まなびの森通信

まなびの森通信

自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏

【第193回】梅雨が明けて、本格的な夏がおとずれました

2021年 7月30日

■7月管理人日記

 雷雨をともなう大雨のあと梅雨は一気に明け、夏の青空となりました。
 晴れた日にはカナカナカナと涼し気にヒグラシが鳴きます。森の中でその鳴き声に出遭うと、まるでヒグラシのシャワーを浴びているような心地になりとても癒されます。ヒグラシはその名前から夕方に鳴くように思えますが、実は朝からカナカナと鳴いています。
 森の中、赤銅色の幹をもつ樹の周りに沢山の白い花が落ちています。ヒメシャラの樹です。ツバキ仲間で花は2㎝ほどと小さいですが、一重のツバキによく似ています。ポロッと花の形のまま落ちるところもツバキそのものです。高い枝先につく花を写真に撮ることはかなり難しいので、落ちてきた花を楽しむしかありません。
 梅雨明け前後の大雨のせいもあり、キヨスミウツボやキバナノショウキランの花を今年は見逃してしまいました。一方、ツチアケビは今年も沢山の花を咲かせました。先月ご紹介した「森の中の茶色いアスパラガス」です。このツチアケビは花を見るとランの仲間だとわかりますが、自分では光合成を一切せずナラタケから栄養をもらって生きており、ナラタケが正に生命線となっています。ツチアケビは秋に赤く細長いソーセージのような大きな実を付け、その姿がアケビに似ていることから付いた名前です。
 古い倒木の上に白い塊やオレンジ色の塊が見られます。変形菌や粘菌と呼ばれるものです。変形菌の仲間はアメーバのように動きまわりながらエサとなるバクテリアなどを食べて生長し、それが変形体と言う一塊になりながら最後は小さなキノコのような子実体を作ります。実に不思議な生き物で、日本には500種くらいあるそうです。
 森の中に落ちている枯れ枝には可愛らしい色鮮やかなキノコが生えています。シロキツネノサカズキと言うチャワンタケの仲間です。小さな白い柄のある朱色のコップ状のキノコです。
 サンショウの実が少しずつ大きくなってきました。サンショウの葉や実の香りは動けない植物たちが虫や動物たち外敵から身を守る一つの方法です。私たち日本人はその香りをタケノコやウナギの薬味として使っています。
 バラの仲間やタラノキのトゲも同じく外敵から身を守る方法です。そのトゲトゲしたタラノキの直径2㎝ほどの幹がポッキリと折れています。それほど丈夫な幹ではありませんが、どうしたのでしょうか。
どうもシカがタラノキの葉をムシャムシャと食べるためにグイグイ引っ張ったせいで折れたのでしょう。春の山菜「タラの芽」として珍重されるくらいですから、シカにとっても美味しいエサなのでしょう。トゲは外敵に対して万全ではなかった、ということでしょうか。
しかし、折れても樹皮で繋がっているので下向きの枝先からは新しい芽が伸びてきています。タラノキの生命力の強さをマザマザと見せられた気がします。

  • 赤銅色の幹をもつヒメシャラの周りに沢山の白い落ち花が落ちています

  • ヒメシャラのアップ、2㎝ほどですがツバキそっくりです

  • ツチアケビの花、高さ50~60㎝にもなります

  • ツチアケビのアップ、ランの仲間とわかる花です

  • タマツノホコリと思われる白い変形菌

  • こちらはススホコリと思われるオレンジ色の変形菌

  • 枯れ枝に発生したチャワンタケの仲間、シロキツネノサカズキ

  • サンショウの若い実、表面に沢山のポツポツがありミカンの仲間であるとわかります

  • ポキッと折れたタラノキ

  • 折れた枝先から再び芽を伸ばし始めたタラノキ

【第192回】深い緑の森の中で、

2021年 6月30日

■6月管理人日記

 束の間の梅雨の晴れ間にホオノキやハンショウヅル、サンショウバラが例年通り鮮やかに花を咲かせています。
 ホオノキは花の直径が30㎝にもなる大きな白い花で、辺りに濃厚な薫りを振りまいています。例年、背の高いホオノキの上の方に花を咲かせますが、今年はなぜか低い位置に咲いたものを何度か見かけました。ハンショウヅルはツル性の木で、下向きに咲くつり鐘形の紅紫色の花を「半鐘」に譬えた名前です。花の形は全く違いますが、5~6月に咲く園芸品種のクレマチスやテッセンと同じ仲間です。サンショウバラは大きなピンク色の一重の花を沢山つけ、朝からマルハナバチなどがたくさん集まってきて吸蜜するので辺りがブンブン、ブーンという羽音で賑やかです。
 晴れた日には深い緑の森の中でエゾハルゼミが鳴きはじめ、巣立ちを終えたばかりのシジュウカラやヤマガラのヒナが親鳥に餌をねだる少し幼い啼き声も聞かれます。
 湿気を帯びた森の中では、古い倒木に毎年のようにオレンジ色の色鮮やかなマスタケが生えてきます。ある日気が付くと倒木にオレンジ色の塊がくっついているので、遠目にも良くわかります。また、別の倒木にはヒラタケも生えてきます。
 ヒメシャラの花も咲きはじめましたが、樹のてっぺんに咲くので地面に落ちてきた花弁でしかわかりません。その中でも二廻りも大きな花があります。こちらも5m以上の高さに咲くので落ち花しか写真に撮れません。ヒコサンヒメシャラです。幹に黒い縞模様の線が入っていることで「ヒコサン」だとわかります。
 森の中に茶色いアスパラガスのようなものが生えています。ツチアケビの花芽です。来月にはその花をご紹介できるでしょう。
 スイカズラとウツギが咲くころには6月も終わりに近づいています。スイカズラは花の根元に蜜が沢山あり、吸うと甘いことから付いた名前と言う説もあります。スイカズラは咲きはじめは白い花ですが、日にちが経つとだんだん黄色っぽくなってきます。そのため、「金銀花」と言う別名があります。ウツギは林縁に沢山生えており、近くを歩くだけでとても良い薫りがしています。
 木の杭に小さなハチが自分の尻尾を差し込んでいます。オナガバチが杭の中にいる虫、恐らくカミキリムシの幼虫に卵を産み付けているのだそうです。杭の中にいる虫の場所を触角で感知するのでしょうが、素晴らしい感知能力ではありませんか。自然の中にはまだまだ不思議がいっぱいあります。

