自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏
梅雨の始まりの季節になるとサンショウバラがピンク色のきれいな大輪の花を咲かせます。そして、その花の蜜に誘われてたくさんのマルハナバチの仲間が集まってきます。花から花へブンブンと飛びまわる羽音でサンショウバラの樹の周りはとても賑やかになります。
同じく梅雨時の花にエゴノキがあります。蒸し暑い中、エゴノキを下から見上げると真っ白な花をたくさん咲かせていて、見ているだけで爽やかな気持ちになります。そのエゴノキの花が例年に比べて数が多いです。花が散った樹では、その足元にまるで雪が積もったようにたくさんの花びらが落ちています。このような光景は初めて見ました。
さて、今年が巳年だからという訳ではないでしょうが、最近フォレストアークの周辺で2m近くもある大きなアオダイショウをよく見かけます。枯れ葉がカサカサと音を立てるので一瞬ドキッとしますが、アオダイショウだと分かって一安心。おそらく、同じ個体を見かけているのだと思います。
今年も苔むした樹幹にランの一種であるクモキリソウが花を咲かせています。普通は林床に生えるものですが、どうした訳かとある樹幹に毎年咲いています。数えてみると高さ3mくらいの所までに26株もありました。まだ花を付けない若い株もあり、これから株が少しずつ生長していくのが楽しみです。樹上だとシカに食べられないので、クモキリソウとしても安心なのでしょうか…
サンショウの青い実が大きく脹らんで、いわゆる実山椒となるころは梅雨明けも間近で夏本番の季節となるでしょう。梅雨に雨が少なかったので夏の日照りが少し心配ですが、今年は小学生の自然体験教室も順調に「まなびの森」で開催できてホッとしているところです。
-
サンショウバラが今年もたくさん咲きました マルハナバチの仲間がたくさん飛びまわっています
-
サンショウバラの花は大きくて目立ちますが、花の命は短いです
-
アオダイショウと目が合いました
-
その同じアオダイショウがフォレストアークの高窓の内側で蜷局(とぐろ)を巻いています
-
翅の色がきれいなミヤマカラスアゲハは飛ぶのが早いですが、たまに地面に降りて一休み
-
森の中の倒木に発生した色鮮やかなマスタケ(鱒茸)
-
普通は林床に生えるクモキリソウが樹上性に シカの食圧を逃れた結果でしょうか
-
同じ樹に26株ものクモキリソウ 樹上に大きな群落をつくっています
-
森のヌタ場の水溜りの上に産み付けられたモリアオガエルの泡卵塊
-
イタヤカエデの甘い樹液を舐めにきたキイロスズメバチ
-
ヤマボウシ(山法師)の白い花 花びらのように見えるのは総苞片 それが白い頭巾を被った法師(僧侶)に見立てられた名前です
-
毎年たくさんも花を咲かせるエゴノキ
-
今年は特に花の数が多く、散った花びらで雪が降ったように地面が真っ白に
-
スイカズラ(吸葛)の花 咲き始めは真っ白、その後だんだん黄色くなります 白い花の根元を吸うと蜜の甘味が楽しめます
-
サンショウの実が大きく脹み、実山椒とかブドウ山椒と呼ばれます
新緑の黄緑色の森はマイナスイオンが溢れていて、とても清々しく気持ち良いです。森の中を歩いているだけで、緑のシャワーを浴びているようです。
ただ、今年の5月は肌寒い日も多く、フォレストアークの中にいるときには何度か石油ストーブを使うときもありました。
例年より気温が低いせいでしょうか、春先の花であるフデリンドウが5月中旬になっても咲いていました。逆に、5月頃に花を咲かせるニリンソウや寄生植物のヤマウツボが遅いようです。
これからは、ヤマシャクヤクが純白の玉のような蕾から開花するまでの短い間はチョッとワクワクします。そして、今年は待ちに待ったサラサドウダンが咲きました。毎年たくさん花を咲かせていたのに去年は一輪も花を付けず、どうしたのかと少し心配していました。2年ぶりのサラサドウダンに遭えて安心しました。
