まなびの森通信

まなびの森通信

自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏

【第199回】新しい年を迎えました

2022年 1月31日

■1月管理人日記

 新年が明けてまもなく「野鳥の会」の皆さんによる「鳥獣生息調査」が行われました。-2℃ほどと寒さが少し緩んだ日に行われました。野鳥の種数は20種とそこそこ見られましたが、啼き声や飛んでる姿など記録は少なかったです。その中で、50羽ほどのアトリの大きな群れに出遭いました。エサを求めて、高い位置にあるブナなどの枝を突っついています。アトリ(体長16㎝)は時には大きな群れとなって森を訪れる、スズメ(同14.5㎝)より少し大きな冬の渡り鳥です。
数日前に降った雪が森の中にもまだ少し残っていたので、ふだんは姿を見ることができないテンやタヌキ、ウサギなどの足跡も確認できました。「フォレストアーク」の玄関先にもタヌキとウサギの足跡がみられました。一度雪が積もると、センサーカメラでしか存在がわからない動物たちの姿が浮かび上がってきます。
 ある日、別の調査で森を廻っていた時30羽ほどカラスが飛び廻っているのを見かけました。そんな沢山のカラスが飛んでいるのを「まなびの森」で見かけることはあまりないので、動物の死骸でもあるのかとあちこち広範囲に見て廻りましたが、残念ながらなにも見つかりませんでした。謎のままとなりましたが、想像できるのは「富士山スカイライン」沿いでシカが車に撥ねられたのではないでしょうか。
 冬至がすぎて1ヶ月以上経ちましたので日はだいぶ長くなりましたが、森の樹々は冬芽を固く閉じ寒さに耐えています。春一番に花を咲かせるオニシバリやミツマタ、アブラチャンも花芽をギュッと固くしています。
 日によってはヤマガラやシジュウカラ、ゴジュウカラなどの小鳥たちがエサを求めて「フォレストアーク」の周囲の樹にたくさん集まってきて賑やかになる時があります。キツツキがコツコツと樹の幹を叩いて虫を探している姿も見かけます。
 一年で一番寒い2月が訪れようとしていますが、その先には春が控えています。

  • 年明け間もなく雪化粧したフォレストアーク

  • アトリの群れ ※ 野鳥の会 南富士支部 遠藤英一さんが別の場所で撮影されたものをご厚意で提供していただきました

  • フォレストアークの玄関先にはタヌキの足跡

  • 樹々は白く美しく雪化粧

【第198回】冬本番

2021年12月31日

■12月管理人日記

 樹々の落葉が終わるといよいよ本格的な冬となります。寒さのため霜柱は大きく育ち、10㎝以上にもなります。ササの葉には霜が朝日を浴びてキラキラと宝石のように煌めいています。
 見通しの良くなった森の南西には駿河湾と美保の松原が見え、北側には真っ白に雪化粧した富士山が見られます。殺風景な冬の森からのせめてもの贈り物と言えます。
 シカも食べ物探しに苦労しているのでしょうが、その中でも好物があるようです。キハダの樹皮です。地面に近い根ぎわの幹やむき出しになっている根の樹皮をセッセとかじって食べているのです。周りにはブナやケヤキ、カエデの仲間などいろんな木が生えていますが、かじっているのはキハダばかりです。樹皮が剥けると黄色いので「黄肌」の名前が付いたのですが、樹皮は「黄柏(おうばく)」と呼ばれ有名な胃腸薬となります。木曽の「百草」や奈良の「陀羅尼助(だらにすけ)」はキハダのエキスから作られた胃腸薬として有名です。胃腸薬以外にも薬効があるようですが、まさかシカも胃腸薬代わりにキハダをかじっているわけではないでしょうが… それでも、なにか薬効を求めているかも知れないと疑いたくなるほどにキハダはかじられています。
 「まなびの森」植樹エリアの少しひらけた場所で尖った枯れ木に干からびたものがぶら下がっていました。よく見ると干からびたものはミミズでした。と言うことは「モズの早贄(はやにえ)」です。早贄はモズの冬の備蓄食料と言う説が有力ですが、ほかにも餌を食べる時に固定して食べやすくするとか、モズの習性だとかいろいろな説があるようです。植樹エリアの樹々が育ってきて草原性のモズをあまり見かけなくなった「まなびの森」ですが、少しひらけた場所にはまだモズがいることを証明してくれました。
 冬はキノコにはなかなか出会えません。そんな中で硬いサルノコシカケの仲間がみられます。古い倒木にはまるで瓦葺の屋根かと思うほど重なってビッシリとキノコが生えています。名前は見たままで、カワラタケです。
 2021年もいよいよ終わりとなります。今年1年ご愛読ありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

