自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
    四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
    みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
    お待ちしております。
    富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏
    
 日暮れがだんだん早まるにつれて、残暑も納まりを見せはじめ秋が深まっていきます。
 普段はあまり訪れることがない森の箇所を歩いていると、神々しいホオノキの巨木に出遭いました。幹周りは優に6mを越えているようです。
 秋はやはりキノコの季節です。今年は秋も気温が高めなせいか、夏のキノコであるタマゴタケが9月になっても傘の直径が25㎝ほどの大きなものが発生しました。
 コチャダイゴケは少し変わった形をしています。腐食がすすんだ木片の上にまるでコップを並べたように発生し、コップの中には碁石状の塊がたくさん入っています。この塊(小粒塊と言う)の中には胞子が入っていて、雨粒に打たれるとその塊ごとコップから弾き飛ばされて胞子を拡散します。実にユニークな生態をもっています。
 今年も「まなびの森」で何回か猛毒のカエンタケが発生しました。中でも一番気味悪かったのは写真で紹介した地面から赤い手が伸びているようにも見えるものでした。触るだけでも皮膚が爛れると言われているので、どこかで見つけても決して触らないようにしてください。
 秋の草花のナンバーワンはなんと言ってもその優雅な姿のアズマレイジンソウでしょう。
ほかには、毎年見かけるギンリョウソウモドキやトリカブトなど。
 ある日、フォレストアーク玄関を夕方閉めようとしたら、扉の陰にアズマヒキガエルが潜んでいました。まさか、そのまま冬眠をするつもりではなかったと思いますが、突然の出現にチョッとビックリしました。キッとカエルの方もビックリしたことでしょう。
 森の中で小さなイガイガを纏った丸い可愛らしいキノコを見つけました。ヒメホコリタケらしいです。ハリネズミを連想させる姿に思わずニッコリ、ホッコリしました。
 こうして「まなびの森」は来月には紅葉のシーズンを迎えようとしています。
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     神々しいほどのホオノキの巨木
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     食用キノコの王様、タマゴタケ
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     ウスヒラタケが倒木にビッシリと発生 これも優良食菌です
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     ギンリョウソウモドキ 別名はアキノギンリョウソウ
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     アズマレイジンソウ
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     チシオタケ(血潮茸) 和名は手で傘や軸を触ると赤い汁が滲んでくるようすを表している
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     コチャダイゴケ(小茶台苔) コップ状本体の中に碁石が入っているような変わった形のキノコ
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     変形菌の1種であるエダナシツノホコリ(枝なし角ホコリ)
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     猛毒のカエンタケ(絶対に手で触らないこと)、今回のものは地面から赤い手が生えているような気味悪さ…
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     フォレストアーク玄関扉の影に隠れていたアズマヒキガエル
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     ハリネズミを彷彿とさせるヒメホコリタケの幼菌
 
 夏の盛りになると森のアチコチで濃厚な甘い薫りが漂ってきます。クサギの花が咲いているのです。葉っぱを揉むと青臭い匂いが強く鼻を刺激することから「臭木」と名付けられていますが、人によっては「チョッと青臭いピーナッツバターの匂い」と表現することもあります。クサギの花の薫りはとても強く30~50m離れたところでもするので、ひらけた場所では色々なチョウ、特にミヤマカラスアゲハやモンキチョウなどのアゲハの仲間が好んで吸蜜にきます。
 白色の花を咲かせるオトコエシ(男郎花)は、秋の七草の1つで黄色の花のオミナエシ(女郎花)の仲間です。この花にも甘い薫りがあり、沢山の虫を呼び寄せています。
 地面に目をやると、先がオレンジ色をした細長い黒い棒のようなものが見られます。その根元には必ずカメムシの死骸があります。冬虫夏草の仲間、カメムシタケです。その形から別名がミミカキタケとも。色が目立つので冬虫夏草の中でも比較的見つけやすいです。
冬虫夏草の仲間は種類によって違う虫に寄生するので、殺虫剤の代わりとして害虫の抑制に利用しようとする研究が進められています。
 夏の始めに鳴きはじめたヒグラシに代わってミンミンゼミが鳴き、それに続いてツクツクボウシが鳴きはじめると少しずつ夏の終わりの気配が「まなびの森」に伝わり始めます。そして、ススキが穂を出し、開花するといよいよ初秋となります。
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     夏の盛りを告げるクサギの花、濃厚な薫りをあたり一面に漂わせチョウたちが沢山寄ってくる
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     葉の形がボタン(牡丹)にソックリなことで名付けられたボタンヅル(牡丹蔓)
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     オミナエシの親戚、オコトエシの花に色んな虫が吸蜜に寄ってきます
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     冬虫夏草の仲間であるカメムシタケ、オレンジ色の頭部が目立つので見つけやすい
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     カメムシタケはその姿形からミミカキタケと言う別名があります
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     ススキの穂が開花し、秋の訪れを告げている
 
 6月は初めに何度か大雨に見舞われましたが、7月は一転、雨の少ないカラ梅雨気味な天気でした。
街は連日の猛暑ですが、標高1,100mの「まなびの森」も30℃近くの暑さとなっています。その暑さを少し和らげてくれるのがヒグラシの鳴き声です。涼し気にカナカナカナァ~と言う鳴き声はなんとも心地よいです。
 毎年、黄緑色のかわいらしいクモキリソウが林床に咲きますが、今年見つけたクモリキソウは苔むした樹の幹に咲いていました。まるで、暑さを逃れて苔の中で涼んでいるようでした。また、同じく毎年場所を変えながら咲くキバナノショウキランが今年は1ヶ所で13株もの大きな群落になって咲いていました。菌従属栄養の無葉ランであるキバナノショウキランが毎年予測不能な場所で花を咲かせるのがとても不思議で、それを探すのが楽しみの1つとなっています。
 ヒメシャラが沢山咲いています。いつもは地面が白い落花で敷き詰められたようになっていることでヒメシャラの開花を知りますが、今年は若い木もたくさん花をつけたことで初めて咲いているところを写真に収めることができました。
 「まなびの森」のシンボリックな樹「長老シナノキ」の辺りで甘い薫りが漂っています。いままで嗅いだことがない薫りです。「なんだろう?」と辺りを見廻してもわかりません。双眼鏡で見上げると20mほどの高さのシナノキのてっぺんで細かな白い花が沢山咲いているのが見えました。シナノキの花はとても甘い薫りがすると話には聞いていましたが、実際に体験するのは初めてでとても感激しました。更に、辺りを探すと、地面にシナノキの花が落ちていました。落花を拾って嗅ぐとやはり甘い薫りがします。
 今年は夏の「まなびの森」でも新しい発見が多くできました。
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     ヒグラシがズボンの裾に
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     普通、林床に見られるクモキリソウが苔むした樹の幹に
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     題して「木登りクモキリソウ」
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     キバナノショウキランの大きな群落
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     キバナノショウキランは菌従属栄養の無葉ラン
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     ヒメシャラの花を見るとツバキの仲間だとわかります
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     ヒメシャラのアップ
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     蜜を吸いに小さなコガネムシが花に潜り込んでいます
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     地面に落ちていたシナノキの花 落花もとても甘い薫りがします
 
          








                        



                        

















                        
                        
                        








