自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏
里ではなかなか秋が訪れませんでしたが、「まなびの森」は10月に入ると少しずつ紅葉が始まりました。紅葉の始まりの時期は緑の中にチラホラと赤、橙、黄が見え隠れしているだけですが、しだいに色づきが拡がっていきます。
秋はなんと言ってもキノコのシーズンです。恒例のハタケシメジを始め今年は夏の猛暑が影響したのか、キノコが沢山発生しました。中でも、ヌメリツバタケモドキはあちこちの樹の幹に沢山発生しました。また、毒キノコであるツキヨタケも多く発生しました。ニュースではツキヨタケによる食中毒が度々報じられていました。ムキタケやヒラタケ、場合によってはシイタケなど美味しい食菌と見間違われることで食中毒が起きるのですが、ツキヨタケは二つに割ってみると付根に黒いシミがあることで見分けられます。
今年は2年振りにシイタケにも出会いました。なかなか天然のシイタケには出会えないので嬉しい限りです。
雨水枡の中の落ち葉などを掃除していた時、モゾモゾと飛び出してきたものがいました。初めは泥まみれで良くわからなかったですが、落ち葉の中で冬眠の準備をしていたモリアオガエルでした。
秋は小学生が自然体験教室に訪れ、自然ガイドの案内で半日森の中で過ごします。森を散策しながら1人1枚の落ち葉を思い思いに集めてくると「森のステンドグラス」ができあがります。陽にかざして見ると色も形もさまざまで、自然のアート作品の仕上がりに子どもたちの歓声が上がります。
「まなびの森」はまもなく初冬を迎えようとしています。
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赤、橙、黄、緑とコハウチワカエデが葉の錦を織りなしています
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紅葉のグラデーションがみごとに陽に映えています
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スラッと20㎝以上伸びたオオツルタケ
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美味しそうな食菌に見間違われる有毒のツキヨタケ 2つ割りした付根の黒いシミが識別ポイント
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倒木から発生したシイタケ
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シイタケ
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樹の幹にヌメリツバタケモドキがびっしりと発生しました
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ヌメリツバタケモドキ
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堆肥と化していた落ち葉の中で冬眠の準備をしていたモリアオガエルのメス
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森の散策中に子どもたちが一人一枚集めてでき上った「葉っぱのステンドグラス」
日暮れがだんだん早まるにつれて、残暑も納まりを見せはじめ秋が深まっていきます。
普段はあまり訪れることがない森の箇所を歩いていると、神々しいホオノキの巨木に出遭いました。幹周りは優に6mを越えているようです。
秋はやはりキノコの季節です。今年は秋も気温が高めなせいか、夏のキノコであるタマゴタケが9月になっても傘の直径が25㎝ほどの大きなものが発生しました。
コチャダイゴケは少し変わった形をしています。腐食がすすんだ木片の上にまるでコップを並べたように発生し、コップの中には碁石状の塊がたくさん入っています。この塊(小粒塊と言う)の中には胞子が入っていて、雨粒に打たれるとその塊ごとコップから弾き飛ばされて胞子を拡散します。実にユニークな生態をもっています。
今年も「まなびの森」で何回か猛毒のカエンタケが発生しました。中でも一番気味悪かったのは写真で紹介した地面から赤い手が伸びているようにも見えるものでした。触るだけでも皮膚が爛れると言われているので、どこかで見つけても決して触らないようにしてください。
秋の草花のナンバーワンはなんと言ってもその優雅な姿のアズマレイジンソウでしょう。
ほかには、毎年見かけるギンリョウソウモドキやトリカブトなど。
ある日、フォレストアーク玄関を夕方閉めようとしたら、扉の陰にアズマヒキガエルが潜んでいました。まさか、そのまま冬眠をするつもりではなかったと思いますが、突然の出現にチョッとビックリしました。キッとカエルの方もビックリしたことでしょう。
森の中で小さなイガイガを纏った丸い可愛らしいキノコを見つけました。ヒメホコリタケらしいです。ハリネズミを連想させる姿に思わずニッコリ、ホッコリしました。
こうして「まなびの森」は来月には紅葉のシーズンを迎えようとしています。
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神々しいほどのホオノキの巨木
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食用キノコの王様、タマゴタケ
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ウスヒラタケが倒木にビッシリと発生 これも優良食菌です
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ギンリョウソウモドキ 別名はアキノギンリョウソウ
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アズマレイジンソウ
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チシオタケ(血潮茸) 和名は手で傘や軸を触ると赤い汁が滲んでくるようすを表している
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コチャダイゴケ(小茶台苔) コップ状本体の中に碁石が入っているような変わった形のキノコ
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変形菌の1種であるエダナシツノホコリ(枝なし角ホコリ)
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猛毒のカエンタケ(絶対に手で触らないこと)、今回のものは地面から赤い手が生えているような気味悪さ…
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フォレストアーク玄関扉の影に隠れていたアズマヒキガエル
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ハリネズミを彷彿とさせるヒメホコリタケの幼菌
夏の盛りになると森のアチコチで濃厚な甘い薫りが漂ってきます。クサギの花が咲いているのです。葉っぱを揉むと青臭い匂いが強く鼻を刺激することから「臭木」と名付けられていますが、人によっては「チョッと青臭いピーナッツバターの匂い」と表現することもあります。クサギの花の薫りはとても強く30~50m離れたところでもするので、ひらけた場所では色々なチョウ、特にミヤマカラスアゲハやモンキチョウなどのアゲハの仲間が好んで吸蜜にきます。
白色の花を咲かせるオトコエシ(男郎花)は、秋の七草の1つで黄色の花のオミナエシ(女郎花)の仲間です。この花にも甘い薫りがあり、沢山の虫を呼び寄せています。
地面に目をやると、先がオレンジ色をした細長い黒い棒のようなものが見られます。その根元には必ずカメムシの死骸があります。冬虫夏草の仲間、カメムシタケです。その形から別名がミミカキタケとも。色が目立つので冬虫夏草の中でも比較的見つけやすいです。
冬虫夏草の仲間は種類によって違う虫に寄生するので、殺虫剤の代わりとして害虫の抑制に利用しようとする研究が進められています。
夏の始めに鳴きはじめたヒグラシに代わってミンミンゼミが鳴き、それに続いてツクツクボウシが鳴きはじめると少しずつ夏の終わりの気配が「まなびの森」に伝わり始めます。そして、ススキが穂を出し、開花するといよいよ初秋となります。
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夏の盛りを告げるクサギの花、濃厚な薫りをあたり一面に漂わせチョウたちが沢山寄ってくる
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葉の形がボタン(牡丹)にソックリなことで名付けられたボタンヅル(牡丹蔓)
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オミナエシの親戚、オコトエシの花に色んな虫が吸蜜に寄ってきます
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冬虫夏草の仲間であるカメムシタケ、オレンジ色の頭部が目立つので見つけやすい
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カメムシタケはその姿形からミミカキタケと言う別名があります
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ススキの穂が開花し、秋の訪れを告げている