まなびの森通信

まなびの森通信

自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏

【第200回】立春を過ぎて春はもうすぐ、のはずが...

2022年 2月28日

■2月管理人日記

 1月に続いて野鳥の会の皆さんによる鳥獣生息調査が2月13日に行われました。前日の雪のために路面の凍結を心配して、予定を2日ずらしての調査でした。先月の調査の時はアトリの大きな群れを見かけましたが、今回も150羽ほどのアトリの群れと出逢いました。スズメより一廻り大きいアトリですが、そんな小鳥が150羽も集まると飛び立つ時のバタバタッとあたりを包む羽音にはチョッと驚かされます。
 シカやイノシシ、タヌキなどセンサーカメラに映る動物たちの行動を雪は足跡として記録しています。トレイル上にシカの足跡が残っています。そしてそれを追っていくと途上にコロコロとしたシカ糞や黄色い放尿の跡も残っています。
 今年の2月は特に寒さがいつまでも厳しく、積もった雪が2週間半経った月末になっても融けずに残っています。去年は2月半ばに開花したオニシバリも固い蕾を閉じたままです。探し回ってやっと日当たりの良い場所で一輪だけ開花しているのを見つけました。
 2(ふ)月23(じさん)日はご存知のように語呂合わせ「富士山」の日でした。そして、その日の朝の富士山頂の最低気温が―22.3℃だったそうです。なんとも不思議な偶然の一致ではありませんか。
 逃げるように2月が過ぎましたが、ここ「まなびの森」の春はあともう少し先となりそうです。

  • 先月に続いて降雪がありました

  • 翌日は快晴に

  • 富士山も綺麗に雪化粧(ゲート前にて)

  • 雪化粧の森の中の「長老シナノキ」

  • 雪原にシカの足跡が続いています

  • まだ固く閉じているミツマタの蕾

  • ミツマタと同じ仲間のオニシバリの蕾も固く閉じたまま

  • そんな中オニシバリが一輪だけ開花していました

【第199回】新しい年を迎えました

2022年 1月31日

■1月管理人日記

 新年が明けてまもなく「野鳥の会」の皆さんによる「鳥獣生息調査」が行われました。-2℃ほどと寒さが少し緩んだ日に行われました。野鳥の種数は20種とそこそこ見られましたが、啼き声や飛んでる姿など記録は少なかったです。その中で、50羽ほどのアトリの大きな群れに出遭いました。エサを求めて、高い位置にあるブナなどの枝を突っついています。アトリ(体長16㎝)は時には大きな群れとなって森を訪れる、スズメ(同14.5㎝)より少し大きな冬の渡り鳥です。
数日前に降った雪が森の中にもまだ少し残っていたので、ふだんは姿を見ることができないテンやタヌキ、ウサギなどの足跡も確認できました。「フォレストアーク」の玄関先にもタヌキとウサギの足跡がみられました。一度雪が積もると、センサーカメラでしか存在がわからない動物たちの姿が浮かび上がってきます。
 ある日、別の調査で森を廻っていた時30羽ほどカラスが飛び廻っているのを見かけました。そんな沢山のカラスが飛んでいるのを「まなびの森」で見かけることはあまりないので、動物の死骸でもあるのかとあちこち広範囲に見て廻りましたが、残念ながらなにも見つかりませんでした。謎のままとなりましたが、想像できるのは「富士山スカイライン」沿いでシカが車に撥ねられたのではないでしょうか。
 冬至がすぎて1ヶ月以上経ちましたので日はだいぶ長くなりましたが、森の樹々は冬芽を固く閉じ寒さに耐えています。春一番に花を咲かせるオニシバリやミツマタ、アブラチャンも花芽をギュッと固くしています。
 日によってはヤマガラやシジュウカラ、ゴジュウカラなどの小鳥たちがエサを求めて「フォレストアーク」の周囲の樹にたくさん集まってきて賑やかになる時があります。キツツキがコツコツと樹の幹を叩いて虫を探している姿も見かけます。
 一年で一番寒い2月が訪れようとしていますが、その先には春が控えています。

  • 年明け間もなく雪化粧したフォレストアーク

  • アトリの群れ ※ 野鳥の会 南富士支部 遠藤英一さんが別の場所で撮影されたものをご厚意で提供していただきました

  • フォレストアークの玄関先にはタヌキの足跡

  • 樹々は白く美しく雪化粧

【第198回】冬本番

2021年12月31日

■12月管理人日記

 樹々の落葉が終わるといよいよ本格的な冬となります。寒さのため霜柱は大きく育ち、10㎝以上にもなります。ササの葉には霜が朝日を浴びてキラキラと宝石のように煌めいています。
 見通しの良くなった森の南西には駿河湾と美保の松原が見え、北側には真っ白に雪化粧した富士山が見られます。殺風景な冬の森からのせめてもの贈り物と言えます。
 シカも食べ物探しに苦労しているのでしょうが、その中でも好物があるようです。キハダの樹皮です。地面に近い根ぎわの幹やむき出しになっている根の樹皮をセッセとかじって食べているのです。周りにはブナやケヤキ、カエデの仲間などいろんな木が生えていますが、かじっているのはキハダばかりです。樹皮が剥けると黄色いので「黄肌」の名前が付いたのですが、樹皮は「黄柏(おうばく)」と呼ばれ有名な胃腸薬となります。木曽の「百草」や奈良の「陀羅尼助(だらにすけ)」はキハダのエキスから作られた胃腸薬として有名です。胃腸薬以外にも薬効があるようですが、まさかシカも胃腸薬代わりにキハダをかじっているわけではないでしょうが… それでも、なにか薬効を求めているかも知れないと疑いたくなるほどにキハダはかじられています。
 「まなびの森」植樹エリアの少しひらけた場所で尖った枯れ木に干からびたものがぶら下がっていました。よく見ると干からびたものはミミズでした。と言うことは「モズの早贄(はやにえ)」です。早贄はモズの冬の備蓄食料と言う説が有力ですが、ほかにも餌を食べる時に固定して食べやすくするとか、モズの習性だとかいろいろな説があるようです。植樹エリアの樹々が育ってきて草原性のモズをあまり見かけなくなった「まなびの森」ですが、少しひらけた場所にはまだモズがいることを証明してくれました。
 冬はキノコにはなかなか出会えません。そんな中で硬いサルノコシカケの仲間がみられます。古い倒木にはまるで瓦葺の屋根かと思うほど重なってビッシリとキノコが生えています。名前は見たままで、カワラタケです。
 2021年もいよいよ終わりとなります。今年1年ご愛読ありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

  • 真冬の風物詩、大きな霜柱

  • ササの葉にキラキラと霜の芸術が出来ました。

  • 木立の向こうに駿河湾と「美保の松原」がみえます

  • 真っ白に雪化粧した富士山も木立の向かうに

  • シカはなぜかキハダの樹皮が大好きなようです

  • 植樹エリアで見かけたモズの早贄(はやにえ)

  • 古い倒木に瓦葺屋根のように重なって生えるカワラタケ

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