モニタリング活動

■まなびの森鳥獣生息調査

富士山「まなびの森」では、自然林回復活動を実施して以来、その回復状況をモニタリングするため、植生及び鳥獣生息の調査を行っています。

■2009年度調査結果

1.調査結果

【繁殖期1回目・2009年5月16日(土)】
今にも降りだしそうな天気で野鳥のさえずりは少ない。昨年記録の途絶えてしまったモズがこの日は1羽観察できた。初夏の調査では最優先種のウグイスは、2007年5月の調査と並んで最多の27羽を記録し、テリトリーも11箇所あった。外来種のソウシチョウは2羽、ガビチョウは1羽と昨年より減少傾向となった。
記録された野鳥の総数は28種116羽、テリトリーは9種25箇所であった。
哺乳類ではイノシシとニホンジカの痕跡が観察された。

【繁殖期2回目・2009年6月6日(土)】
5月に続いてこの日も降りだしそうな天気だったが、何とか調査は実施できた。例年5・6月に記録のあるカッコウが、今年は渡来が遅れたのか5月には1羽も見られず6月には過去最高の11羽が記録された。ヒメアマツバメが10年目にして初めて記録された。キビタキは5月の5羽に続いて6羽と、明らかに生息数を増やしている。外来種のソウシチョウは4羽記録された。
記録された野鳥の総数は30種153羽、テリトリーは12種29箇所あった。
哺乳類ではモグラのモグラ塚とニホンジカの糞や食痕が記録された。

【越冬期1回目・2010年1月4日(日)】
朝の天気は曇りだったがあまり寒さは感じられない。歩き始めは観察される鳥の数も少なかったが、徐々に姿が見られるようになった。冬鳥のミヤマホオジロ,アトリ,マヒワの数が少なく少々寂しい記録となった。
記録された野鳥の総数は25種139羽となった。
哺乳類はモグラのモグラ塚とニホンジカの糞や食痕が記録された。

【越冬期2回目・2010年2月6日(土)】
登山道の温度計は-8℃を表示。気温が低いので月曜日に降った雪が解けず、調査コースは銀世界だった。地上で採餌する野鳥は餌を採ることが出来ないため麓に下りてしまったのか観察される野鳥の数がとても少ない。そんな中で冬鳥のキレンジャクが10年間の調査で始めて記録された。
記録された野鳥の総数は22種76羽となった。
この日は積雪があったにもかかわらず哺乳類の記録が少なかった。ノウサギの足跡が一箇所と、ニホンジカの糞や足跡は調査コース上全域で確認された。

