持続可能な森林資源の活用

持続可能な森林資源の活用

木材・建材事業の取り組み

「きこりんプライウッド」の販売促進

住友林業グループでは、合板など、木質ボードの輸入商品の調達のうち、森林認証材・植林木を使用した製品の割合を目標設定し、その拡販に努めてきました。中でも FSC認証またはPEFC認証を受けた森林の木材や、持続生産可能な植林木を製品の50%以上使用している JAS合板は、「きこりんプライウッド」として販売し、その売上の一部は、インドネシアで実施している植林事業に投入してきました。この「きこりんプライウッド」は、森林認証材の採用、また植林木を50%以上使用した環境配慮型商品である点が評価され、2018年9月に第1回エコプロアワード奨励賞を受賞しています。2021年度からは「きこりんプライウッド」の定義を住友林業グループの木材調達基準に合わせ「持続可能性が確認された木材を100%利用した合板」とし、さらなる拡販に取り組んでいます。新定義での2022年度(1月~12月)の販売実績は298,692m3となりました。

※ 一般社団法人産業環境管理協会が主催。エコプロダクツに関する情報を需要者サイドに広く伝えるとともに、それらの供給者である企業等の取り組みを支援することで、日本のエコプロダクツのさらなる開発・普及を図ることを目的に2004年度創設。2018年度にこれまでの「エコプロダクツ大賞」をリニューアルし、新たに「エコプロアワード」となる

きこりんプライウッド

きこりんプライウッド

国産材の活用

中国をはじめとする新興国での経済発展や人口増加により、海外における木材需要は長期的に見ると増加が見込まれています。また日本においても2050年カーボンニュートラルや脱炭素社会の実現に向け、官民をあげ国産材自給率の上昇に取り組んでいます。

そうした中で、住友林業グループは、積み出し港を活用することで、国産材原木取扱数量の増加を進めています。具体的には、原木輸出に加えて、国内の製材工場や合板工場、バイオマス発電所、製紙工場などへ内航船での販売機会を増やしています。
2022年度の取扱実績は、約218千m3(輸出118千m3、国内販売100千m3)と前年度比で9%増加となっています。このように、国内外の変化のある市場の需要を見極めながら、国産材原木取扱数量の増加を目指しています。

2023年度も依然として世界的なインフレや金利上昇、主要な木材市場であるアメリカや中国の経済停滞の影響があるものの、グループ内での情報共有をより密にして、変化の速い中国市場向けへの輸出に注視しながら、内航船で国内需要にタイムリーに応えることで全体の取扱数量の増加を目指します。

※ 国内の港間における輸送

国産材の輸出

住友林業グループの国産材原木輸出数量について、2022年度上期はアメリカ向けのフェンスなどの外構製品の需要が戻るなど、堅調に増加しました。一方で下期は、中国の不動産市況悪化やゼロコロナ政策の引締めと開放による経済の混乱と感染拡大のため、輸出数量は伸び悩みました。その結果、2022年度の国産材原木輸出数量は、2021年度比16.9%減となる118千m3となりました。

国産材の取扱実績

国産材の輸出実績

※ 原木と製材品の取扱数量。2021年度以降の集計期間は各年1月~12月2020年度の集計期間は4月~12月2019年度の集計期間は4月~翌年3月

九州での国産材活用促進への取り組み

住友林業は、2022年2月、鹿児島県志布志市と、同市における事業検証に関する立地基本協定書を締結しました。この志布志プロジェクトは住友林業によるウッドチェンジの推進構想である木材コンビナート設立への第一歩としての取り組みとなります。

2020年、米国での住宅建設需要の増加や新型コロナウイルス感染症拡大を起因としたコンテナ不足等により、世界全体で木材価格が高騰するウッドショックが起こりました。木材供給の約6割を輸入に依存している日本では、価格面・数量面で大きな影響を受けており、国産材の活用促進が国としての課題となっています。国産材活用促進のためには、林業従事者から木材製造・加工業者そして建築業者全てが、事業収益を確保できる安定的な供給体制の構築が必要です。

住友林業はこれらの課題を解決するため、現在、志布志港から丸太のまま輸出されている低級材を付加価値のある製品に加工する新工場の建設を検討し、国内向けの安定供給および志布志港からアジアや北米などへの製品輸出を目指すとともに、バイオマス発電所の建設も検討しています。

住友林業は、国産材のカスケード利用を前提とした木材コンビナートの設立によって、木材製造の生産性向上と木材製品の安定供給を図り、価格競争力を強化します。また、木材の付加価値向上による林業従事者の雇用創出や、国産材利用促進に伴い、炭素固定期間の増加による脱炭素貢献につなげていきます。