  • 30㎝以上ある大きな花を咲かせるホオノキはモクレンの仲間です

  • ハンショウヅルの赤紫色の花

  • マルハナバチが吸密しているサンショウバラ

  • 毎年見かけるオレンジ色が目を引くマスタケ

  • 古い倒木に沢山のヒラタケが発生

  • ヒメシャラより二廻り大きなヒコサンヒメシャラの花

  • ヒコサンヒメシャラの幹には黒っぽい縞模様がある

  • 森の中に茶色いアスパラガス? ツチアケビです

  • 咲きはじめは白いが段々黄色くなるスイカズラの花

  • スイカズラのアップ画像

  • ウツギが満開に

  • オナガバチの仲間が丸太杭にいる虫に産卵している

【第191回】新緑から一気に早い梅雨入りで深い緑に

2021年 5月31日

■5月管理人日記

 例年であれば五月晴れの爽やかな天気が続く5月ですが、今年は3週間も早く5月半ばに梅雨入りとなりました。10日間ほどシトシト、ザァーザァーと梅雨空が続きました。
 そのお蔭で、新緑は一気に濃い緑となり、森は夏の様相となりました。晴れた日には木洩れ日はまるで緑のシャワーが降っているようで、とてもリラックスできます。身体じゅうが緑色に染まるのではないかと思われるくらいです。
 ミヤマザクラやナナカマド、カマツカなどが白い花を咲かせています。みんなバラ科の樹木で、梅鉢の5弁の花びらはお互いよく似ています。林床にはマムシグサの仲間としては少し変わったギザギザの葉形をしたユモトマムシグサやギンランをみかけます。
 サワシバは長細いホップのような実を付け、チドリノキはカエデの仲間と判る実を付けています。この二つの樹木は分類上まったく違いますが、葉形は非常によく似ています。葉っぱを1枚だけ見てもほとんど見分けがつきません。葉が互生になっているのがサワシバで、葉が対生なのがチドリノキです。チドリノキはよく知られている所謂モミジとはまったく違う特徴のない葉形ですが、カエデ類としては変わった形をしています。
 森の中のシカやイノシシのヌタ場は雨が降ると大きな水溜りになります。その上に張り出した枝にモリアオガエルが産卵をしました。15㎝ほどの泡の塊です。
 コロナ禍が続いていますが、感染予防に細心の注意を払いながら今年も小中学生対象の自然体験教室「森林(もり)づくり学習」プログラムが始まりました。そのプログラムが安全・安心に実施できるようにと先月、「まじぇる会」の皆さんに手伝っていただいて設置した「スズメバチトラップ」が何者かに襲撃、破壊されてしまいました。「まなびの森」の中に28個仕掛けたのですが、その内7~8個が壊され、中には地面に叩き落とされたものもあります。スズメバチ誘因のために入れた液体(日本酒と砂糖、酢の混合液)の甘酸っぱい匂いに誘われたのでしょうか。犯人はテンかハクビシンではないかと思われます。
 5月も終わりに近づき、私の大好きなサラサドウダンがかわいらしい花を沢山咲かせ、森に可憐な彩をそえています。

  • 青空に新緑が映えます

  • 自生サクラ10種の1つ、ミヤマザクラ

  • 秋には美しく紅葉するナナカマド

  • 枝や幹が固いことで名前が付いたカマツカ

  • ミズナラの葉形に似ているユモトマムシグサ

  • 少し珍しいギンラン

  • サワシバとその実(ホップの実に似ている)

  • サワシバと似た葉っぱのチドリノキはカエデの仲間

  • ヌタ場の水溜まりにモリアオガエルが卵塊を産卵

  • そのアップ画像

  • 若いシカと遭遇、その距離僅かに10mほど

  • 今年も始まった自然体験教室「森林(もり)づくり学習」プログラム

  • 仕掛けたスズメバチトラップが小動物(テンかハクビシン)に襲撃・破壊されました

  • 大好きなサラサドウダンの花

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