2.野鳥の生息状況

2000年5月から開始したこの調査も今年で10年目となった。この間のデータをグラフに表すことでこの場所に住む野鳥たちの生息状況を考察してみたい。
まず、この調査の中で生息状況に特徴のあった種について個別に記してみる。
グラフ.1
ササヤブや背の低い潅木の茂みを好むウグイス〔グラフ.1〕は、かつて草原地帯だった場所が10年の歳月を経てススキや低潅木の茂み80となり、現在のまなびの森の中に彼らの生息に適した環境が増えたことから、生息数をじわじわと増やしている事がグラフから読み取 れる。今年度は5月に27羽(テリトリー11ヶ所)、6月に16羽(テリトリー8ヶ所)が記録された。
グラフ.2
かつては富士山南麓では生息数の少ない種であったキビタキ〔グラフ.2〕は、近年その数を増やしつつあり、富士宮市街地周辺の雑木林でもそのさえずりを聞く機会が増えている。まなびの森を含めた富士山中腹では2000年の調査開始時より年々さえずりを聞く場所が増え続け、まなびの森でも針葉樹林と広葉樹林が隣接する環境では毎年同じ場所でさえずりや姿が観察され、さらにその数を増やしている。その状況はグラフが示すとおりである。
グラフ.3
夏鳥として渡来するコルリ〔グラフ.3〕もキビタキ同様に調査地では生息数を増やし続けている種である。例年5月の記録が多く夏鳥の中でも繁殖期が早いことを示しているが、ここ3年ほどは6月の記録も増えており、今後どのように生息状況が変化していくのか楽しみな種である。
グラフ.4
上記3種とは対照的に生息数の減少している種がジュウイチ〔グラフ.4〕である。他の種類の鳥に自分の卵の孵化を依存する託卵の習性があるが、その託卵相手となるコルリ,キビタキなどが生息数を増やしているにも関わらず2005年度以降記録が途絶えてしまった。
グラフ.5
夏鳥として渡来するマミジロ〔グラフ.5〕は生息地が局地的でどこでも見られる鳥ではないのだが、まなびの森から西臼塚周辺にかけては毎年マミジロが観察できる貴重な場所であった。グラフが示すように渡来数が減っており2年ほど記録が無かった後の昨年度1羽の記録があり、本年度はまた記録されなかった。この地域を特徴付ける種として今後の復活が望まれる。
グラフ.6
草原を主な生息地としているモズ〔グラフ.6〕は1996年の台風以降それまでの植林地帯が荒地から草原に変わった事によりこの地域で生息数を増やしてきた種であるが、その草原が灌木林へ変化していく中で徐々に生息に適した場所が失われつつある。モズが採餌に利用する地表に土の露出したような環境は減少し昨年は記録が無くなってしまったが、今年度は4回の調査全てに記録されており、今後の推移が興味深い。
グラフ.7
ソウシチョウとガビチョウ〔グラフ.7〕は近年国内で生息数を増やしている外来種であるが、ソウシチョウは2001年に、ガビチョウは2002年に調査地内で初めて記録された。その後両種とも記録を増やしてきたが、今年度はその増加傾向が一段落した記録となった。これは市内の他の地域も同様で、今後この2種の生息状況がどのように推移していくのか注意深く記録していきたい。
グラフ.8
10年間に記録した野鳥の総個体数〔グラフ.8〕の変化を見ると、2003年1月の極端な例(アトリの300羽ほどの群れが出現したため)を除けばわずかな推移はあるものの大きな数の増減は認められない。これは記録した野鳥の種数〔グラフ.9〕を見ても同様である。
グラフ.9
グラフ.10
まなびの森にテリトリーを作った鳥の種数とテリトリーの数〔グラフ.10〕を見ると、2000年度から2005年度にかけては台風被害にあった荒地が草原へと環境を変えていく時期と重なり、森林と併せて多様な自然環境がこの地に出来たことによる野鳥の繁殖数の増加を表している。その後この草原地帯が植生の変化により灌木の繁る環境に変化してきたことによるキジ,モズ,ホオジロなどの草原性の野鳥の減少が始まり、2006年度以降はここに繁殖する野鳥の種数・テリトリー数共に減少傾向にあることがよく分かる。
今年度新たにこの地域で観察された種はヒメアマツバメとキレンジャクで、ヒメアマツバメはここの場所が本来の生息地というわけではないが、しばしば行動を共にするイワツバメと一緒に採餌のために訪れたものと思われる。キレンジャクは本州中部地方では稀な冬鳥であるが2010年2月の調査で3羽が記録された。
繁殖期と越冬期の記録を合わせると47種の野鳥と2種の外来種が記録された。

9.哺乳類の観察状況(表-№6)

【モグラ】(種不明)
6,1月の調査でモグラ塚が観察された。

【ノウサギ】
通年生息していると思われるが、今年度は2月の調査でのみ足跡が観察された。

【イノシシ】
調査地域全域に生息しているものと思われるが、警戒心の強い動物のため調査中に姿を見る機会は少ない。5月の調査で採餌跡が観察された。

【ニホンジカ】
年間を通じて調査地に生息しているが、夏には標高の高いところへ移動する個体も多いらしく目にする糞の量も少なくなる。すべての調査で糞や足跡の記録がある。

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