自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏
■10月管理人日記
日に日に空気が澄みわたり、季節は晩秋に向かっています。カツラの枯れ葉が醸し出す甘い香もよく薫ってきます。富士山が4合目辺りまで雪化粧した10月下旬のある日、急に冷え込んだことで紅葉・黄葉がスタートしました。そして、1週間ほどすると色づきが鮮やかになりました。シカが恋の季節を迎えているので、和歌に詠まれたとおりキョーンと言う甲高い鳴き声も時々聞こえます。(「奥山に紅葉踏みわけ 鳴くシカの 声きく時ぞ 秋は悲しき」猿丸太夫 古今集、百人一首)
林床に淡い水色のかわいらしい花が見られます。トリカブトの仲間のアズマレイジンソウです。花の上部が雅楽を演奏する「伶人」が被る冠に似ているところからつけられた名前です。
秋はやはりキノコの季節です。
大きな株に育つハタケシメジ、ナラタケの他、変わった形のノボリリュウや一日で黒く溶けるように消えていくヒトヨタケ(一夜茸)などなど。
また、ブナの周りには薄黄色の小さなキノコが沢山見られます。まるで小さな森の精霊が持っている傘のようにも見えます。ウスキブナノミタケと言う名前で、その名の通り地中に埋もれたブナの実から生えます。掘り起こすとそのことが良くわかります。
逆立った毛が沢山生えているようなキノコがあります。チシオタケと言うキノコからタケハリカビと言うケカビの仲間が生えているのです。逆立った毛のように見えるのは胞子を作る器官です(専門用語で胞子嚢柄と言います)。
秋になるとよく見かけるようになるのが長い足を持ったクモに似た虫です。メクラグモとも称されるザトウムシです。クモとは身体の構造が違います(クモは頭胸と胴がくびれてはっきり分かれているのに対し、ザトウムシはそれが密着して一塊りに見える)。「千と千尋の神隠し」に出てくる「窯爺」のモデルとなったことでも有名です。
黄落がはじまると寒い冬がすぐそこに迫っています。
-
モミジの仲間が色づきはじめました
-
赤、橙、黄、緑と葉が錦を織りなしています
-
紅葉が始まって1週間もするとみごとに紅く染まります これはコハウチワカエデ
-
アズマレイジンソウ(吾妻伶人草)
-
ハタケシメジは食べ応えがある美味しい食菌
-
変わった形のノボリリュウ
-
名前の通り一夜で溶けるように消えるヒトヨタケ 傘の縁が黒く溶け始めています
-
ブナの実から生えるウスキブナノミタケ(薄黄橅之実茸)
-
地面を掘ってみるとブナの実から生えていることがわかります
-
チシオタケからタケハリカビ(茸針カビ)が発生して毛むくじゃらに
-
ザトウムシ(座頭虫)が虫を捕食中
■9月管理人日記
9月に入ると雨が多くなり、日に日に秋らしくなっていきます。
その長雨に誘われるように、普段は姿を見せないアズマヒキガエルがフォレストアークの傍に現れました。
今年は都会の公園などで猛毒のカエンタケが発生して新聞、テレビで話題になっています。「まなびの森」では昨年数ヶ所で発生したので、今年もナラ枯れを起こしたミズナラの根元を中心に探した結果、1ヶ所でその色鮮やかで毒々しい姿を見つけました。触るだけでも皮膚が爛れる恐れがあるので、どこかで見つけても決して触らないようにしてください。
森の落ち葉の間から細長いマッチか線香花火のようなものが立ち上がっています。その根元にはカメムシの死骸があるので、冬虫夏草の仲間のカメムシタケだとわかります。
地面に7~8㎝の穴が開いていて、辺りにハチの巣の残骸が散らばっています。猛禽類のハチクマが好物のクロスズメバチ(通称ジバチ)の巣を襲った痕です。穴の中を覗き込むと
黒白縞のハチとその巣が見えます。ハチクマはスズメバチなどの巣を襲撃し、ハチの幼虫や蛹(サナギ)を食べます。今年「まなびの森」ではハチクマによる襲撃痕を5~6ヶ所見つけました。
9月も終わりが近づくと、秋の草花が咲きはじめます。イヌショウマ、シロヨメナ、アズマレイジンソウ、トリカブトなど。その中でも、シカが好まないシロヨメナは森の中のアチコチに沢山花を咲かせています。
-
長雨に誘われるように現れたアズマヒキガエル
-
今年も猛毒のカエンタケが発生しました 手に触れるだけでも皮膚が爛れる恐れあり
-
カメムシから生えた冬虫夏草の仲間、カメムシタケ
-
猛禽類のクマタカに襲撃されたクロスズメバチの巣、巣の残骸が散らばっています
-
クロスズメバチの巣のアップ
-
ブナの実
-
試験管ブラシのような花を咲かせるイヌショウマ
-
シロヨメナ、なぜかシカが食べないので「まなびの森」でも増えています
■8月管理人日記
今年の8月はシトシト雨が降ったり、霧がかかったりとスッキリしない日が多かったです。その所為か、「フォレストアーク」の玄関先には何回もイヌセンボンタケが発生しました。例年ですと、梅雨時に1~2回発生するだけですが、今年は5~6回発生しました。このイヌセンボンタケ今はナヨタケ科に分類されていますが、発生して1日で消滅してしまうこともあって以前はヒトヨタケ(一夜茸)科に分類されていました。
今年は都会の公園などで猛毒のカエンタケがあちこちで発生しているとニュースで話題になっています。「まなびの森」でも昨年数ヶ所のナラ枯れしたミズナラの根元で発生したので、今年も注意して見廻っていますが幸い見かけません。色鮮やかな朱色をしたカエンタケは素手で触るだけでも皮膚が爛れることがあるそうです。「きれいなキノコだ」と触ったりしないように皆さんも十分気を付けてください。
8月初めには早くもアカトンボの飛んでいるのを見かけ、8月中旬にはヒグラシに代わってツクツクホウシが鳴きはじめました。そして、8月最後の週になってススキが穂を伸ばしてきました。
晴れると日差しは強く暑いですが、日に日に秋らしくなってきています。
-
フォレストアーク玄関先に発生したイヌセンボンタケ 1日で消滅します
-
猛毒のカエンタケ 宝石サンゴのような美しさ、でも触らないで!(昨年の写真)
-
里では稲穂が色づき、山ではススキが穂を伸ばしています