※ 径の大きさや曲がり、節・腐れなどの要因で、製材・合板用に利用できず、輸出などに回っている木材

志布志プロジェクトの概要

カスケード利用のフロー

森林認証材の普及促進

森林認証材を販売する上でもっとも重要なことは、調達した森林認証材を他の木材等とは分別して管理することです。CoC認証では第三者による審査を受けることで、確実に森林認証を取得している森林から生産された木材等であることを保証してお客様に販売することができます。

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チップ化による木質資源のリサイクル

住友林業グループでは、木材の製材過程で発生する端材や、新築・解体現場で出る木くずをチップ化し、製紙やパーティクルボードなどの原料として、また発電ボイラーなどの燃料として供給するチップ事業を通じて資源の循環利用に貢献しています。

今後もバイオマス発電向け燃料の供給需要が高まる中、端材や木くずだけではなく、間伐材などの林地未利用木材も利用し、燃料用途の取扱数量のさらなる拡大を目指します。

木材チップ取扱数量

木材チップ取扱量

※ 2020年度以降の集計期間は各年1月から12月、2019年度の集計期間は4月から翌年3月

中大規模木造建築事業の取り組み

住友林業は、330年を超える歳月で森づくりを行っています。そして、世界の様々な木の特性を熟知し、木が活きる住空間をつくっています。その多様な経験・知識・技術を大きく発展させることで、住宅以外の中大規模建築での木造化・木質化を提案する「建築(木化)事業」を推進しています。木は光合成で大気中のCO2を吸収し、伐採して木材製品になっても炭素として固定し続けるため、こうした木材の利用拡大は脱炭素社会の構築にも貢献します。近年では、 2017年に土木・建築の事業分野において国内外で数多くの施工実績を持つ熊谷組との業務資本提携、そして 2021年には鉄骨造/鉄筋コンクリート造建築の受注や施工管理ノウハウを持つコーナン建設をグループ化し、住友林業が持つ木造建築や内外装の木質化技術等と組み合わせ、中大規模木造建築などの非住宅分野を拡大させます。木化事業を通して、木の文化の伝承や林業活性化、環境、経済が調和した持続可能な社会の実現への貢献を進めていきます。

中大規模木造建築ブランド
「with TREE」

2021年に住友林業と熊谷組は中大規模木造建築ブランド「with TREE」を立ち上げました。コンセプトは「環境と健康をともにかなえる建築」。都市の建築に「木」が生む新しい価値を提供し、中大規模建築の木造化・木質化を推進します。住友林業が持つ森林や木材にまつわる知見と、鉄骨・RCや大規模建築にまつわる熊谷組の知見を融合し、協業体制の強化を図ります。 2017年の業務・資本提携以来、協業の主軸である中大規模木造建築分野の取り組みとして、本ブランドを立ち上げ、資材の調達から建築、コンサルティングまで「環境価値」「健康価値」を高める提案をします。

取り組み事例

「with TREE」 札幌で着工

住友林業と熊谷組は、2022年6月、中大規模木造建築ブランド「with TREE」としては初めて、札幌市で地下1階地上10階建ての耐火木質ビル(KAGAプロジェクト)を着工し、2022年12月現在、建方が完了しています。上層階は木質ハイブリッド集成材を使用し、また、柱と梁の被覆木材には北海道産のカラマツを採用して、国内林業の活性化につなげます。木は光合成で大気中のCO2を吸収し、炭素として留め置き、伐採し木材製品になっても炭素を固定し続けます。住友林業は、中大規模建築の木造化・木質化を通じて脱炭素社会の実現に貢献していきます。

建設中のKAGAプロジェクト外観

上智大学四谷キャンパス15号館が完成

住友林業が設計・施工した上智大学四谷キャンパス15号館が2022年6月に完工しました。

木造3階建ての耐火構造で、一般的な鉄筋コンクリート造や鉄骨造の同様な施設と比べ、構造躯体の資材製造時におけるCO2排出量をそれぞれ15%、20%削減※1。構造躯体に使用する木材は111.85m3、炭素固定量は約84トン(CO2ベース)に上り、40年生のスギ約280本※2の炭素固定量に相当します。当施設は「街を森にかえる」につながり、SDGsの達成、脱炭素社会の実現に貢献します。
本物件は2023年1月に「ウッドシティ TOKYO モデル建築賞」で奨励賞を受賞しました。

