自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏
■6月管理人日記
今年は梅雨入りが少し遅めでした。それでも、樹々は着実に例年通り花を咲かせていき、緑陰はどんどん深くなっています。
モリアオガエルが「フォレストアーク」に姿を見せた翌日には雨水桝の中で泡卵塊を産みました。メスが小柄なオスを背中におんぶして産卵するのですが、粘液を足で掻き混ぜて泡状にするらしいです。一度、その様子を見たいと思っていたところ、ついにその日が訪れました。メスの背中になんとオスが2匹負ぶさり、しきりに後ろ足で泡を掻き混ぜているシーンでした。ただ、その場所は「フォレストアーク」の周囲の側溝のグレーチング(鉄の格子)の下でしたので、まるで牢屋の中で産卵しているようにしか見えず、「栄え」ない写真となってしまいました。今年は「フォレストアーク」周囲で合計8個の卵塊を産卵しました。その卵塊から孵化したオタマジャクシが側溝や雨水枡の中で元気に泳いでいます。
ある日、森の中で灰色の羽根が散乱しているのに出会いました。鳥に詳しい方に聞くと、オオタカに襲われたキジバトの羽根だろうとのこと。仕留めたその場で羽根を嘴で毟り、巣にいるヒナの餌として運んだのだろうと想像されます。自然界の中で生き物が生き抜いていくため日々繰り返されている過酷な生存競争の1場面を垣間見たようで、とても感慨深いです。その日はもう一つドラマがありました。草叢をゴソゴソと音がするので目を遣るとずんぐりした茶色のヒナが3羽走っていき、それとは逆方向にウズラより大きなずんぐりした茶色の鳥が走っていきました。そして、反対方向からドドドっとホロ打ちの音が聞こえてきました。ヤマドリの親子と遭遇したのです。母鳥はヒナを守ろうと自分が別方向へ逃げて敵(人間)の注意を惹き、父鳥は威嚇と注意を惹くためにホロ打ちをしていたのです。ヒナを必死で守ろうとする両親の愛をまざまざと見せられました。
昨年はほとんど開花しなかったエゴノキが今年は無数の白い清楚な花を咲かせました。余りにも沢山の花を付けているので、少し大げさに言えばエゴノキ全体が白く見えるほどです。秋には沢山の実を付けるので、ヤマガラなどの小鳥たちがきっと大喜びすることでしょう。
梅雨空の下、今年度2回目の鳥獣生息調査が「日本野鳥の会南富士支部」の皆さんにより行われました。雨こそ降らなかったもののドンヨリとした天気で鳥の啼き声や姿は例年より少ない印象でした。
また、毎年植生調査をしていただいている東京農工大の吉川准教授の研究室の学生さん二人が卒論のテーマとして「まなびの森」での生態調査を決められ、今月下旬からその調査が始まりました。
「まなびの森」もまもなく夏を迎えようとしています。
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蕾は濃い赤で、開花するとピンク色に サンショウバラ
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モリアオガエルがフォレストアークにも姿を見せました
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そして、雨水桝に大きな泡卵塊を産み付けていきました
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側溝グレーチングで産卵中のモリアオガエル
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孵化したモリアオガエルのオタマジャクシ
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キジバトの羽根が散乱していました
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無数の花をつけたエゴノキ
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エゴノキの花、白い清楚な花
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ランの仲間、黄緑色の花のクモキリソウ
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今年度2回目の鳥獣生息調査
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農工大生の卒論生態調査「ツル植物の巻き付きについて」
■5月管理人日記
サラサドウダンが鮮やかに開花しました。開花して数日経つと縁取りの紅色がクッキリしてきます。清楚な白い花を一株に一輪だけ咲かせるヤマシャクヤクは「美人薄命」の譬えどおり花の命が1~2日と短いです。
今年の5月は去年より雨が多く、その為雨上がりの木漏れ日やコケの美しさは格別です。
ゴマギやナナカマド(7回カマドにくべても燃え尽きないほど薪として長持ちする、と言うのが名前の由来)、ホオノキの白い花たちに交じって、ヤブウツギが紅色の花を沢山つけています。そのヤブウツギには蜜をもとめて沢山の蜂たちが寄ってきます。
シカやイノシシがヌタ場(動物が体に付いたダニなどの寄生虫や汚れを落とすためにドロ浴びをする場所)に使ったところが水溜まりとなった部分に差し出ている枝にモリアオガエルの泡卵塊を産みました。泡の中で卵が孵化してオタマジャクシが水溜りに落ちて成長していくと言う奇妙な生態をもつモリアオガエルですが、川がなく、水場がほとんど見つからない富士山で一体カエルはどうやって生活、繁殖しているのかと不思議でなりません。
例年、自然体験教室が開かれる時期になっていますが、今年はご多分に漏れずすべて延期となっています。その中、年に3回行われている踏圧調査の1回目がありました。
さて、来月はサンショウバラが咲くでしょう。どうぞ写真を楽しみにしていてください。
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個人的に一押しの花、サラサドウダン
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清楚なイメージで短命な花、ヤマシャクヤク
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イタヤカエデの若葉、正に「蛙手:カエデ」です
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カエデの仲間のチドリノキの木漏れ日
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そのチドリノキの花
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雨に打たれて一休みしているウスバシロチョウ
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雨上りの苔むした「まなびの森の長老」シナノキ
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葉っぱはゴマの香りを持つゴマギの花は甘い薫り
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ナナカマドの花、同じ白い花でもこちらのにおいはイマイチです
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葉っぱも大きいが花も大きいホオノキ
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白い花が多いこの季節、紅色が美しいヤブウツギの花
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モリアオガエルの泡卵塊、この中でオタマジャクシに孵ります
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ホールアースによる踏圧調査のようす
■4月管理人日記
マメザクラが開花しました。例年より気温が高めだったこともあり、昨年と比べて15日も早い開花となり、2週間ほどして満開となりました。ヤマネコヤナギ(和名はバッコヤナギですが、私はこの別名の方がなんとなく好きです)の白いモフモフの花も可愛らしいです。
林床ではコガネネコノメソウやフデリンドウ、スミレ、ヤマエンゴサクなどがひっそりと咲いています。
ゴマギやバイケイソウが一番に新芽を萌えはじめました。
ゴマギはガマズミの仲間で、葉っぱを揉むとイリゴマのような匂いがします(ゴムの臭いと表現する人もいます)。この匂いのために、シカの食害がほとんど見られません。
バイケイソウは強いアルカロイド毒をもつ多年草です。若芽が山菜として有名なオオバギボウシ(別名:ウルイ)やギョウジャニンニクに似ているため、毎年誤食による中毒(下痢、嘔吐をおこし、重症の場合は死に至ることも)がおきている要注意植物です。毒があるのでシカが食べないため「まなびの森」でも増えている植物の一つです。シカが食べない、イコール増加傾向にある植物、は今や日本の各地で見られる現象です。
シジュウカラやヤマガラ、ヒガラなどのカラ類のさえずりは賑やかさを増し、ウグイスや姿が似ていて「チヨチヨビーィ」と啼くセンダイムシクイの鳴き声も加わって春が真っ盛りなようすです。
来月にはいよいよ私の一押しの花、サラサドウダンが咲くでしょう。写真を乞うご期待。
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満開になったマメザクラの花
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白い富士山との共演
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バッコヤナギ(別名:ヤマネコヤナギ)は富士山と白さの競演
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林床にひっそりと咲くコガネネコノメソウの花
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フデリンドウの愛らしい姿
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オオバギボウシと間違われるバイケイソウ(有毒)
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バイケイソウの大群落