自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏
■2月管理人日記
冬枯れの「まなびの森」にも日差しだけでない春の兆しがみられ始めました。
寒い朝には10㎝近くもある特大の霜柱が出現しますが、日中は春の温かさを感じられる日が多く暖冬が続いています。そんな中、2月中旬過ぎに早くも春告げ花とも言えるミツマタやオニシバリが開花しました。どちらもジンチョウゲ科の仲間です。あたり一面に良い薫りを漂わせるほどではありませんが、花に近づけばジンチョウゲに似た薫りが楽しめます。
ミツマタは名前の通り枝が三つ股に分かれています。たまに気まぐれをおこしたのか、二股や四つ股も見られますが、これはごく珍しいケースです。ミツマタは和紙の原料となる木で、樹皮の繊維が強靭です。現在90%輸入品となっているミツマタを2024年の新札発行に向けて四国・徳島県の山間部耕作放棄地などで増産する動きがあるそうです。オニシバリ(鬼縛り)もその名の通り、繊維が強くしなやかです。
キハダの厚いコルク質の樹皮(外皮)はシカの好みらしく、かじられて黄色い内皮がよく見うけられます。キハダの内皮は苦みがあり「黄柏」と呼ばれる大事な漢方胃腸薬で、木曽の「百草」や吉野の「陀羅尼助」の原料となっています。
2月1日には今年度最後の鳥獣生息調査が「日本野鳥の会南富士支部」の皆さんによっておこなわれました。あいにく大きな群れとなるアトリなどが見られなかったこともあり、鳥の数は19種74羽と少ないようでした。春になって繁殖期を迎える頃にはまた多くの鳥が見られることを願っています。
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寒い冬の朝の風物詩である特大霜柱
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ミツマタ:20~30の花の塊の内の2~3が開花
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オニシバリ:数輪が開花
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キハダの根の樹皮をシカがかじって黄色い内皮が見えている
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日本野鳥の会南富士支部の皆さんによる鳥獣生息調査
■1月管理人日記
冬枯れの「まなびの森」にも僅かに春の兆しがみられます。
この冬は例年と比べ大変な暖冬です(平均気温が+0.6℃で暖冬と定義されるらしいですが、今冬は+2.0℃だそうです)が、やはり「まなびの森」は寒いです。
12月22日の冬至をすぎて2週間が過ぎた1月5日が「まなびの森」仕事始めにあたりました。夕方、フォレストアークから帰宅する時はまだ薄明るく、寒さは厳しいですが日が伸びたことを実感できました。更に、1月末には帰宅時間が夕日の時刻となりました。春が待ち遠しいです。
そんななか通称「まなびの森」キャニオンで無数の霜柱が創りだした不思議な光景が見られました。キラキラと宝石のように輝いていました。また、1月18日にはこの冬一番となる10㎝ほどの積雪がありました。
冬になってしきりにシカの群れを見かけます食料となるものが乏しいので、木の冬芽や樹皮までも食べています。特に、キハダやウラジロモミの樹皮はよく食べられています。食痕が樹を一周するとその樹は枯れる運命となります。
冬のキノコの代表格はエノキタケです。人工栽培されたお鍋の具材によく使われるエノキタケは暗いところで育てられるので白に近い薄クリーム色でヒョロッと長いですね。あれは言わばエノキタケのモヤシです。天然のエノキタケは傘も柄も茶色です。柄の部分には短い毛が生えています。
先月初めに取り付けていただいたエサ台に早くも小鳥たちがやって来ているようです。1ヶ月あまり安全なのかどうか見極めをしていた小鳥たちでしたが、ヒマワリをしきりに啄んでいるようです。その内、小鳥たちの姿を皆さんにご紹介できたらと思っておりますが、エサ台給餌は春までの期間限定となります。餌付けをするのが目的ではないので、森に虫など小鳥の食糧が出始める頃にはエサは置かないルールで運用することをご承知おきください。
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無数の霜柱が創りだした不思議な光景
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1月18日、この冬一番の積雪
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「まなびの森」看板も真っ白に
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真新しいシカによるウラジロモミの根元の樹皮の食痕
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寒い冬に発生するエノキタケ
■12月管理人日記
「まなびの森」はすっかり冬枯れのようすとなってきました。常緑のヒノキやウラジロモミといった針葉樹を除く広葉樹はほとんど葉を落としました。その中で、林床には夏落葉樹であるオニシバリが濃い緑の葉をつけ、落葉で明るくなった林内でセッセと光合成をしています。ブナやイタヤカエデが葉を落として見通しがよくなった樹上では常緑のツルマサキやヤドリギの姿が目に見えるようになりました。ツルマサキは赤い実が良く目立ち、餌が少なくなったこの時季の森の中で小鳥たちの数少ない食糧庫の役目を果たしているようです。また、カエデの仲間のチドリノキは枯れ葉が枝にそのまま残っています。夏から秋にかけて枝先についているチドリノキの種の付き方が群れ飛ぶチドリを連想させることが名前の由来だと図鑑などに載っていますが、冬に枝先に残っている枯れ葉が風に揺れる様子も群れ飛ぶチドリに見立てることもできるなぁと思います。
12月中旬、地元の「野鳥の会」会員の方が小鳥の水浴び場とエサ台を自作されたものを設置していただきました。警戒心の強い森の小鳥たちは安全なのかどうかまだ様子見をしているようで近づいてきませんが、春になればきっと彼らの格好の遊び場兼食堂になるのではないかと今から楽しみにしています。フォレストアークにお越しの際はぜひソーっと覗いてみてください。
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冬も青々と葉を付けているツルマサキ
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ツルマサキが沢山の赤い実をつけている
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ヒメシャラの枝にとまったイカル このあとヒメシャラの冬芽を啄んでいました
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枯れ葉がたくさん残っているチドリノキ
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5㎝以上になった霜柱
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「野鳥の会」の方に設置していただいたエサ台と水浴び場