自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏
清々しい青空を背景に新緑が美しい季節になりました。木洩れ日をとおしてみた風景を眺めていると、身体が緑色に染まっていくような錯覚を覚えます。これはまさに森のマイナスイオンが身体に取り込まれている証拠かもしれません。
葉緑素を持たない寄生植物であるギンリョウソウ(銀竜草)が小さな群落をつくって花を咲かせています。まるで、銀色のタツノオトシゴが群れているように見えます。名前は「銀色の竜のような草」と言うことで、辰年の年男ならぬ、「年草」とも言えます。
日当たりの良い林縁にはヤブウツギが沢山生えていて、この時季深紅の花を沢山咲かせます。惜しむらくは、花の命が短いことです。特に、雨に打たれてしまうととたんに萎れてしまいます。同じスイカズラ科のツクバネウツギは花の根元に羽根衝きの「衝く羽根」が見られることから付いた名前です。
林床に黒っぽい羽根がまとまって沢山落ちています。これはキジバトが捕食者である猛禽類(恐らくは、タカの仲間)に捕えられたのです。捕えられ、その場で羽根をむしられてタカのヒナが待つ巣へと持ち帰った証拠です。
5月になって今年の自然体験教室が始まりました。富士宮市の小学生を中心にたくさんの子どもたちがやって来て、自然の豊かさと大切さ、不思議な一面など五感を使って学んでいく場となっています。
ゴールデンウィークの最終日に野鳥の会南富士支部による鳥獣生息調査が行われました。1年に4回(5月と6月の夏鳥シーズン、1月と2月の冬鳥シーズン)モニタリング調査を委託しており、今年で25年目になります。この時季は樹々の葉が生い茂るので、啼き声は沢山しても、鳥の姿を見かけることは多くないです。しかし、今回の調査では珍しくアオバト、シメ、ミソサザイ、キビタキ、カケスなど割りと多くの鳥を見かけることができました。
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新緑の森から見える青空はなんとも美しい
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新緑の中を歩いていると身体が黄緑色に染まりそうです
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春を代表する草花の1つ、ニリンソウ
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葉緑素を持たない寄生植物のギンリョウソウ(銀竜草) 辰年の今年にはピッタリな花です
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ミヤマザクラは一般的なサクラとは少し趣きが違います
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深紅の花をつけるヤブウツギ たくさんの花をつけるので辺りが赤く染まります
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森の中に鳥の羽根が散乱して…
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どうも、キジバトの羽根のようです ここで捕食されたらしい
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ツクバネウツギの花の付根には名前の由来である羽子板で「衝く羽根」があります
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春先に咲くオオイヌノフグリによく似たヤマクワガタ
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日差しを受けて樹の幹に生えているコケが大変美しい
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大規模な小学校の自然体験教室
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枝にとまっているアオバト
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大きな嘴をもつシメは眼つきが鋭く、嘴の色が春~夏は鉛色になる
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小さな躰のミソサザイが懸命に啼いてます
※野鳥の写真はいずれも「野鳥の会」会員の望月さんのご厚意で提供していただきました
3月後半から暖かい日が続き、遅れていたマメザクラも4月10日過ぎに咲きはじめました。少し恥ずかしそうに下向きに咲くマメザクラは富士箱根のフォッサマグナ地域特有のサクラで、地元ではフジザクラの愛称もあります。開花から10日ほど過ぎると満開に近くなり、ほかの草花も次々と咲き競います。
クスノキの仲間のアブラチャンが黄色い花をつけ、カエデの仲間も花を咲かせています。林床ではフデリンドウやセントウソウ、タニギキョウ、トウゴクサバノオなどなど。春の森は花盛りとなっています。
寄生植物のヤマウツボもあちこちで花を咲かせています。海にいる獰猛な魚のウツボからつけられた訳ではありません。昔の騎馬武者が矢を入れておく道具である靭(うつぼ)から来た名前です。
暖かな陽に誘われるようにアズマヒキガエルのメスがオスを背負って産卵場所に向かっています。水場が限られている富士山麓でカエルが産卵する場所を探すのは大変でしょう。
木の根元に木屑がいっぱい散乱しているので見上げると幹の一部が枯れていて、そこをキツツキが潜んでいる虫を探したのでしょう。大小の穴が沢山開いていました。
春のキノコの代表選手はやはりアミガサタケ。特に、ヨーロッパではモレル、モリーユなどと呼ばれ優良食菌として有名です。和名は編み笠状の頭の形から来ています。森で見つけたのはキノコの頭部がボール状になったアミガサタケの仲間で、その名もマルアミガサタケ。「名は体を表す」そのものです。
