まなびの森通信

まなびの森通信

自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏

【第185回】冬を目前に黄落がひらひらと、

2020年11月30日

■11月管理人日記

 一雨ごとに樹々から沢山落ち葉が降ってきます。まさに黄落(または、紅落)の季節です。街中だと落ち葉の掃除が大変でしょうが、ここは「まなびの森」です。落ち葉が降り積もるのに任せています。そんな中で、辺りが甘い香りに包まれているところがあります。まるで、綿菓子の屋台がそばにあるような感じですが、カツラの落ち葉が発する甘いカラメルの香りです。カツラの名前の由来も葉を香料に用いたことから「香(か)出(づ)ら」だと言う説が有力です。
 実は、都会のど真ん中、東京・銀座中央通りにカツラが並木として植わっています。先日、銀座を通りかかった時に茶色い落ち葉を拾って匂いを嗅ぐと微かですがあの甘い香りがしました。皆さんも機会があれば是非試してみてください。
 今年の紅葉は例年より色鮮やかに感じます。恐らく、夏~秋に台風の襲来がなく、樹の葉が強風に煽られて傷まなかったことと夏の高温が大きな二つの要因かと思われます。
 オオモミジやハウチワカエデに混じって、色鮮やかに紅葉した三枚葉の落ち葉があります。三つ葉になっていてカエデ類には見えませんが、同じくカエデの仲間のメグスリノキの葉です。古くから民間薬として用いられ、その煎じ薬には科学的分析で炎症を抑えたり、利尿作用や血行を良くするなどの作用があることが分かっています。メグスリノキと言う名前もそうやって古くから民間薬として使われてきたからのものです。
 11月後半に入ると、紅葉も散って冬枯れの様相となりました。見上げると小さな赤いものが沢山枝先についています。まるで、花の蕾かと思ってよく見るとマユミの赤い実でした。地面にも沢山落ちています。マユミは材にしなりがあり、強いため弓の材料になることで付いた名前だそうですが、弓のすべてがマユミで作られたわけではありません。
 今年はミズナラなどのドングリが不作だそうですが、同じ仲間のブナは豊作のようです。「まなびの森」にも沢山のブナの実が落ちています。リスやネズミ、イノシシなどの大好物で、動物たちが食べきれないほど実を数年に一回実らせ、食べ残されたものが次の世代を継ぐ作戦をブナはとっています。ブナの実は他のドングリと比べると小さいですが、実に渋みがなく人間が食べても美味しいです。
 「まなびの森」はまもなく冬籠りの季節となります。

  • 隣同士でそれぞれ赤と黄色に色づいたオオモミジ

  • 正に「モミジの錦」

  • メグスリノキの大木

  • 鮮やかに赤く色づいたメグスリノキの落ち葉

  • まるで赤い花の蕾のように華やかなマユミの実

  • 地面に落ちているマユミの実

  • ブナの巨木

  • ブナの実は三角形でちょっとソバの実に似ています

【第184回】冬の始まりがやって来た...

2020年10月31日

■10月管理人日記

 例年より早く9月末に富士山の初冠雪が観測され、10月に入ると秋が一気に訪れ、ストーブが欲しくなるほどの冷え込む日もやって来ました。昨年は11月に入ってから見られた通称、雪虫(ワタアブラムシの仲間)が10月になったとたんフワフワと飛び始め、冬の訪れを告げています。
 寒い秋ですが、森の中ではいろいろ秋の草花が美しく咲き誇っています。
 アズマレイジンソウ、アケボノソウ、アカネ、イヌヤマハッカ、ナギナタコウジュ、などなど。
 アズマレイジンソウは毒草として有名なトリカブトに似たキンポウゲ科の植物ですが、その名の通り、どこか気品のある姿です。
 アケボノソウはちょっと不思議な花です。ふつうは星形に5裂ですが、同じ株に4裂のものもよく見られます。また、花弁の真ん中あたりに黄緑色の点が2つずつありますが、これは蜜腺です。蜜で虫を呼び寄せて、花粉の媒介をさせています。蜜腺はふつう花の奥の方、花弁の付け根にできるのですが、アケボノソウは少し変わっています。
 アカネは、額田王の「あかねさす 紫野ゆき 点野ゆき 野守は見ずや 君が袖振る」にも歌われている、昔は根から赤い染料を取った植物です。とても小さな花で、見落としてしまいそうです。
 地面には大きな株になるハタケシメジが発生し、昨年の台風で倒れた太いイタヤカエデからは色鮮やかなマスタケが生えてきました。軸に触れると血潮のように赤い汁が出てくるチシオタケも見られます。
 古い倒木から今年もツキヨタケが沢山発生しました。見た目はヒラタケやシイタケに似ていますが、ツキヨタケは毒キノコです。軸を縦に割ると黒いシミがあるので、見分けは比較的簡単です。暗いところではボゥーっと光るそうですが、残念ながら私はまだ見たことがありません。
そして、地面に落ちた枯れ枝から黒い髪の毛のようなものが出ています。「ヤマンバノカミノケ(山姥の髪の毛)」と称される根状菌糸束です。特定のキノコの種類名ではありません。名付け親は変形菌(粘菌)の研究で有名な南方熊楠先生です。ホウライタケの仲間やナラタケの仲間などがこう言った根状菌糸束を形成するそうで、乾燥や他の微生物の攻撃に弱い菌糸が菌糸束と言う分厚い細胞壁をもつ組織となることで強くなるそうです。
 秋が深まると共にケヤキやイタヤカエデの黄色、ハウチワカエデやミズキ、ヒメシャラの赤と色鮮やかに紅葉が進んでいきます。
 自然体験教室や社員ボランテイア活動などの大きな行事も今月で終了し、「まなびの森」は少しずつ冬へと季節が移っていこうとしています。

