自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏
■3月管理人日記
3月に入ると標高の高い「まなびの森」でもお預けとなっていた春が訪れました。先月の中頃から暖かい日が多くなり、月が替わったとたんにミツマタの蕾が暖かい雨上がりの朝開きました。オニシバリも小さい花ながら満開となり、ミツマタと共に良い薫りを漂わせています。そして、ヤマネコヤナギ(正式な和名はバッコヤナギ)も可愛らしい綿毛の蕾を見せています。
野鳥も活発に活動しはじめ、シジュウカラやヤマガラが囀っています。遠くではウグイスが啼きはじめましたが、まだ流暢に啼けずどことなく舌っ足らずな啼き方をしていました。それも2週間ほどすると聞きなれたあの「ホーホケキョ」となります。
今年は例年よりズッと暖かく、早春の草花たち、例えばアズマイチゲやヤマエンゴサク、コガネネコノメソウ、ユリワサビが2~3週間早く咲きはじめました。マメザクラも蕾が膨らんで、赤みを増してきて4月初めには開花しそうです。
暖かな陽気に誘われてイノシシも食を求めて活発に行動しているようで、落ち葉の上に縦横にエサ探しの食痕が残されています。
3月30日に去年の活動報告や各調査報告と今年の活動計画をステークホルダーの皆さんと話し合う恒例の「企画懇談会」が新型コロナ感染防止を徹底しながら開催されました。例年板の間である「セミナールーム」で開催するのですが、今年は年度末の忙しい時期にもかかわらず23名と参加者が多かった為密を避ける意味で「フォレストアーク」土間で開きました。皆さまから貴重なご意見もいただきましたので、それを活かしながら今年の「まなびの森」を運営していきたいと思っております。
-
ミツマタが暖かい雨上りの朝、開花
-
2週間ほどで満開となり、辺りが甘い薫りに包まれました
-
ヤマネコヤナギの綿毛に包まれた蕾
-
ユリ科のキバナノアマナの可憐な花
-
バイケイソウの新芽
-
3月末には青々としたバイケイソウの群落が出現しました
-
2~3週間早いアズマイチゲの開花
-
早春の花、ヤマエンゴサク
-
シナノキの苔むした所にユリワサビの花が咲いています。
-
イノシシの食痕(この写真ではわかりにくいです)
-
イノシシの食痕ラインに白い点々を付してみました
-
今年の企画懇談会は「フォレストアーク」の土間で開催
-
開会の挨拶を飯塚室長がおこないました
-
初めてご出席いただいた静岡大学の増澤先生がご挨拶
■2月管理人日記
良く「1月往ぬる、2月逃げる、3月去る」と言われます。年明け以来、アッと言う間に月日が経つ様を言い表していますが、2月は日数が少ないので余計に早く感じます。
里ではジンチョウゲが薫り、ウメや菜の花も咲きはじめて早春の気配ですが、「まなびの森」はまだまだと思っていました。ところが、2月とは思えないような暖かな日が続いたこともあってか、オニシバリの花が同じ仲間であるジンチョウゲの薫りを微かに漂わせて咲きはじめました。来月はミツマタも花を開くことでしょう。
寒い朝には大きな霜柱が元気に育っています。そして、薄っすらと雪が降った朝には「フォレストアーク」の周りに置いている木製ベンチの上に小鳥が歩き廻った足跡が残されていました。残念ながら、鳥の種類は判りません。
先月に続いて野鳥の会の皆さんによる鳥獣生息調査が行われました。先月は極寒の日でしたが、今回は暖かな日でした。暖かさに誘われてさぞや鳥の姿や啼き声が賑やかだろう、と期待されましたが、意外にも17種と少なかったです。冬鳥はその年の渡り鳥の来訪場所がどこかと言うことで種類数や個体数の変動が大きいと聞きました。
