まなびの森通信

まなびの森通信

自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏

【第212回】立春を過ぎて暦の上では春ですが...

2023年 2月28日

 1月に続いて「日本野鳥の会」南富士支部の皆さんによる鳥獣生息調査が2月11日に行われました。前日の雪のために路面の凍結が心配されましたが、当日は幸い路面凍結もなく調査は滞りなくできました。調査の折り返し地点である「まなびの森」最奥部でシジュウカラ、ヤマガラ、ゴジュウカラ、ヒガラと言ったカラの仲間やエナガの40羽ほどの混群がにぎやかに飛び交っていました。
センサーカメラに映った写真などを通して動物たちの行動知ることはできますが、雪はその足跡をフィールドサインとして記録してくれています。この日も、シカをはじめ、テンやイノシシ、タヌキなどの足跡が沢山残されていました。
 別の日に「フォレストアーク」の前には鳥の足跡が残されていました。野鳥の会の方に見てもらったところ、歩き方と歩幅からヤマドリではないかとのことでした。ヤマドリは少し地味な茶色ですが、キジ(日本の国鳥)に似た姿形で長い尾羽が特徴です。
 2023年もアッと言う間に2ヶ月が過ぎようとしています。里ではロウバイやウメの花が咲いて春の兆しですが、「まなびの森」の春はもう少し先です。
※ヤマドリはその長い尾羽を詠んだ「百人一首」柿本人麻呂の和歌
『あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を ひとりかも寝む』
でも有名です。また、万葉集にはほかにもヤマドリを詠んだ和歌があります。

  • 鳥獣調査の前日に降り始めた雪

  • 調査ルートの折返し地点で休憩する「野鳥の会」の皆さん

  • 雪原に残っていたのはきれいな梅鉢模様はタヌキの足跡

  • 雪の上に残されたヤマドリの足跡

  • 目の周りの赤が印象的なヤマドリ

  • ヤマドリはその長い尾羽も特徴

  • ヤマドリと姿かたちが似ているキジは色鮮やかな日本の国鳥

  • キジもヤマドリも威嚇や縄張り主張でホロ打ちをする ※ヤマドリとキジの写真4枚は「日本野鳥の会」南富士支部の方が別の場所で撮影されたものをご厚意で提供していただきました

【第211回】2023年がスタート

2023年 1月31日

 今年はトレール沿いの立枯れ木の伐採が仕事始めとなりました。昨年末に森林管理署と相談の上、トレールに近い立枯れた樹木は危険と言う事で森林ガイドの方に協力していただき伐採しました。また、別の日にはホールアースの方々に協力していただき、トレール途上の深く抉れた涸れ沢、通称「まなびの森」キャニオンに木製の橋を架けていただきました。これで今年も皆さんに安心して「まなびの森」を歩いていただくことができます。
 1月第2週に冬鳥の調査のため「野鳥の会」の皆さんによる「鳥獣生息調査」が行われました。野鳥の種数は14種と少なかったです。そんな中で、特別に目立ったのがゴジュウカラでした。森の中のあちらこちらで「フィーッ、フィーッ」と良く通る啼き声が聞かれ、「今日はゴジュウカラの大合唱会だね」などと口々に話していました。
ゴジュウカラ(体長 13.5㎝)は青灰色をしていて、尖った嘴を持ち、嘴から目元まで黒くアイシャドウのあるスズメ(体長14.5㎝)より少し小さい鳥です。野鳥の中で唯一木の幹を下向きに下りことができます。素晴らしい身体能力を持った鳥と言えます。
 1月末には、昨年一年間の「まなびの森」での活動を実地に踏査しながら振り返り、今年の活動に活かすための「活動状況調査」を行いました。日中の最高気温も氷点下と言う真冬日の厳しい寒さでしたが、森の中を10人で歩きながら今年の課題などを確認しました。トレールの一番高い場所にある通称「海の見えるケヤキ」からは冬枯れで見通しの良い森から駿河湾越しに伊豆半島も見えます。
 私にとってこの冬は4度目ですが、例年に比べ格段に厳しい寒さが続いています。「フォレストアーク」の建物の中に置いている手洗い用の水がドンドン凍っています。こんなことは今までにありませんでした。
 2月は更に厳しい寒さになるのではないかと、内心ヒヤヒヤして春が待ち遠しいです。

  • トレール沿いの立枯れ木を伐採

  • トレールを通せん坊していた倒木も伐ってもらいました

  • トレールのキャニオンに橋が完成しました

  • キャニオン橋架けにご協力いただいたホールアースの皆さん

  • 真冬日の中、活動状況調査を行いました

  • その途上、キャニオン橋の渡り初めをしました

  • 橋の向こう側でもテープカットをしました

  • 凍てついた落ち葉からも霜が

  • 苔むした樹の幹が薄っすら雪化粧

  • 「海が見えるケヤキ」から眺める駿河湾と伊豆半島

  • 巨木の1つ「海が見えるケヤキ」

  • ゴジュウカラは頭を下にして樹の幹をして下りることができます ※ 別の場所で野鳥の会 南富士支部の方が撮影されたものをご厚意で提供していただきました

【第210回】真冬の「まなびの森」

2022年12月31日

 冬になると存在感を増すのは先月のツルマサキだけではありません。高い樹の上を見上げると、丸いボール状の塊が見られます。ヤドリギです。高い場所にあるので、葉や実を見ることはほとんどありません。強い風に煽られたのでしょうか、たまたま林床にヤドリギの枝が落ちていました。規則正しく二股に枝分かれし、その真ん中に黄色い実を付けています。この実は野鳥の大好物ですが、ヤドリギには彼らの巧みな戦略があります。種の周りにはネバネバの粘液があり、鳥の腸内で消化されることなくスルッとお尻へ出てきます。そして、その粘液に守られたヤドリギの種はそのまま他の樹の表面にくっつき芽生えてきます。ヤドリギは樹に居候して水分はもらうようですが、光合成は自分で行っているそうです。
 12月初旬に、富士宮市主催の自然観察会(もともと9月に予定されていたが、台風で延期)が開催されました。『冬に自然観察会なんて…』と半信半疑で参加された市民の皆さんもプロのガイドの奥深い知識を絶妙なトークで楽しみながら、見通しの良い森を歩き、新しい発見と知識を持ち帰っていただけました。冬には「冬の森の魅力」があると実感していただけてほんとうに良かったです。
 「まなびの森」より標高が高い場所にはシナノキが沢山生えています。そして、それは「まなびの森」の「長老シナノキ」よりも更に迫力ある樹形となっています。
 また、「まなびの森」の少し東側には不思議な樹形のケヤキがあります。まるでポパイが力こぶを自慢しているようにも見える通称「ポパイのケヤキ」です。どうしてこんな樹形になったのか色々想像してみるだけでも面白いです。そして、手で触れるとケヤキのパワーをもらえるようです。
 2022年もいよいよ終わりとなります。今年も1年間ご愛読ありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

  • 冬の樹を見上げるとよく見られるヤドリギ 黄色い実は野鳥の好物

  • ヤドリギの巧みな戦略でマメザクラの枝に芽生えが出てきました (3年目の芽生え)

  • 富士宮市主催の観察会の参加者とガイド2名(両端)

  • 「まなびの森」より高い標高のシナノキは「長老シナノキ」よりもさらに迫力満点

  • 「まなびの森」の少し東側にある不思議な樹形のケヤキ、通称「ポパイのケヤキ」

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