  • アキノレイジンソウと優雅で高貴な名前がついています

  • アケボノソウは花弁の真ん中あたりに蜜腺がある ハナアブが吸蜜しています

  • 小さな目立たない白い花をつけたアカネ

  • 大きな株に生長するハタケシメジ

  • 去年の台風で倒れたイタヤカエデから立派なマスタケが発生

  • 姿形がかわいらしいチシオタケは軸を触ると赤い汁が滲んでくる

  • ヒラタケやシイタケに似ている毒キノコ:ツキヨタケ

  • ブナの枯れ枝などから黒い髪の毛のようなヤマンバノカミノケが発生

  • 赤く色づいたサンショウの実

  • 秋の深まりと共に鮮やかにケヤキやヒメシャラが紅葉

  • 富士山と紅葉(近くの西臼塚駐車場にて)

【第183回】秋の気配が日に日に深く...

2020年 9月30日

■9月管理人日記

 日本列島の各地に記録的な暑さをもたらした8月が終わり、9月に入ると「まなびの森」では日に日に秋が深まっていくのが感じられます。日も短くなりました。
 コロナ禍で延期されていた地元 富士宮の小学生対象の環境学習プロジェクトである自然体験教室がコロナ感染予防のための新しい生活様式に配慮して始まり、「まなびの森」に子供たちの元気な声が聞かれるようになりました。子どもたちの笑い声やはしゃぐ声を耳にしているとこちらまで元気を分けてもらえるような気分になります。
 朝日が燦々と射す秋空のある日、私の車のフロントガラスの辺りをつがいになったアキアカネが飛んでいました。そして、ガラスの表面にツンッツンッと産卵するような行動をとっていました。不思議に思って近づいてみると、ガラス面に点々と薄黄色のアキアカネの卵があるではありませんか。朝日に照らされてキラキラとガラスが光っていたので、トンボ夫婦は水面と勘違いしたのでしょう。その産み落とされた卵はすぐにカラカラに乾燥してしまい、なんとも哀れな勘違いとなってしまいました。
 9月は大学生による活動もありました。筑波大や静岡大学の有志による植樹エリアの樹木調査や、東京農工大学による長年続けている植生調査も行われました。
 森の中ではかわいらしい秋の草花が見られます。ピンク色でユニークな形をしたツリフネソウは同じ属のホウセンカに似た花です。種が熟すと弾けて種を飛ばすのも一緒です。また、低木などに巻き付いて釣り鐘型の花をつけるのはキキョウ科のツルニンジンです。ニンジンの名の通り、オタネニンジン、所謂「朝鮮人参」のような根を持つこの植物は韓国では「トドック」と呼ばれる山菜として重宝され、根をキムチに入れたり、揚げ物や和え物にするそうです。釣り鐘型の花の中を覗くと、きれいな星形の模様が見られます。
 目を地面に移してみると、白い埃の塊がみられ、それを掘り起こしてみるとガの蛹が出てきました。冬虫夏草のハナサナギタケの仲間です。また、苔むした倒木にたくさん栽培キノコとしても有名なヒラタケが発生しています。
 紅葉はもう少し先ですが、日に日に秋が深まっていく感じがします。

  • 小学生対象の環境学習プロジェクトが始まる

  • 水面と勘違いしてフロントガラスに産卵するアキアカネ夫婦

  • 筑波大生による樹木調査の様子

  • 林内のところどころで見られるツリフネソウのかわいらしい花

  • 釣り鐘型の面白い花をつけるツルニンジン

  • ツルニンジンの花の中にはきれいな星形模様があります

  • 土の中のガの蛹から発生した冬虫夏草の1種:ハナサナギタケの仲間

  • 栽培キノコとしても有名なヒラタケが倒木に沢山発生

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