ある日、クマシデと思われる大きな木が途中で折れて地面に落ちていました。恐らく、くっ付いていたツルウメモドキの蔓の重さに耐えかねたのでしょう。ツルも一緒に落ちていました。クマシデは樹皮がそのままちゃんと付いていましたが、ツルの方は樹皮が剥げてつるつるになっていました。冬の間、食糧難になっているシカが比較的厚みのあるツルウメモドキの樹皮を食べたのでしょう。色々な樹木に絡みついて生きているツルウメモドキの樹皮がシカに齧られているのは目にしたことはないので、折れて枯れたことで樹皮が剥けやすくなったなどの理由でシカが食べやすくなったのだろう、と思われます。
春はすぐそこまで来ていますが、標高が1,110mと高い「まなびの森」ではもう少しの間「お預け」となります。
-
富士山と菜の花畑、早春の景色です
-
15㎜ほどの小さなオニシバリの花、これは雄株で花粉を付けた雄花です
-
元気に大きく育った霜柱
-
雪化粧したベンチの上をどんな鳥が歩いたのでしょう
-
クマシデとツルウメモドキが折れて地面に落ちていました
-
ツルウメモドキの方は樹皮が齧り取られてつるつるに
■1月管理人日記
冬枯れの落葉広葉樹林は見通しが良いこと、樹形がよく判ることを先月お伝えしました。
それとともに、着生しているヤドリギやツル性で常緑のツルマサキもよく目につきます。ヤドリギは高い木の上にまるで緑のボールがくっついているように見えます。そして、ツルマサキは地面から幹をよじ登っています。
ヤドリギもツルマサキも色鮮やかな実を付けるので、小鳥たちの大好物であり、冬の大事な食糧となります。ヤドリギの実の内側は粘りがあり、種はそのネバネバに覆われているので小鳥のお腹を通り抜けやすく、そのネバネバによって樹皮の上にくっつき、そのまま発芽します。ヤドリギは自分でも光合成しますが、水分と養分の一部は取り付いた木の樹皮の中に伸ばした根を通してその木から譲ってもらう生活様式となっています。
冬枯れの森は一見死んだように見えますが、野鳥やシカ、イノシシが餌を求めて寒い中を飛び交い、動きまわっています。見通しが良いので、そういう姿もよく見かけます。寒いながらも、春に向けて新芽ができており、また早春に咲く花はシッカリ蕾を付けています。例えば、ミツマタやアブラチャンがそうです。
小鳥たちは寒い朝でもにぎやかにエサを求めて飛び交っています。面白いのは、ススキの穂です。12月は穂に沢山の種がついていましたが、寒くなるにつれてなくなっていきます。風に飛ばされていったものもあるでしょうが、コガラやエナガなど体重が軽い小鳥たちが穂先に掴まって種を啄んでいるのです。
今年最初の野鳥の会の皆さんによる鳥獣生息調査が-10℃に冷え込んだ朝に行われました。鳥の姿を写真で紹介することは難しいのですが、冬鳥のアトリやイカル、アカウソなどの姿を見通しのよい森で見ることができました。
富士山南麓はいつまでも雪化粧しないので、寒い中で夏の趣きのままでした。静岡県側で晴天続きのためだったのでしょう。1月終わり近くになってやっと雪化粧した冬の富士山となりました。
今年も皆さんに少しでも多く目新しい、心温まる話題を発信していきたいと思っておりますので、引続き宜しくお願い致します。
-
野鳥の会南富士支部による鳥獣生息調査、「今年もよろしく」でスタート
-
調査を終えて、雪がほとんどない富士山をバックにパチリ!
-
秋のススキの穂には種が沢山ついていました
-
体の小さなコガラやエナガが種を啄んだススキの穂、穂先にはまだ残っています
-
雪化粧した樹々は格別の美しさです
-
白く雪化粧した富士山、強風で雪煙が上がっています
-
寒い朝には木杭の水分が凍りついてキラキラと
-
枯草も凍りついて霜の花ができています