※1 当施設の構造躯体を鉄筋コンクリート造、鉄骨造とした場合の躯体の部材数量を構造計算より求め、それぞれのCO2排出量の算出結果との比較を実施

※2 林野庁「建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン」。林野庁HPを参照し算出

15号館 外観

15号館 内観

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CLTを活用した木造郵便局

住友林業は、国内の郵便局として初めてCLT(直交集成板)※1を活用した丸山郵便局(千葉県南房総市)の施工を担当しました。丸山郵便局は日本郵政グループが推進するカーボンニュートラルの実現をめざす環境に配慮した郵便局(「+(ぷらす)エコ郵便局」)の第1号店舗で、2022年3月に開局しました。
外壁には千葉県産材の杉材を「焼杉※2」にして使用しています。ワークショップイベントとして地域の子供たちとともに焼杉を製作し、地域に愛される建物となっています。
また、循環型資源である「木」を活用するほか、太陽光による自家発電設備を導入しています。
本物件は2022年に「ウッドデザイン賞」の奨励賞(審査員長賞)を受賞しました。

※1 クロス・ラミネイティッド・ティンバー(直交集成板)。長い板状の木材を縦横交互に張り合わせた厚型のパネルで、強度や、断熱性に優れる

※2 「焼いた杉板」のことで、木の表面を焼き炭化させたもの。その炭化層は防火性・防腐・防蟻効果がある

丸山郵便局 外観

製作した焼杉

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パーキングエリアの木造建築

コーナン建設が施工を行った、大阪府の泉大津大型専用パーキングが2022年4月に完成しました。本パーキングエリアは、阪神高速道路4号湾岸線上の本線料金所跡を活用しており、阪神高速道路株式会社初の試みとなる木造建築物です。
構造躯体に使用した木材は58m3で、炭素固定量は約47トン(CO2ベース)となります。また、内装仕上げ材として壁面には地元泉州産スギ無垢材の木レンガや板材を使用しています。

施工においては、全ての部材や接合部、部材同士の接合角度など、異なる3次元の座標と角度を持つ躯体全てのデータを関係者で共有できるBIMを活用しました。仮設計画から各施工ステップを可視化・共有することで、生産性と品質の向上、さらには材料の無駄を軽減し、環境負荷の低減につなげています。

※ Building Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)。コンピューター上に現実と同じ建物の立体モデル(BIMモデル)を再現して、よりよい建物づくりに活用する仕組み。BIMツールで3次元モデルを作成し、設計から施工、維持管理に至るまでの蓄積された情報を活用し、業務効率化や建築デザインのイノベーションを起こすワークフロー

外観

外観

内観

内観

脱炭素社会の実現を目指す研究開発

住友林業グループは2018年に「W350計画」、2022年に「Mission TREEING
2030」を発表しました。筑波研究所は、住宅や建築のみならず、「木」を軸にした川上から川下までの様々な事業活動を通じて脱炭素化とサーキュラーバイオエコノミーの実現を目指す住友林業の目標達成に貢献するため、革新的な建築技術や新たな木質材料、新樹種の開発など、様々な未来技術により、街を森にかえる環境木化都市の実現を目指して研究開発を進めていきます。

研究開発成果を社会実装していくことで、木材需要の拡大による林業再生や、CO2固定量拡大等を通じた気候変動対策につなげ、地域活性化及び地球環境との共生に貢献します。

「環境木化都市」イメージ図(筑波研究所作成)

「環境木化都市」イメージ図(筑波研究所作成)

研究開発の成果の一部を社会実装

筑波研究所が開発した新技術の一つである、1時間耐火構造の木質ハイブリッド集成材有孔梁が、住友林業と熊谷組の共同企業体が工事中のKAGAプロジェクトに採用されました。

KAGAプロジェクトでは、7~10階に木質ハイブリッド集成材を使用しており、その木材には北海道産カラマツを採用することで、国内林業の活性化につなげています。また、その梁には木質ハイブリッド集成材有孔梁を採用することで、梁に直接配管を貫通することができるため、従来の木質ハイブリッド集成材梁と比べ天井高を確保でき、設計の自由度が向上します。また、設備配管用の嵩上げ材を設置する必要がなくなり、建築費全体のコストダウンと汎用性の拡大にもつながります。
当施設の構造躯体に使用する木材は39.9m3、炭素固定量は31.8トン(CO2ベース)です。これは計画地(139.05㎡)の約7.2倍にあたる広さのカラマツの森が吸収するCO2量に相当します。このような施設は街を森にかえ、脱炭素社会を実現します。

※ 日本集成材工業協同組合が大臣認定を取得している木質ハイブリッド集成材の1時間耐火認定梁に、住友林業が開発した梁貫通技術を加えて新規認定を共同取得したもの