まなびの森通信

まなびの森通信

自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏

【第186回】冬本番が到来

2020年12月31日

■12月管理人日記

 本格的な冬の訪れと共に今年も大きな霜柱があちらこちらに見られるようになりました。日中も融けないからでしょうか、10㎝以上に育つことも珍しくありません。
 巨木たちが葉を落としている冬場は見通しが良く、樹々の形が良く判ります。樹種により特徴的な樹形が楽しめます。例えば、ケヤキは竹箒を逆さまに立てたような形、ミズキは同じところから枝を伸ばしている、などなど。「まなびの森」の高い場所に行けば樹々の間から駿河湾がよく見え、遠く清水港や美保の浜も見え隠れしています。
 例年、冬の期間は「まなびの森」でのイベントもなく、来訪者は途絶えます。しかし、今年は1つだけイベントがありました。静岡県環境政策課の主催で森林環境教育の観点から「企業が取組む森林環境教育」と言うイベントが開かれました。昨年、私が「森林環境教育指導者養成講座」を受講したご縁もあり、「まなびの森」でのボランティア活動や自然体験教室、さまざまなモニタリング調査について20名ほどの参加者に森を歩きながら紹介しました。後半は、インターネット回線で本社と繋ぎ、企業が環境教育に取組むことの意義などをリモート参加の講師である飯塚室長が皆さんに紹介、説明されました。参加者からの質疑応答で盛り上がった時間となりました。
 一昨年10月末に「まなびの森」のお隣さんであった静岡県立富士山麓「山の村」が閉鎖され、昨年6月から行われていた解体工事が、12月末で終了します。解体工事期間中は現場責任者の方などと事務連絡などのやり取りがありましたが、それもなくなるかと思うと一抹の寂しさを覚えます。
 寒さはこれから2月ごろまで厳しさを増すでしょうが、冬至が過ぎて日ごとに昼間の時間が伸びていて暖かな春の訪れが待ち遠しいです。

  • 10㎝以上に大きくなった霜柱

  • 夕陽を受けて紅く染まったケヤキの巨木、別名「海の見えるケヤキ」

  • そのケヤキを反対側から見ると駿河湾が見えているのですが… (写真は難しい!)

  • 「フォレストアーク」での講座のようす

  • リモート参加の飯塚室長と本社パソコンに映し出された会場のようす

【第185回】冬を目前に黄落がひらひらと、

2020年11月30日

■11月管理人日記

 一雨ごとに樹々から沢山落ち葉が降ってきます。まさに黄落(または、紅落)の季節です。街中だと落ち葉の掃除が大変でしょうが、ここは「まなびの森」です。落ち葉が降り積もるのに任せています。そんな中で、辺りが甘い香りに包まれているところがあります。まるで、綿菓子の屋台がそばにあるような感じですが、カツラの落ち葉が発する甘いカラメルの香りです。カツラの名前の由来も葉を香料に用いたことから「香(か)出(づ)ら」だと言う説が有力です。
 実は、都会のど真ん中、東京・銀座中央通りにカツラが並木として植わっています。先日、銀座を通りかかった時に茶色い落ち葉を拾って匂いを嗅ぐと微かですがあの甘い香りがしました。皆さんも機会があれば是非試してみてください。
 今年の紅葉は例年より色鮮やかに感じます。恐らく、夏~秋に台風の襲来がなく、樹の葉が強風に煽られて傷まなかったことと夏の高温が大きな二つの要因かと思われます。
 オオモミジやハウチワカエデに混じって、色鮮やかに紅葉した三枚葉の落ち葉があります。三つ葉になっていてカエデ類には見えませんが、同じくカエデの仲間のメグスリノキの葉です。古くから民間薬として用いられ、その煎じ薬には科学的分析で炎症を抑えたり、利尿作用や血行を良くするなどの作用があることが分かっています。メグスリノキと言う名前もそうやって古くから民間薬として使われてきたからのものです。
 11月後半に入ると、紅葉も散って冬枯れの様相となりました。見上げると小さな赤いものが沢山枝先についています。まるで、花の蕾かと思ってよく見るとマユミの赤い実でした。地面にも沢山落ちています。マユミは材にしなりがあり、強いため弓の材料になることで付いた名前だそうですが、弓のすべてがマユミで作られたわけではありません。
 今年はミズナラなどのドングリが不作だそうですが、同じ仲間のブナは豊作のようです。「まなびの森」にも沢山のブナの実が落ちています。リスやネズミ、イノシシなどの大好物で、動物たちが食べきれないほど実を数年に一回実らせ、食べ残されたものが次の世代を継ぐ作戦をブナはとっています。ブナの実は他のドングリと比べると小さいですが、実に渋みがなく人間が食べても美味しいです。
 「まなびの森」はまもなく冬籠りの季節となります。