  • 真冬の風物詩、大きな霜柱

  • ササの葉にキラキラと霜の芸術が出来ました。

  • 木立の向こうに駿河湾と「美保の松原」がみえます

  • 真っ白に雪化粧した富士山も木立の向かうに

  • シカはなぜかキハダの樹皮が大好きなようです

  • 植樹エリアで見かけたモズの早贄(はやにえ)

  • 古い倒木に瓦葺屋根のように重なって生えるカワラタケ

【第197回】前半は意外に暖かかった11月...

2021年11月30日

■11月管理人日記

 11月にはいるとメッキリ寒くなるのが普通ですが、前半は小春日和の暖かい日が続きました。そんな中、今年最終の14校目となる「自然体験教室」を無事終えることができました。当日の午前は本降りと言う天気予報のため、「教室」を午後にずらしたことで森での活動ができました。子どもたちが森を歩きながら思い思いの落ち葉を拾い、それをフレームに挟んで日にかざすと素敵な「森のステンドグラス」が完成します。
 先月ご紹介した落ち葉が甘い薫りを漂わせるカツラですが、巨木が「フォレストアーク」のすぐ近くにあることを不覚にもいままで知りませんでした。「フォレストアーク」の前に直径20㎝ほどの若いカツラがあるのですが、反対の裏側になんと直径1mを越える「カツラの親分」が生えていたのです。
 森の中でひと際鮮やかに紅に染まっている一角があります。メグスリノキと言う樹で、葉は3枚の複葉なので一見分りづらいですがカエデの仲間です。メグスリノキはその名の通り日本で古くから小枝や葉を乾燥させたものを煎じた汁を眼病の洗眼に用いたことに由来します。科学的にも炎症を抑える、血行を良くするなどの薬効が認められています。メグスリノキの落葉が森の中でも一番最後の方なので、落葉シーズンの終わりを告げる樹でもあります。そして、森はウラジロモミやヒノキ、広葉樹に付いているヤドリギやツルマサキだけが青々としている冬枯れの風景となります。
 小春日和の暖かさが続いたお蔭か、陽だまりにいるとこの時期には珍しいアキアカネが飛んできて作業ズボンの上に留まって動こうとしません。
 そして、「フォレストアーク」の戸締りをしている夕暮れにザトウムシが餌であるイナゴを捕まえたところを見かけました。普段はゆっくりと動くザトウムシですが、イナゴを捉えているのには少し驚きました。ザトウムシは「千と千尋の神隠し」に出てくる「窯爺(かまじい)」のモデルと言われているクモに似た虫です。
 寒い冬枯れとなり今年もいよいよ最後の月を迎えようとしています。

  • 「自然体験教室」で出来上がった「森のステンドグラス」

  • 丸ハート形をしたカツラの落ち葉は甘い薫りを漂わせます

  • 「フォレストアーク」そばのカツラの巨木

  • 鮮やかに紅葉したメグスリノキ

  • メグスリノキの落ち葉は複葉(3枚の小葉)

  • イナゴを捉えたザトウムシ

  • 小春日和の暖かさに誘われてきたアキアカネ

  • ブナの巨木「千手観音ブナ」は葉を落とし、ツルマサキが青々と

  • 取りついた樹(多分イタヤカエデ)が倒木になっても力強く残っているツルマサキ

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