豪州においては、2024年11月にMetricon社を買収したことで、当社グループは豪州最大のホームビルダーグループとなりました。豪州も米国と同様に、住宅購買層の人口増加が見込まれ、木造戸建住宅を中心に成長が期待できる市場です。今後もグループシナジーの創出により、規模拡大と収益性向上の両立を目指します。

1 BUILDER「2026 The Top 100」に基づく米国戸建住宅引渡戸数ランキング(2025年度)より。 2 買収後のプロフォーマランキング。


経営基盤の強化

 環境変化に対応しながら持続的な成長を実現するためには、事業の変革と創造を担う人財の育成と組織体制の確立が重要です。その取り組みの一つが、従来、複数の事業本部に分かれていた不動産関連事業を集約した「不動産事業本部」の新設です。当社が目指すのは、国内外で培ってきた開発ノウハウと木構造技術を活かした「ものづくり」を基盤とする不動産開発事業です。事業間の連携を強化することで、開発ノウハウの蓄積とプロフェッショナル人財の育成を進めます。

 また、事業のグローバル展開を支える人財基盤の強化にも取り組んでいます。語学や専門資格取得の支援などを通じて世界で活躍できる人財の育成を進めるとともに、財務・法務・ITなどの専門人財を各地域に配置し、グローバルガバナンスの強化を図っています。こうした取り組みを通じて、事業の持続的成長を支える経営基盤を着実に強化していきます。

「稼ぐ力」の向上

 価値創造を実現していく上で、当社があらためて取り組んでいるのが「稼ぐ力」の強化です。中長期的に企業価値を向上させていくためには、事業規模の拡大と同時に、安定的に資本コストを上回る利益を創出する必要がありますが、現時点においては、事業ごとの収益性や資本効率には改善の余地があると認識しています。

 ここ数年、業績の低迷が続く木材建材事業では、国内新設住宅着工戸数に依存しないビジネスモデルへと転換し、「稼ぐ力」を向上することが急務となっています。2025年8月には建材の流通大手であるジオリーブグループとの資本業務提携契約を締結しました。商社と問屋という業態の垣根を超えて協業し、物流、加工、施工などの機能を組み合わせた建材流通のプラットフォーム構築を進めることで、新設住宅市場に限らず、リフォームをはじめとしたストック市場や非住宅木造建築市場における効率的なサプライチェーンの構築を目指します。

 好調な業績が続く国内住宅事業においても、さらなる市場シェア拡大と収益力の強化に向けた取り組みを進めています。モジュール設計の推進やDX の加速などにより、設計業務のピークを前倒しする「フロントローディング」を推進し、営業・設計・施工の業務全体を効率化します。また、お客様との打ち合わせプラットフォーム「MYHOME WORKS」の活用により、お客様の利便性向上と営業・設計プロセスの効率化を図るとともに、これまで蓄積してきたデータを活用しAIの利用も本格化します。

脱炭素化への挑戦

 日本では2028年をめどに、建築物の計画から解体までのライフサイクル全体において排出されるCO₂を含む環境負荷(建築物LCA)を算定・評価・報告する制度の導入が予定されています。都市における建築物の木造化は、脱炭素社会の実現に向けた重要な取り組みの一つです。
 当社グループでは、米国、豪州、日本など各地域において中大規模木造建築を推進していますが、新設した不動産事業本部を中心に、開発ノウハウと技術を蓄積・利活用することで、木造建築技術を活かした環境配慮型不動産事業の拡大を目指します。
 国内外で木材コンビナート事業を推進することにより、良質な木材製品の供給基盤の整備と木材資源の価値最大化にも積極的に取り組んでいます。日本では、福島県いわき市で2026年3月に操業を開始した(株)木環の杜(こわのもり)の四倉工場において、主に地元産のスギを用いて国産材比率が低かったディメンション材※3を製造します。また米国においても、2025年7月に取得した米国ルイジアナ州の製材工場でディメンション材などの製造を開始しています。国内外での木材コンビナート構想では、製造過程で発生する木材チップや端材をエネルギー源として活用するカスケード利用を進め、当社のバリューチェーン「ウッドサイクル」を実現していきます。
 また、当社の祖業である森林経営の分野においても新たな取り組みを進めています。日本では日本森林アセット(株)で伐採跡地に再植林を行う事業を開始、米国では第1号森林ファンドのアセット取得面積の拡大など、持続可能な森林ビジネスを国内外で展開しています。