  • 隣同士でそれぞれ赤と黄色に色づいたオオモミジ

  • 正に「モミジの錦」

  • メグスリノキの大木

  • 鮮やかに赤く色づいたメグスリノキの落ち葉

  • まるで赤い花の蕾のように華やかなマユミの実

  • 地面に落ちているマユミの実

  • ブナの巨木

  • ブナの実は三角形でちょっとソバの実に似ています

【第184回】冬の始まりがやって来た...

2020年10月31日

■10月管理人日記

 例年より早く9月末に富士山の初冠雪が観測され、10月に入ると秋が一気に訪れ、ストーブが欲しくなるほどの冷え込む日もやって来ました。昨年は11月に入ってから見られた通称、雪虫(ワタアブラムシの仲間)が10月になったとたんフワフワと飛び始め、冬の訪れを告げています。
 寒い秋ですが、森の中ではいろいろ秋の草花が美しく咲き誇っています。
 アズマレイジンソウ、アケボノソウ、アカネ、イヌヤマハッカ、ナギナタコウジュ、などなど。
 アズマレイジンソウは毒草として有名なトリカブトに似たキンポウゲ科の植物ですが、その名の通り、どこか気品のある姿です。
 アケボノソウはちょっと不思議な花です。ふつうは星形に5裂ですが、同じ株に4裂のものもよく見られます。また、花弁の真ん中あたりに黄緑色の点が2つずつありますが、これは蜜腺です。蜜で虫を呼び寄せて、花粉の媒介をさせています。蜜腺はふつう花の奥の方、花弁の付け根にできるのですが、アケボノソウは少し変わっています。
 アカネは、額田王の「あかねさす 紫野ゆき 点野ゆき 野守は見ずや 君が袖振る」にも歌われている、昔は根から赤い染料を取った植物です。とても小さな花で、見落としてしまいそうです。
 地面には大きな株になるハタケシメジが発生し、昨年の台風で倒れた太いイタヤカエデからは色鮮やかなマスタケが生えてきました。軸に触れると血潮のように赤い汁が出てくるチシオタケも見られます。
 古い倒木から今年もツキヨタケが沢山発生しました。見た目はヒラタケやシイタケに似ていますが、ツキヨタケは毒キノコです。軸を縦に割ると黒いシミがあるので、見分けは比較的簡単です。暗いところではボゥーっと光るそうですが、残念ながら私はまだ見たことがありません。
そして、地面に落ちた枯れ枝から黒い髪の毛のようなものが出ています。「ヤマンバノカミノケ(山姥の髪の毛)」と称される根状菌糸束です。特定のキノコの種類名ではありません。名付け親は変形菌(粘菌)の研究で有名な南方熊楠先生です。ホウライタケの仲間やナラタケの仲間などがこう言った根状菌糸束を形成するそうで、乾燥や他の微生物の攻撃に弱い菌糸が菌糸束と言う分厚い細胞壁をもつ組織となることで強くなるそうです。
 秋が深まると共にケヤキやイタヤカエデの黄色、ハウチワカエデやミズキ、ヒメシャラの赤と色鮮やかに紅葉が進んでいきます。
 自然体験教室や社員ボランテイア活動などの大きな行事も今月で終了し、「まなびの森」は少しずつ冬へと季節が移っていこうとしています。

  • アキノレイジンソウと優雅で高貴な名前がついています

  • アケボノソウは花弁の真ん中あたりに蜜腺がある ハナアブが吸蜜しています

  • 小さな目立たない白い花をつけたアカネ

  • 大きな株に生長するハタケシメジ

  • 去年の台風で倒れたイタヤカエデから立派なマスタケが発生

  • 姿形がかわいらしいチシオタケは軸を触ると赤い汁が滲んでくる

  • ヒラタケやシイタケに似ている毒キノコ:ツキヨタケ

  • ブナの枯れ枝などから黒い髪の毛のようなヤマンバノカミノケが発生

  • 赤く色づいたサンショウの実

  • 秋の深まりと共に鮮やかにケヤキやヒメシャラが紅葉

  • 富士山と紅葉(近くの西臼塚駐車場にて)

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