まなびの森通信

まなびの森通信

自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏

【第209回】小春日和に誘われて

2022年11月30日

■11月管理人日記

 今年の11月は雨が少なかったです。特に、前半は連日の晴天続きでした。気温は低いですが、日向は小春日和の暖かさが嬉しかったです。そんな暖かさに誘われたのでしょうか、1時間ほど森の巡回をして戻ってくると「フォレストアーク」の裏玄関に出掛ける前にはなかった瑞々しい糞が落ちていました。色がやたら緑色ですが、大きさと形、そして臭い(少しナフタリン臭)からするとテンの残していったものらしいです。
 ウラジロモミの幹に細いキズが何本も付けられていました。これは、雄ジカの角研ぎの痕です。幹に擦りつけて先を尖らせるように研いでいるのです。
 斜めから差し込む太陽光に照らされ、イタヤカエデの黄色が鮮やかに輝いています。冬枯れになる前の艶やかさを誇っています。
 葉を落とした後に目立つようになるのがツルマサキです。ブナやケヤキ、カエデの仲間に付いているツル性の樹木で、常緑なので冬には存在感が増します。ツルマサキは赤い実を沢山つけるので、小鳥たちの格好のエサにもなります。ヤマガラ、シジュウカラやゴジュウカラなどが特に好んで啄んでいます。
 今年最後の自然体験教室を無事終えました。寒い日でしたが天気に恵まれ、子どもたちは元気に森を歩きながら思い思いの落ち葉を拾い、それをフレームに挟んで空にかざして見ると「森のステンドグラス」が完成します。「一つとして同じ色・形の葉はない」と言う多様性を知る環境学習です。
 森は冬枯れで見通しが良くなり、晴れた日には駿河湾や伊豆半島も見える冬本番を迎えようとしています。

  • 「フォレストアーク」の裏玄関先の真新しいテンの糞

  • ウラジロモミの幹でシカが角研ぎした痕

  • 鮮やかな黄色に色づいたイタヤカエデ

  • 赤いツルマサキの実

  • 今年最後の自然体験教室は寒い晴天の下で

  • 子どもたちが拾った落ち葉で「森のステンドグラス」が完成

【第208回】晩秋から初冬の季節は

2022年10月31日

■10月管理人日記

 日に日に空気が澄みわたり、季節は晩秋に向かっています。カツラの枯れ葉が醸し出す甘い香もよく薫ってきます。富士山が4合目辺りまで雪化粧した10月下旬のある日、急に冷え込んだことで紅葉・黄葉がスタートしました。そして、1週間ほどすると色づきが鮮やかになりました。シカが恋の季節を迎えているので、和歌に詠まれたとおりキョーンと言う甲高い鳴き声も時々聞こえます。(「奥山に紅葉踏みわけ 鳴くシカの 声きく時ぞ 秋は悲しき」猿丸太夫 古今集、百人一首)
 林床に淡い水色のかわいらしい花が見られます。トリカブトの仲間のアズマレイジンソウです。花の上部が雅楽を演奏する「伶人」が被る冠に似ているところからつけられた名前です。
 秋はやはりキノコの季節です。
 大きな株に育つハタケシメジ、ナラタケの他、変わった形のノボリリュウや一日で黒く溶けるように消えていくヒトヨタケ(一夜茸)などなど。
 また、ブナの周りには薄黄色の小さなキノコが沢山見られます。まるで小さな森の精霊が持っている傘のようにも見えます。ウスキブナノミタケと言う名前で、その名の通り地中に埋もれたブナの実から生えます。掘り起こすとそのことが良くわかります。
 逆立った毛が沢山生えているようなキノコがあります。チシオタケと言うキノコからタケハリカビと言うケカビの仲間が生えているのです。逆立った毛のように見えるのは胞子を作る器官です(専門用語で胞子嚢柄と言います)。
 秋になるとよく見かけるようになるのが長い足を持ったクモに似た虫です。メクラグモとも称されるザトウムシです。クモとは身体の構造が違います(クモは頭胸と胴がくびれてはっきり分かれているのに対し、ザトウムシはそれが密着して一塊りに見える)。「千と千尋の神隠し」に出てくる「窯爺」のモデルとなったことでも有名です。
 黄落がはじまると寒い冬がすぐそこに迫っています。

  • モミジの仲間が色づきはじめました

  • 赤、橙、黄、緑と葉が錦を織りなしています

  • 紅葉が始まって1週間もするとみごとに紅く染まります これはコハウチワカエデ

  • アズマレイジンソウ(吾妻伶人草)

  • ハタケシメジは食べ応えがある美味しい食菌

  • 変わった形のノボリリュウ

  • 名前の通り一夜で溶けるように消えるヒトヨタケ 傘の縁が黒く溶け始めています

  • ブナの実から生えるウスキブナノミタケ(薄黄橅之実茸)

  • 地面を掘ってみるとブナの実から生えていることがわかります

  • チシオタケからタケハリカビ(茸針カビ)が発生して毛むくじゃらに

  • ザトウムシ(座頭虫)が虫を捕食中

【第207回】日に日に秋の訪れを感じます

2022年 9月30日

■9月管理人日記

 9月に入ると雨が多くなり、日に日に秋らしくなっていきます。
 その長雨に誘われるように、普段は姿を見せないアズマヒキガエルがフォレストアークの傍に現れました。
 今年は都会の公園などで猛毒のカエンタケが発生して新聞、テレビで話題になっています。「まなびの森」では昨年数ヶ所で発生したので、今年もナラ枯れを起こしたミズナラの根元を中心に探した結果、1ヶ所でその色鮮やかで毒々しい姿を見つけました。触るだけでも皮膚が爛れる恐れがあるので、どこかで見つけても決して触らないようにしてください。
 森の落ち葉の間から細長いマッチか線香花火のようなものが立ち上がっています。その根元にはカメムシの死骸があるので、冬虫夏草の仲間のカメムシタケだとわかります。
 地面に7~8㎝の穴が開いていて、辺りにハチの巣の残骸が散らばっています。猛禽類のハチクマが好物のクロスズメバチ(通称ジバチ)の巣を襲った痕です。穴の中を覗き込むと
黒白縞のハチとその巣が見えます。ハチクマはスズメバチなどの巣を襲撃し、ハチの幼虫や蛹(サナギ)を食べます。今年「まなびの森」ではハチクマによる襲撃痕を5~6ヶ所見つけました。
 9月も終わりが近づくと、秋の草花が咲きはじめます。イヌショウマ、シロヨメナ、アズマレイジンソウ、トリカブトなど。その中でも、シカが好まないシロヨメナは森の中のアチコチに沢山花を咲かせています。

  • 長雨に誘われるように現れたアズマヒキガエル

  • 今年も猛毒のカエンタケが発生しました 手に触れるだけでも皮膚が爛れる恐れあり

  • カメムシから生えた冬虫夏草の仲間、カメムシタケ

  • 猛禽類のクマタカに襲撃されたクロスズメバチの巣、巣の残骸が散らばっています

  • クロスズメバチの巣のアップ

  • ブナの実

  • 試験管ブラシのような花を咲かせるイヌショウマ

  • シロヨメナ、なぜかシカが食べないので「まなびの森」でも増えています

ページの先頭へ戻る