ある日、歩いていると枯れ葉が擦れる音がするので、目を凝らすと1mくらいの赤茶色のヘビが這っていました。そのあとを追いかけると、木の根元のくぼみに体を隠すように蜷局(とぐろ)を巻きはじめました。ジムグリというヘビです。「まなびの森」ではアオダイショウとジムグリを時々見かけます。
春~初夏の花は白い花が多いです。サクラの仲間で花の時期が一番遅いミヤマザクラも、枝が硬く梅鉢模様が美しいカマツカも、また、ここまでにご紹介したニリンソウやヤマシャクヤクもみんな白い花です。そんな中、林縁に咲く深紅のヤブウツギはとても良いアクセントになっています。ヤブウツギは明るい林縁を好む木です。たくさんのヤブウツギが林縁に生えているところはまるでヤブウツギのトンネルのようになっています。
「まなびの森」では見られませんが、今年はフジが花盛りです。山のあちらこちらで木が紫の衣装を着飾っているように見えます。
そして、新緑から2週間も経つ頃には森は夏装いの深緑へとその姿を変えていきます。
-
新緑の森はとても美しい その中を歩くとマイナスイオンでいっぱいです
-
春を代表する草花の1つ、ニリンソウ
-
ヤマウツボの花 葉緑素を持たず、ブナなどに寄生しています
-
5月になっても気温が低く、フデリンドウが咲き残っています
-
そして、5月末にはフデリンドウに実ができました
-
真っ白な玉のような蕾
-
ヤマシャクヤクの花
-
ジムグリが蜷局を巻いています
-
去年は一輪も咲かなかったサラサドウダンが今年はちゃんと咲きました
-
ミヤマザクラはサクラの仲間では一番最後に花をつけます そして、穂状に咲きます
-
梅鉢模様のカマツカの花 枝は細くても非常に硬いので「鎌柄(かまつか)」
-
森は一気に夏の装いの深緑に
-
白い花が多い中で、目立つのが深紅のヤブウツギ
-
木が紫の衣を纏ったように見えるのはフジの花のせい
-
今年はあちこちでフジがたくさん花を咲かせています ※フジの写真は「まなびの森」のすぐ近くで撮りました
今年の春は3月に何度も雪が降ったことが原因なのでしょうか、春の花々の開花が遅かったです。平地のソメイヨシノが散ったころ「まなびの森」で咲き始めるマメザクラは4月中旬になってやっとほころび始め、満開になったのは4月下旬でした。
ほかにも、例年春一番の花であるキバナノアマナ、フデリンドウ、アズマイチゲやネコノメソウの仲間も軒並み遅かったです。
逆に、いつもは開花時期が4月上旬ころまでのミツマタは、3月の気温が低かったためか、4月下旬ごろまで咲いていました。
ある日の朝、フォレストアークの玄関先で1匹のマルハナバチが弱々しくヨタヨタと歩いていました。寒さのために動けないのかと思い、手のひらに乗せ、ソッと息を吹きかけて温めてやっても特に変化はありません。命が尽きるのかと思い、せめて最期に蜜を吸わせてやろうと満開になったマメザクラに這いつかせてやりました。すると、すぐに吸蜜し始めました。そこで10秒ほど蜜を吸っていると、ブーンと次の花に向かっていくではありませんか。マルハナバチの余りにすばやい回復力に、花の蜜の持っているエネルギーに、あらためて驚かされた出来事でした。
4月末には富士山の雪もかなり溶け、夏の雰囲気に衣替えしました。森が一番美しい新緑の季節もまもなくのことでしょう。
-
今年のマメザクラは開花がだいぶ遅れました 大ぶりの濃いピンクと白い2本のマメザクラ
-
モクレンの仲間のコブシの花
-
満開になったミツマタ 4月下旬になっても咲いています
-
黄色い可憐な花を咲かせるキバナノアマナ
-
フデリンドウの開花も遅かった
-
アズマイチゲ
-
名前が少しかわいそうなヨゴレネコノメソウ 開花している時、葉に白い斑点模様が見られ、それが汚れていると…
-
4月末には富士山の雪もだいぶ溶けました (富士宮市役所最上階からの眺め)
-
マメザクラで吸蜜するマルハナバチ 実は…