3 ディメンション材とは「2x4(ツーバイフォー)材」をはじめとする構造用製材。主に木造枠組壁工法(2×4工法)による住宅に使用されている。

「ウッドサイクル」が生み出す価値

 住友林業グループの価値創造の根幹にあるのが、「ウッドサイクル」という当社独自のバリューチェーンです。森林を育て、木材として利用し、建築物として長く活用し、再び森林を育てる。この循環を通じて価値を生み出していくことが、当社グループの使命だと考えています。
 近年、気候変動問題への関心が高まる中で、森林資源の循環利用や木材利用の積極的な拡大は、社会的にも大きな意義を持つものとなっています。森林はCO₂を吸収し、木材として利用されることで炭素を長期間固定します。さらに木材を建築物として活用することで、その炭素は都市の中で長く蓄えられます。こうして森林から都市へとつながる炭素固定の連鎖が、脱炭素社会の実現にも貢献します。

森林資源の脱炭素インパクト

 また森林は、木材供給に留まらずさまざまな恩恵(生態系サービス)を私たち人間社会に提供していますが、経済的価値として正当に評価されるまでには至っていません。生態系サービスの価値を測定し数値化することは容易ではありませんが、住友林業は国内外の森林企業18社によるプロジェクトに参画し、森林からの木材供給に加え、水供給、気候調整、生物多様性の生息地維持、土壌と堆積物維持など7つの指標を選び数値化し、最終的には金額換算にまでチャレンジします。
 当社グループは、再生可能な資源である木材を軸に、森林、木材、建築、再生可能エネルギーといった事業をグローバルに展開しています。これらの事業はそれぞれの市場で独立した価値を生み出していますが、その根底にあるのが「ウッドサイクル」です。この循環を持続的に回すことは、脱炭素社会の実現にとどまらず、資源の安定的な供給や生物多様性の保全、地域経済の持続性強化にもつながります。そしてこの目標を達成するためには、バリューチェーン全体で創出された付加価値を可視化し、ステークホルダーの間での価値配分を最適化することが必要だと認識しています。
 私たちは、サプライチェーンにおける事業者の皆様、そして一人ひとりの社員に至るまで、脱炭素社会の実現をはじめとする共通の目標を持ち、それぞれの行動を方向づけ、社会からの信頼を積み重ねていきます。信頼と共通の志のもと、「地球環境への価値」、「人と社会への価値」、「市場経済への価値」の3つの価値を同時に実現し、長期的に持続可能な社会の構築に貢献していくことを目指しています。

未来に向けて

光吉社長

 住友林業グループの事業は、多くのステークホルダーの皆様の支えによって成り立っています。株主・投資家の皆様、お客様、地域社会の皆様、そして日々事業に取り組む社員に対して、心より感謝申し上げます。
 不確実性の高い時代において、企業に求められる役割はますます大きくなっています。私たちは、長期ビジョンの実現に向け、事業基盤の強化と価値創造の深化に取り組み、持続可能な社会の実現と企業価値の向上の両立を目指します。とりわけ、世界各地で事業を推進する社員一人ひとりの挑戦が、住友林業グループの価値創造を支えています。多様な事業と地域をつなぐ力をさらに高め、グローバルに価値を創出できる企業へと成長していきます。

代表取締役 社長

代表取締役 社長

光吉 敏郎