まるで枯れ枝にお菓子のグミを乗せたようなキノコも見つかります。キクラゲの仲間のタマキクラゲです。こちらも形そのままの名前です。
春の森は見どころ満点、まさに百花繚乱です。
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4月10日過ぎにマメザクラがようやく開花
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富士山とマメザクラが美しさを競い合っています
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アブラチャンの花
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アズマヒキガエルのメスがオスを背負って産卵に向かっています
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ヌタ場の水溜まり ヤマアカガエルのオタマジャクシがウヨウヨいる中にアズマヒキガエルのチューブ状の卵塊もある
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蕾の様子が「筆」の穂先のようなフデリンドウ
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フデリンドウが陽を浴びて花弁を開かせました
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小さな花を沢山つけるセントウソウは野に咲く線香花火のようです
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寄生植物のヤマウツボが沢山咲いています 魚のウツボではなく、騎馬武者が矢を入れておく道具である「靭(うつぼ)」から命名
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白いケマルバスミレの群落 名前は、毛の生えた丸い葉のスミレ
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木の根元に沢山の木屑が散乱しています
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見上げるとキツツキが餌となる虫を探して、幹の枯れた部分に沢山の穴が開いていました
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アミガサタケの仲間で形が丸いボール状、マルアミガサタケ
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枯れ枝にグミ? いえいえ、これはキクラゲの仲間で、その名もタマキクラゲ
今年は暖かだった2月から3月に入ると季節が逆戻りしたような寒さが続きました。
とは言え、3月半ばになるとミツマタが開花し、10日あまりすると満開になりました。毎年のことですが、ミツマタが満開になるとその辺り一面が甘い薫りに包まれて、陽だまりがとても春らしくなります。
キバナノアマナやコガネネコノメソウ、ユリワサビ、フデリンドウといった春を代表する草花も次々と咲き競い、ドンドンと春らしくなっていきます。
その中で、おもしろい場面を目撃しました。バイケイソウの新芽が林床のあちこちで芽吹いていますが、1ヶ所直径30㎝ほどの円状に15~16本の新芽がでていました。まるで、円陣を組んでバイケイソウが「エイ、エイ、オー!」と気合いを入れているように見えて微笑ましかったです。
2月が暖かだったので「サクラの開花は3月中旬か」とニュースなどで報じられていましたが、寒い3月のせいでかなり遅れました。マメザクラの開花も同様に遅れ気味で、3月終わりにようやく富士山スカイラインの標高500mあたりまで上がってきました。マメザクラ前線が「まなびの森」に到達するのは4月10日ごろでしょうか。
3月19日に「企画懇談会」を開催しました。まなびの森の「フォレストアーク」にステークホルダーの皆さんにお集りいただき、前年の活動報告と各調査報告、そして今年の活動計画を発表し、「まなびの森」のこれからの活動を話し合う場です。
今年も「まなびの森」での活動を安全・円滑に運営していく上で、いただいた貴重なご意見を活かしていきたいと考えております。
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ミツマタが開花しました
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2週間するとミツマタは満開に、あたり一面甘い薫りに包まれます
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キハダの根際がシカに齧られ、まさに「黄肌」を現わしている
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キバナノアマナ
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コガネネコノメソウ
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ユリワサビ
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フデリンドウ
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バイケイソウの新芽が円陣を組んで作戦会議(?)
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プヨプヨした色鮮やかなコガネニカワタケはキクラゲの仲間
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「企画懇談会」の冒頭でご挨拶いただいた静岡大の増澤先生
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関係ステークホルダーの方々を含めて17名が参加